映画「辰巳」 1

辰巳…。どれぐらいの規模かわからないけど、インディーズで予算が低いのは間違い無いだろう。しかし、カメラワークと熱気のある役者の演技などで、そのことはそれほど感じられない堂々とした映画だった。
雨の日に関わらず、観客もなかなか多かった。

この映画はフィルムノアールを意識して作られているという。
日本のヤクザ映画はフィルムノアールの中に入れていいのかはわからないが、映画の主人公の辰巳はヤクザの世界で生きる人間なので、この映画もヤクザ映画の一種と言っていいのかもしれない。

この手の映画は怒鳴り合い、顔相撲みたいなシーンが多い印象がある。
韓国映画もそれに近い部分はあるかもしれないが、アメリカやフランスの映画ではなかなかそれはない。
もしかして、直接自分の意見を言わない国民性の逆の表れなのかと思わなくもない。
辰巳はヤクザの組織の中で、死体の解体の仕事をしている。
死体の解体を請け負う主人公だと、トム・ハーディーの「クライムヒート」(ひどい邦題)がある。
辰巳の見た目の雰囲気は中国ノワール「鵞鳥湖の夜」の主役、フー・ゴーに似ていなくもない。
この辺りの映画はノアール好きの人なら、見ていてもおかしくないので、影響はあるかもしれない。

自分の弟も仕事で始末してしまう辰巳の心情は、ちょっと窺い知れない。
そんな辰巳が知り合った葵と反発し合いながら、復讐を手伝うことになるのだが、その心の変わり方がこの映画に重要なドラマになっているのに、それが琴線に触れるまでは行かなかった。
葵の復讐も、兄弟の一人を格闘しつつも、あっさりと仕留めてしまうあたり、心に引っ掛かることなく、そのまま流れていってしまう感じがした。










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