【ひつじが月報】2020年6月(副音声)

週報を月報にした結果あまりにも味気なくなってしまったので、急遽裏月報を書いてみることにした。いつまで続くかわからないけど、ひつじがの副音声担当として表では書けないような思惑や意図の部分なんかを惜しげも無く晒していきたい。惜しげも無さすぎて突然非公開にしたり削除したりするかもしれないが、その時は画面の向こうで赤面して身悶えしている僕を想像してもらえたら幸いです。


ひつじがの6月

主な出来事(のほんの一部)は表月報の方で書いたが、6月はそれまでの休業期間を使って机上で構想していたものを小さく小さく試しはじめた。特に人の流れは確実に変わるだろうことは予想していたので、それを踏まえて固定の場を使ってこれからどんなことをしていくかをずっと悶々と考え続けていた。

緊急事態宣言は解除されたけど、今だに移動に対して高い心的ハードルを持っている人も少なくない。それが長距離になればなるほどより気を遣うだろうし、よほどの目的がない限り動いてもらうのはむずかしい。そしてそもそもひつじがはさして強い目的意識を持ってもらってお客さんを惹きつけるような場所ではない。気が向いたときにふらっと来てもらいたい。となると今しばらくは遠方からの来店はあまり期待できない。じゃあどうするか。そう、まずはまだ比較的心的ハードルの低いご近所さんに少しずつ動いてもらえるように動いていこう。と思った。

『本を見つけるマップ』の配布もその一環で、周辺地域に暮らす人に動線をイメージしてもらって街に足を運んでもらう狙いがあって、タイミングは難しかったけど、6月から配りはじめてぼちぼち人の流れができつつある。

今回は近くの書店さんと一緒に地図を作ったけど、そのメリットが思いのほか大きい。他のお店で地図をもらって初めてひつじがのことを知ってもらったり、その逆もあったり。日頃本屋に通うような人でもその近くに他の本屋や本に関わるお店があることを知らないなんてことがあるのがわかったのが大収穫。

ひつじがに寄った帰り際に他の本屋さんにも行ってみますねなんて言ってくれる人がいたり、読書好きのLINEグループで地図の画像を共有しましたなんて話も聞いたり、周辺地域の読書に関心がある人たちの中でじわじわと影響が見えてきている。いい流れだと思うし、これに今後は周辺の他のお店も巻き込みながら情報量を増やしてまずはご近所さんに、そしてこの街に来る人たちに楽しんでもらえるようにできたらなんてこともほんのり考えている。

またそうやって実際に来店をしてくださった人たちに向けてのローカルな動きとして、6月から店内で『0円本屋』をはじめた。もともと福岡で開催された0円ショップのイベントに参加して面白いなあと思いお店でやらせてもらうようお願いした取り組みで、読み終わって誰かに譲ってもいい本を持ち込んでもらったり、そこにある本を持ち帰ってもらったりしている。基本的に金銭を介さない物々交換に頼った仕組みで、とはいえただもらうだけでもただあげるだけでも構わないのでもはや物々交換でもない。

ただご自由にお持ち帰りいただけます、なんて言っても今のところはご自由にお持ち帰る人の方が少ないのが面白い。誰しも「ただで持ち帰る」ことに対して心なしか罪悪感を持つようで、持ってきた本と交換をされたり投げ銭をいただいたり、一旦持ち帰って後日別の本を持ってこられる人もいた。そこまで気を遣ってもらう必要もないけれどそういう気遣いのおかげで、0円本屋をはじめてからコーナーの本は減るどころか増えている。

持ち帰った本を読み終わって戻しに来る図書館みたいな形で使われる方もいたり、ご近所さんがSNSで見かけたと本を持ち寄ってくださったり、こちらもじわじわと人の流れができつつ、その結果置かれている本も動き続けている。

最初の方にも書いたけど、動くことに心理的制約を感じてしまう中で可能な範囲で流れを意識してもらうのはだいじだと思うし、実店舗を持って色々試しているとその流れを可視化することができてとてもとてもおもしろい。まずはせまいところから小さく流れを作っていく。あまり大げさなことができない今だからこそ、その辺りを意識してとりあえず動いてみた。今まで以上に周辺に暮らす方のことを意識して、また周辺に暮らす方と話す機会の多かった1ヶ月だった。

おやすみしている間は基本的に自分が考えたいことを考えていたが、お店に立っているとそういうわけにもいかない。よほどこちらの話に興味を持ってくれる人相手ではない限り、基本お客さんが持ってくる話題を聞いている。ジャニーズJr.の話になることだってあるし、仕事や就活の悩みだったりもする。

自分ひとりだと考えもしないだろう話も、ただ聞いているとそれがふとしたタイミングで自身の考えていた話に偶然つながるときがある。もちろん意図的に狙っているわけではない(そもそも狙えない)けどそうやって思考が深まる機会がこの6月だけでも度々あって、あらためて考えるのと聞く(外部からの刺激を受ける)のはセットにした方が良いななんてことを実感した。

ひつじがの7月

さてここまでローカルローカル言ってきたが、現代において諸々を地域で括って可能性を狭めてしまうのは勿体無いなんて気持ち(助平心)もまだしっかりと持っている。そのぐらい今はオンラインのあれこれが発展している。

住む地域は離れていても密に連絡を取る人もいるし、隣に住んでてもまったく会わない人もいる。実店舗への来店だけで考えればそりゃ近くに住んでる方が動きやすくはあるだろうけど、それ以外の部分においてはもはやどこに住んでるなどはあまり関係がなくなってきている。そしてひつじがはそれ以外の部分にこれから少しずつ力を入れていきたいと思っている。言語化がむずかしいが、居住地域にとらわれないローカル性を追求するといった感じ。ひろいところにせまく突き刺さりたい

どこに住んでいても関わろうと思えば関われるようにしていきながら、でも一方でお店を近くに感じてもらいたい。言えば言うほどよくわからなくなってくるし、まだまだ整理する必要性があるけど実際そういう動きもちらほら見えつつある。

店内には閲覧用の本が並ぶ大きな棚があって、その中には寄贈本がおよそ3割ほど置かれている。ご近所さんが来店のついでに持ってきてくれることもあるが、遠方から郵送されてくることもあり、つい最近も大阪に住む友人が本を数冊送ってくれた。郵送か持参かで手段は異なるものの、店内の棚に自分の本を置くという意識には違いはない。そんな風にお店のローカルな取り組みに対して、来店以外の手段でどこに住んでいても関われるような仕組みをつくることで、世界中のどこに住んでてもご近所さんと言えるようになるのではないか。……どうなのか。

ミッションボトル制度もその広がりを作る可能性はある。これはオトナの(オトナでなくても構わないけど)お客さんからキープボトルを注文してもらって、ただそれは自分が飲むためのものではなくひつじがにくる若者(若者でなくても構わないけど)に飲んでもらうためのもの。カウンター席でたまに発生する「一杯どうですか?」を遠隔かつ時間差で行う仕組みだけど、ただ安く飲めるだけにはしたくないので金銭を支払う以外の対価をミッションとして行うことで注文できるようにしている。そのミッションは原則ボトルを入れたお客さんが決める。

大前提オトナの喜捨の精神によって成り立っているが、それを実際に来店してくれる人だけでなく遠方に住む人からも受け付けられたらどうだろう。いくら対価としてのミッションがあるとはいえ、日頃通わない店の若者にお酒を奢る奇特な精神をお持ちの方はいらっしゃるかどうかはわからないけど、投げてみるのもよいのかもしれない。特別給付金の使い道がわからない人なんかにはおすすめかもしれない。どうでしょうか。

あとは7月からは文学賞の応募受付もはじまるけど、これもまた地域かかわらず参加いただける催しなので、ご近所さんだけでなくいろいろな地域のいろいろな世代の方に知ってもらって、願わくば参加していただけないものかなあと思っている。

ただこれはどんな企画をする上でもだいじなことかもしれないけど、手段は用意しつつもできるだけ参加は強制せず自由意志に任せる方がよい。何事もやらされ感が出てしまうと面白くはないし、あくまで自ずと参加したくなるようなコンテンツを作るか見せ方を工夫するかでしかない。偉そうなことを書いて先の文学賞でそれができているとは思えないので書くのも赤っ恥だけど、本当にだいじなこと。

話は変わるけど、お店を始めてからずっとお客さんに対して「何か飲まれますか?」とは言わないようにしている。たとえグラスが空になってても。それを言われちゃうともう一杯頼むか席を立つかしなければなんてプレッシャーになるし、それまでの居心地の良さも一瞬で台無しになってしまうだろう。当然一杯で何時間でも粘ることを推奨している訳ではないし、それこそ「言われなければわかんない」なんて言われることもあるけど、言われるまでわかんない状態はよくはないし、なんだって言われる前にある程度想像するのが大切だと思っている。

世の中色々な○○力があるけど、人間にとっていちばん大切なものは想像力だと思う。相手を思いやること。自分の未来を見通すこと。社会のこれからを予測すること。どれも想像することをただ言い換えただけで、つまりは想像力を養えばどれもある程度はできるようになる。プラスアルファ言語化(言葉で伝える)力があれば鬼に金棒だろうし、それなのにそれを鍛える機会はさほど多くはない。

なんの話かわからなくなってきたけど、つまりは想像力を奪うような発言はなるべく避けたいし、むしろ想像力を鍛えるような場でありたい。ゆえの「何か飲まれますか?」は聞かないし、企画への参加も基本的に強制しない(促すことはあってもそれで参加しなくても何も思わない)ようにしている。日頃お店で交わす会話であれ諸々の企画であれ、「それで想像力が養われるかどうか」みたいなことを今は大切にしている。

すっごいふわふわしてきた。要するに、今のひつじがは地域密着に注力しながら(地域性を無視した)新たなローカルを作れないかを各企画に通底させている。その上でそれらを通して(またお店に関わることを通して)想像力を養ってもらえたら万々歳みたいな感じで動いている。

店内でのあれこれの他に水面下では、ひつじがによる刊行物の制作だったりオンラインで遊べるひつじがを舞台にしたマーダーミステリーの開発だったりが何人かを巻き込んでふよふよとプロジェクト化している。このあたりはまだまだ一緒に作る仲間を募集しているので、それこそ地域問わず興味ある方はお声がけください。無論それ以外でも「面白そうな○○があるよ」というお話も大歓迎です。

あとこれはもう何度も公言しているが、もっと若い人たちにこの場所を認知してもらいたい。大学生はもちろん、小中高生にも。特に開店直後の早い時間帯なんかは基本凪いでいるので、そういう時間をうまく使えないものか。それに合わせてひつじがのあり方ももしかしたら変わるかもしれないし変えてもいいと思う。このあたり(ひつじがと県内外の小中高大生のつながりをつくる)を一緒に考えてくれる人いたらどしどしお声がけください。小中高大生が直接声かけてくれたらもう最高。

最近よくお店に来てくれる若い作家さんが「やりたいことはどんどん発信してて、そしたらどんどん実現してる」なんて言ってたのに感銘を受けて、下半期はやりたいことをどんどん言語化していこうと思った。若者から学ぶこともまだまだたくさんあるし、何歳になっても柔軟でありたい。

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