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『火星のおじいちゃん』#ショートショート
俺が幼少の頃に、父方のおじいちゃんが死んだ。
生前、病院のベッドで危篤状態だったおじいちゃんは、俺の手を握ってこう言った。
「火星が見える」
翌日、おじいちゃんは息を引き取った。
人は死んだらどこへ行くのだろう。
天国、地獄、浄土、黄泉、自然、無……
おじいちゃんはきっと、火星だろうな。
煉獄の火のように熱そうだけど、実際は-60℃くらいで極寒らしい。
でも、おじいちゃんはロシア人のようにいつもお酒を飲んでいたから、むしろ火星の気温にも順応していそうだ。
7500万kmの彼方に目を見遣り、今は亡き祖父の姿を思う。
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