【往復書簡】11通目(急行2号様)

急行2号様

こんにちは。あっという間に10月も半分が過ぎましたね。2019年があと10週間で終わってしまうなんて俄かに信じがたいです。「10」といえばこの往復書簡も気づけば10回を超えるやりとりになりました。返事を待ったり次の書簡のネタを探したりするのが日常になりつつあってなんだか不思議です。引き続きよろしくお願いしますね。

さて、本題。僕の猫アレルギーについて。という話には誰も興味がないと思いますので、前回のお返事を読んで考えたことをつらつらとお返しします。こちらが投げた話題について調べて意図を汲み取ろうとしていただきありがとうございます。僕もよく使いますが、ネット検索って便利ですよね。手っ取り早い。もしかしたら急行さんが書かれているように最短の手段なのかもしれません。

そもそも「最短」ってなんだろう。急行さんからのお返事を読みながら、ここ数日はずっとそのことを考えていました。なにげなく使う言葉だし、文字通りある地点へ到達するための「最も短い」ルートなんでしょうが、なんだか曖昧でよくわかりません。

最短はどうやって導き出されるか。ということを考えたときに、すぐにカーナビが頭に浮かびました。急行さんもお車に乗られているのでよく使われているかもしれませんが、目的地を設定すると自動でもっとも早く到着するルートで案内してくれますし、そこで表示される道のりはそれこそ最短と言っていいような気がします。

つまり最短を導き出すためには、出発地点(現在地)、目標地点(ゴール)、ルート(道のり)の三つが重要ということになるのでしょうか。その際選ぶルートが一つしかなければ必然的にそれが最短になるでしょうが、多くの場合は複数ある中での選択が必要なので、選んだルートが選ばれなかったそれと比較して早いかどうかで最短かどうかを判断できそうです。

重箱の隅をつつくみたいでなんだか申し訳ないですが、急行さんがお返事で書いてくれた「ネット検索」を例に考えてみました。何かを知るための行為としてネット検索は手っ取り早いですが、果たしてそれは本当に最短の手段でしょうか。今回、急行さんがシモダの意図を汲み取ることをゴールに設定してネット検索という手段を選ばれました。その際ほかにどういう選択肢を想像されていたかはわかりませんが、例えばその選択肢の中に「シモダに電話をして直接聞く」というものがあったら、もしかしたらネット検索よりも早くて正確にシモダの意図が汲み取れるかもしれません。もちろん僕が何か別のことをしていて電話に出れない可能性もあるので、絶対にそうだとは言えませんが。

僕が普段なかなか電話に出ない話はさておいて、そのように「最短」は自分が選べる選択肢の数によってコロコロと変わるものでしょうし、もしかしたら自分が知らない近道抜け道があるかもしれません。随分と回りくどい話になりましたが、そもそも何かを選ぶ時に、そこに辿り着くための手段はそれだけなのかということを並行して考えるのも面白いのかなと思った次第です。

カーナビの道案内はシンプルでわかりやすい(わかりやすくないと道に迷っちゃうので)ですが、いざ人生に置き換えるとそれがなかなか簡単に行かない。目標地点もどこにあるのかいまいちピンとこないし、そこに至るまでの道のりなんていくつあるのかもどれが最短なのかも、そもそもそこに道があるのかすらさっぱりわからなくないですか?

この往復書簡も、今はまだ目標地点を設定していないしするつもりもないのでふわふわとしていますが、もしかしたら知らないところでなにかしらの最短手段になってるかもしれないし、むちゃくちゃ遠回りをしているかもしれない。

ただ、このやりとりはカーナビで目標地を設定せずにドライブしているようなもので、今回でいう「最短」のような無意識で使ってるけど見落としてしまいがちなあたりの景色を眺める余裕があって、それが心地よかったりもします。あとは動いてたら必ずどこかには着くはずだし、それこそ常に最短を気にしてばかりだと疲れてしまうので、気長にのんびりやれれば幸いです。

前置きのつもりで「最短」に触れたら思いのほか長くなってしまいました。気を取り直して、ご質問いただいたことにお答えしますね。「常に動いているもの」を知ること(あるいは知らずにいること)の難しさを感じることがあるかどうかですが、あります。むちゃくちゃありますよ。

お店を始めてからは特に、色んな方とお会いするようになりました。初めて話す方からもう何度も顔を合わせた方まで、日々たくさんの方と対峙しています。本当に嬉しくてありがたいことなのですが、その反面で明日誰もこなくなるかもしれないことへの恐怖は常々感じています。それを感じなくなったら終わりだとも思っています。大袈裟じゃなく。わざわざ時間とお金を使ってうちの店を選んで来てもらってる以上、来る前より少しでも良い状態で帰っていただきたい。

となると、ある程度その方がなにを面白がってくれるのかを知らないといけない。知りたい。これがむちゃくちゃ難しいです。急行さんがおっしゃってる「どこで線を引くか」の塩梅を、向き合う人によって微調整しながらその人のストライクを見定めていく。一度でも失敗したら二度ときてもらえないかもしれないし、星一つをつけられるかもしれない。痺れます。かつ、そういう姿勢が少しでも透けてしまうと落ち着いてもらえないのであくまで表向きはのほほんとしている。……こんなことあけっぴろげに書いていいんでしょうか。(笑)

ご質問に答えるべく正直に書きましたが、最近はそんな感じで神経を使っているので閉店後ぐったりしています。でも別にそれが嫌ではなくて、むしろ面白くて性には合ってると思ってます。かつこれまで全く馴染みがなかった福岡という土地で、日々ひつじがで一緒に思考してくれる相手がいるのが有難いです。有難いから、その分もっとお返しをしたい。その連続で脳を使ってる感じはします。今は毎日考えることが楽しいです。こんな感じで答えになってますでしょうか。

前回こちらから書いた書簡に急行さんへの質問がないとのご指摘を先日いただきましたね。言われて読み返してみたら確かになくて、書きにくい返事を送ってしまって申し訳ないと思うと同時にやりとりが自然になったのを感じて一人うれしく思いました。とはいえご指摘いただいたので今回はご質問させてください。

急行さんが気づいたように「善」には羊が含まれています。さらに「美」にも羊が含まれてる。こうなったら「真」にも入ってて欲しかったのですが、それは流石に欲張りすぎですね。そんな風に様々な文字や単語の中に「羊(未)」が含まれていて、改めて良い動物を選んだなと自画自賛をしていて、みればみるほどこの文字が好きになってきています。

急行さんは特別好きな文字って、何かありますか?

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