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[VRChat] ValveIndex返品した話 ー 液晶と有機ELの違いとは?Index/VivePro実機比較! "自分に合う"HMDを探そう!

VRChatにどハマりして約5か月、HTC VIVE(初代)で450時間をプレイ。
これだけ遊ぶなら…と思い、フレンドがIndexかVIVE Proで悩んでいるのを横目に抜け駆けしてValve Indexのフルキットを衝動買いしました。

が、購入初日。「なんか違うな…?」という違和感。VIVE Proと改めて比較検討し、最終的にValve Indexの返品を決意することになりました。
そう、違和感です。Indexが悪い!ザコHMD!という記事ではありません
むしろIndexは"身体に合う人"には最高のHMDであるともいえます。

この記事では、HMDとしてのIndex/VIVE Proを比較した所感とあわせて、
特にVIVE系からIndexへの乗り換えを考えている人に知っておいてほしい、「VRヘッドセットの画面パネルの種類の違い」を解説します!
本記事が"自分に合ったHMD"を選ぶヒントになれば幸いです。

0. はじめに

私は米国在住で、米Valveから直接購入し、Valveが提供している返品プログラムを利用しました。日本国内での代理店から購入する場合、返品ポリシーが異なりますので購入の際にご確認ください。
VR用HMDは身に着けるものであり、いわばあなたの新しい「眼」のようなものです。本稿のように様々なレビュー記事や比較記事が沢山執筆されてはいますが、可能な限り試着して選ぶことをお勧めします。
また、どうしても合わないときのため、購入時は店舗の返品ポリシーを確認しておくことも大切です。VRを楽しむためのHMDですが、期待値が高い分、イメージと違うと結構凹みます。返品できる、という安心感があると気が楽になり、正確に判断・分析できるようになります。

1. 「違和感」の正体 - 有機ELと液晶の違いとは?

まずは結論から。私の「違和感の正体」は画面パネル方式の違いです。
Indexは液晶パネルVIVE Proは有機EL(OLED)パネルが使われています。
私がいままで使っていた初代VIVEも有機ELです。
ちなみに他の人気HMDではQuestは有機ELQuest2は液晶だそうです。

Indexを最初に装着したときの印象は、「解像度は高いが白っぽくぼんやりしている、色味はまるで画面を見ているみたいだ」でした。
これは仕組みの違いから考えると非常にReasonableな感想です。

まずは液晶と有機ELの仕組みの違いをご紹介します。

テクスチャ改変とかをしていると、「RGB」という文字を見聞きすることは多いと思います。これは「光の三原色」とも呼ばれ、それぞれ、赤緑青の頭文字を取ってRGBと呼ばれています。

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Red = 赤
Green = 緑
Blue = 青

この三色を混ぜることで様々な色を作り出すことができ、三色を均等に混ぜたとき白色になるようにできています。黒はすべてOFFの状態ということですね。

さて、液晶と有機ELですが、みなさんご存知の通り、基本的にはたくさんのドットが並んでいる構造は同じです。ご存知でない方は今noteを見ている画面に限界まで眼を近づけてみてください。つぶつぶが見えますね?それがドットです。
眼の良い人と古い画面を使っている人はわかりやすいかもしれませんが、1ドットはR,G,Bの3色にわかれており、白を表示しているように見えるのは、R,G,Bの3つがすべて光っている状態が混ざって白に見えています。Retina display搭載のiPhoneなどドットが非常に小さい画面を使っている人は肉眼ではおそらく見えませんが、虫眼鏡・拡大鏡などで見るとわかると思います。

液晶ディスプレイの仕組みは、白色に光るバックライトを常時光らせておいて、「液晶」と呼ばれる部分に電圧をかけ、ドット内の色ごとに光を通すか通さないか?を決定します。そして、その光をR, G, Bのカラーフィルターを通して見ることで、色を制御しています。
すべて通すと白、すべて塞ぐと黒。Rだけ通せば赤。といった具合ですね。

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いっぽう、有機ELはR, G, Bに光る発光体をひたすら並べているだけです。すべてつけると白、すべて消すと黒。Rだけ光らせれば赤。ですね。

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こうしてみると有機ELがシンプルで理想的な方式に見え、なんで液晶はこんなめんどくさいことをしているの??と思うかもしれませんが、有機ELは液晶に比べて新しい技術であり、また独立した発光体を高密度に生成しなくてはならないために製造コストも高く、有機ELはまだまだハイエンド向けというのが現状です。
iPhone Xは有機ELなのに廉価版のXRは液晶、なんて時代もありましたね。

閑話休題、それではなぜIndexの液晶を見て「白っぽい、明るい」と思ったのでしょうか。そこには液晶の構造的な問題があります。
液晶は黒を表現するために、常時光っているバックライトの"光を塞ぐ"ことで黒を作っています。

そのため、多少ながらも「光が漏れて」しまうのです。
また、R,G,Bの表現においてもこの光漏れがあるため全体的に明度の高い色調になりがちです。

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一方、有機ELは黒を表現するためには発光体をOFFにしています。無です。
なので、光漏れは発生せず、「暗闇」の表現がうまくなります。

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この差は特にコントラストが大きい場面で顕著に感じられます。VRCで言えば夜のワールドに灯りが置かれている場面(夜景・ホラワなど)や、Chill系ワールドにありがちな薄暗い部屋でフレンドといるような状態ですね。

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<筆者のVRCライフにおける、典型的な"コントラストが大きい"場面の例>

ではでは、ここまでを踏まえて、折角IndexとVIVE Proの現物を並べられましたので、写真で比較してみましょう。

本来であればカメラのマニュアルモードでシャッタースピードを固定すると定量的な比較ができるのですが、手持ちの一眼レフレンズがHMDの接眼部に入らなかったのでiPhone 11Pro オートモードでの撮影となりました。
そのため、Exif情報から逆算し、露出を調整した上で比較しています。

VRChat起動中のSteamVRのメニュー画面をみてみましょう。
グレーの背景に白文字のため、典型的な高コントラストな状況です。

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まずはIndex(液晶)では、文字の輪郭は白っぽくふんわりしています。
対するVIVE Pro(有機EL)では、文字の輪郭がクッキリしていることがわかりますね。

一方、ドット感の低さはIndexに軍配が上がります。
VIVE Proではこの写真でも画面のドットが見えていますね。
ただし、これは液晶vs有機ELの違いというよりは、Indexの液晶パネルでスクリーンドア現象(ドットっぽく見えてしまう状態)を軽減するために工夫がされているものと思われます。ただ、液晶の特性として光漏れの結果ドット感が埋められている…という部分もあるかもしれません。

続いて、色合いの違いです。

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Index(液晶)は明るめの色調VIVE Pro(有機EL)は鮮やかで落ち着いた色調に見えませんか?
ここは本当に個人の感じ方の違いですが、私はVIVE Proで見るのがVRC世界の色合いだとすると、IndexはVRC世界を明るい画面越しに見ているような感覚になり、VRCプレイ中は大きな違和感でした。長い間初代VIVE(有機EL)を使っていたこともあると思いますが、本来のObjectの色味に近い表現ができているのは有機ELで、場合によってはIndexは白飛び気味とも感じました。Indexは画面全体の明度調整ができますが、こういった色調を補正することはできません。
また、写真からはわかりにくいですが、Valve Indexではグレーのベタがやや靄がかっているのに対し、VIVE Proでは統一感のあるグレーになっています。有機ELの方が暗い色のベタの表現が得意なのです。
これは真っ暗なワールドの表現で顕著にわかります。

色味と光漏れという点を好みの差に例えていえば、Yayoi系ワールドで「Bloom」のオプションがありますが、Bloom OnがIndex、OffがVIVEという感覚が近いです。

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以上踏まえて、ふんわりした描画が好きで、VRCでは屋外・昼間のワールドでくっきり遠くまで見渡したい、明るい世界を高解像度・ドット感ゼロ楽しみたい、という人にはIndexの方が良いと思います。

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一方、描画はキリッと輪郭が立っていてほしい、VRCでは星空やネオンの夜景、落ち着いた灯りの室内など、黒を背景に多彩な色をくっきり楽しみたい、という人にはVive Proだと言えるでしょう。

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2. IndexとVIVE Pro、比べてみた感想と長所と短所

さて、パネルの違いを上の章で書いてきましたが、一番伝えたい点は、
Indexは唯一の至高最高のHMDではない」という点でした。

私は「Index / VIVE Proが2大ハイエンドHMDであり、好みが分かれる。ただし、身体と好みに100%マッチしたときはIndexの方が満足度が高い」と思います。軽度とはいえVive Proにはスクリーンドア(ドット感)という課題がIndexに比べて残っていますからね。

ここからはテクニカルな部分から離れて、純粋に私のIndexとVIVE Proに対する所感の比較を書いておきます。
本章にはKawaii解説画像がないので、気になる所だけ読んでください。


装着感 - VIVEが安心

私はVIVEシリーズ(HTC製)の方がアジア人の顔にはフィットしやすいのではないか?と思っています。
Indexは米国企業が作ったHMDVIVEは台湾企業が作ったHMDであり、
もちろん前者は欧米人種の頭を想定し、後者はアジア人種の頭を想定しています。アメリカのメガネ・サングラスブランドには「asian fit」というオプションがあるほどに両者の顔の平均的な造りは違います。
Index/VIVEでは装着感がかなり違いますので、試着する際はぜひ「自分の顔・頭にどちらがフィットしているか?」をしっかりと吟味してください。
ちなみに最近話題のOculus Quest2でおなじみのOculusも米国企業です。

モノとしての作り - Indexは精巧。VIVE Proはチープ?質実剛健?

IndexのHMDとしての造りは非常に精巧です。HMDの対眼距離調整ひとつとってもダイヤルで行われ、細かくスムーズに動くさまはまるで一眼レフのような感覚です。動作幅も非常に大きいです。
一方VIVE Proはかなりシンプルに作られています。8万円もするHMDの対眼距離調整がプラスチックのボタンを押しながら「ズゴッ」と動かすチープさはIndexを触った直後に使うと呆れます。まるで20年落ちの軽自動車のシートを前後に動かすときみたいな感覚です。それどころか、たまにHMD本体を握って脱着するときにボタンを押していないのにズレたりします。
他の機能のどこをとってもIndex/VIVE Proの関係性は基本的にIndexは精巧、VIVEはシンプルです。

ただし― HMDは身に着けて使うものです。時には落としたりぶつけたりすることもあるでしょう。そういった使い方を長期間続けたとき、Indexの精巧さは「壊れやすさ」に、VIVEのシンプルさは「頑丈さ」へと変わり、世間でよく言われている「Indexは壊れやすい、VIVEは壊れにくい」という評価へ繋がっていくのかもしれません。

視野角 - "130度"を楽しめるかは要確認

Indexは視野角130度VIVE Proは視野角110度です。
IndexもVIVEもそうですが、最大の視野角を得るには目にレンズを出来るだけ近づける必要があります。
が、私の顔では「視野角が広い!」と思えるところまで近づけると額にレンズが当たり、当たらないところまで戻すとVIVE Proよりは広いものの、そこまで大きな違いを感じることができませんでした。
まあ、これは自分の顔がアジアンフェイスでVIVEの方が合っていた、という話ですが、試着の重要性が伝わるエピソードでもあるかと思いますし、また、やはり「100%マッチすればIndexの方が満足度が高い」という点を補助するポイントでもあります。

コントローラー - 没入感のIndex、確実な操作のVive Pro。

他にも詳しい解説ページも多いかと思いますが、
Indexは実際にハンドサインの手の形を作ることで表情を操作します。
一方VIVE系はタッチパッドを触ることで表情を操作します。

アバターが自分の指とほぼ同じ動きをしますから、ゲーム内で手を動かしたときに主観での没入感があるのは圧倒的にIndexです。
ですが、現実で誰かと話したり遊んだりしている時に、自分の指がどうなっているか意識しますか?しませんよね。それに加えてトラッキング精度の不足もあり、Indexは表情誤爆が多くなってしまいます

VIVEはボタンを押す・触ることで表情操作をするので、何もしていなければ無表情です。コントローラの握りこみに笑い顔を入れておけば自然に笑えます。自分のアバターを確実に操作したい人にはVIVEコンの方が向いているのでは…と私は思います。

Indexで指をワキワキ動かすのは楽しいですが、ミラー前で自分の意図しない表情をしてしまうことは、それはそれで結構没入感を損ないます。

フレンドとガチ恋距離で指をわちゃわちゃさせたい人はIndex
身体を大きく使って動いたり踊ったりするならVIVEコン
とも言えるかもしれません。

音質 - これだけはIndex圧勝!

IndexのHMDスピーカーの音質は異常です。滅茶苦茶良いです。
初代VIVEはHMDスピーカーが無かったので無線ヘッドセットを上からかぶっていましたが、その時使っていたゼンハイザーGSP670(実売3~4万円)、Bose QuietComfort35(実売3万円)といった高級ヘッドセットよりも良いです。Airpods Proなどは足元にも及びません。
装着感についてもオープンタイプのため、耳には何も触れていない状態です。なのに高音質の3D音響で聞こえてくる、というのが「目の前から話しかけられている」没入感を加速させてくれます。

一方VIVE Proは慣れればまあ使える、程度です。単体で評価すればまだマシですが、Indexを使った直後に聞くとリスニング試験で使うヘッドホンみたいに感じます。そのうち外してまた無線ヘッドセットと併用にしようかな…と思っています。

HMD付属スピーカーの音質、一見おまけ要素のように思えるかもしれませんが、別途ヘッドセットをつける手間や、頭に載せる重さを考えると、HMDに元から高音質スピーカーがついていることは長時間プレイ時の疲労軽減や、没入感の面から大きなプラスです。

他のHMDについて思うこと - Index/VIVE Pro以外の可能性

VIVE Cosmos Elite
比較検討対象でした。が、パネルがIndexと同じ液晶であること、あくまでVIVE Proから見ると下位機種であることから、最強ハイエンドHMDとして選ぶには今一つ引きが弱いです。HMD単体なら安いのでVIVEからのアップグレードの選択肢としてはありですね。
最大の魅力はHMD前部が全開できること。飲酒VRCやるならHMDを脱がずにお酒を注いだり、つまみを食べたりできるので良いなぁ…と思います。

Reverb G2
日本では2021年に発売されるみたいですね!
同じく液晶パネルであるため、ポスト次世代最強HMDの一つではありますが、VIVEの上位互換にはならないと考えています。頭一つ抜けた高解像度は気になりますが、ハイエンドHMDとしてはトラッキングに難があるという情報もあり、その特性からVRC界隈ではVRシステム(フルキット)としてIndex/VIVEの後釜というよりは、Indexを使っている人がさらなるアップグレードを目指してHMDだけ交換するようなポジションになると予想しています。

HTCさん、有機ELのハイエンドHMD出してくれ~~~!

"VIVE→Index"あるいは"VIVE→VIVE Pro"って買い換える意味はある?

まず、もしあなたがヘビーなVRCプレイヤーかつVIVEユーザで、Indexを試着してみて身体に合うと感じたなら、VIVE→Indexは間違いなくアップグレードの価値があります。すぐ買ってください。

一方VIVE Proは…
毎日のようにVRCに入っているなら、値打ちはあるかも!です。
変化を求めているなら良い選択肢です。
ただ、今すぐ変えないと損!というレベルではありません。

解像度 … 確実に変わる。VIVEには戻れない。が、感動するほどでは無い。
付けた瞬間に「世界が変わる!」という感動は無いですが、確実に解像度の違いをよく行くワールド等の見え方の違いで感じることでしょう。

装着感 … 長時間プレイで差が出る。ProはVIVEの倍くらい連続でプレイできます。
VIVEではヘッドセットを別途つけていたのもありましたが、3時間ほどつけると頭の締め付けによる疲れをやや感じていました。VIVE Proはしっかり調整することで疲れを感じることなく5~6時間ぶっ通しでプレイできてしまいました。VIVEが頭にバンドで止めるイメージなら、VIVE Proは包み込む・かぶるイメージ。VIVE Proでは重量が増えていますが、装着感の向上で打ち消されている印象でした。

3. おわりに

Indexに対する期待感が自分の中でかなり膨らんでおり、また製品としての造りがよかっただけに、「自分に合わない」ことでIndex導入直後はやや焦っていました。ですが、最終的にVIVE Proに落ち着き、こうして記事にすることも出来て結果オーライだったかなと思います。

VRシステム(HMD)はあなたの眼となり、手となり足となる機器です。
「美少女に二言無し!買っちゃったものは慣れる!」というのも手ですが、可能であれば試着してしっかり選ぶことをやはりおすすめしたいです。
快適なVR環境を構築して良いVRChatライフを!

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以上です。
hpさん、いつでもReverb G2の試供品お待ちしています。

解説図として使用した写真の撮影にあたっては下記のワールドを利用させていただきました。ありがとうございます。
 坪倉家|Tsubokuras Home - kohack_v様
 MERoom - MERU様
 Yayoi Summer Nights - 猫屋敷やよい様
 ※使用した参考スクリーンショットに関しては割愛させていただきます。
撮影協力 Shimiraziさんにも感謝です。

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