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プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)とは?

概要

11月11日(金)の「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2021 in 東京」の最終時間帯でセミナーをさせていただきました。

タイトルは「企業の効率化は、顧客の不満をつくる?プロアクティブ・エンゲージメントで実現する真のエフォートレス体験」というテーマで、お話しました。

2日間のイベントの最終日・最終コマ、ということで、以下の制約を自らに課して実施しました。
(1)本展示ブースで誰も訴求していない、20くらいのセミナーで誰も言っていないことを言う
(2)「KARAKURI digital series」の製品・サービスの売り込みは一秒もしない
(3)「CS(カスタマーサポート)をエンパワーメントする」という当社サービスのパーパスに沿ったかたちで、セミナーを聞いていただいた企業様の日々の活動に間違いなくプラスになるようにする

(1)については、半分は偶然(もともと「先回りCS」について話す予定ではあった)でもあるので、「誰も言っていない」というのは「誰も課題として捉えていない」ということで、大滑りする可能性もあったので不安でもありました。

結果的には「感動しました!」という反応も得られたので、「カスタマーサポートをエンパワーメントする」という我々のパーパスに沿った内容でよかったかなと思います。

コールセンターのDXがうまくいかない理由とプロアクティブエンゲージメントの関連について

結論と、「プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)」というテーマ設定の背景

結論は、「プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)」の概念で、CS組織をアップデートできる!」というものです。

考え方を取り入れるだけで、成果が変わる!?ウソのようでホントの話。

実はめちゃくちゃ新しい何かではなく、カスタマーサポート部門(以下、CS部門)では、わりと置いてけぼりなまま放置になっているケースがあるテーマで、「顧客の困りごとはいつ、どのような形で発生するのか?」「それを予防、もしくは解決するまでの体験をもっとスムーズにできないか?」という目線で施策改善を実行する、というものです。

「プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)」の観点がないだけで「成果がいまいちなもったいない施策が溢れている」というのが現状で、そこを少しでも打破できればいいなと思っています。

なぜ、このテーマで話をしたのか?

まずは、「なぜ、プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)」について話をすることにしたのか?に軽く触れておきます。

成功事例は多いが、失敗事例はあまり語られない

展示会なので当たり前ですが、様々なツール導入の成功事例が展示ブース・セミナーで多く発表されていました。しかし、「コールセンターのDXを通じて、事業や顧客体験を変革できた!」というまでのインパクトが出せてない、というのモヤモヤを多くの方が抱えているでは?と、セミナーに出てみたり展示ブースを見て回って、感じました。勝手な妄想かもしませんが・・・(笑)もちろん、我々が力不足、というのが理由の一つなので、もっと頑張っていきます!というのに帰結するのですが。

セミナー開始直後に、「自社(または、支援先)のコールセンター・コンタクトセンターのDXはうまくいっていますか?」という質問をしてみました。実際に手が上がったのは、、、、なんと0名でした(60名くらいのうち)。謙遜もあると思うので、なんとも言えないですが、まだまだチャレンジの途中である、ということかなと思います。

IBMのWatsonシリーズが、2015年に日本展開を開始したのを「コールセンター・コンタクトセンターのDX元年」とすると、2022年で約7年くらい経過していることになります。

弊社がサービスを提供開始したのが2018年なので、その4年間で、様々な失敗経験を積んできました。

顧客体験(CX)と従業員体験(EX)で、課題を無理やり抽象化

コールセンター・コンタクトセンターの顧客体験(CX)まわりのDXといえば、自動応答による24時間サポートの実現というのが大テーマであったと思いますが、「思ったほど成果が出ない」という意見を見聞きします。弊社のようなAIセルフサービスのベンダーがもっと努力すべき領域ですので、全く他人事ではないですが・・・。

従業員体験(EX)まわりについても、様々な取り組みがなされていますが、やはり「オペレータの採用・教育」という根本課題から、課題があまりアップデートできていない(ずっと同じことに悩み続けている)ようにも思います。こちらのテーマは本セミナーでは、時間の都合上、お話ができなかったですが、「CSをエンパワーメントする」ために弊社も前のめりに突っ込んでいっている課題なのでご興味ある方は別途ご連絡ください。

我々の失敗経験から得た知見と新しいチャレンジ

そんな「成果が出ないAIセルフサービス(AIチャットボットやFAQ)」は、なぜ生まれるのでしょうか?
弊社がさまざまな取り組みをしていく中で、見出した共通項は「いかに使ってもらうか?」という観点が薄い、ということです。

「FAQやチャットボットを作って終わり」「閉じた世界だけでの改善活動」ではいけない

「成果が出ないAIセルフサービス」は、ほぼ全てのパターンで、「そのセルフサービスの利用者数が少ない」ということが挙げられます。AIセルフサービス(FAQやチャットボット)の提供をしてきた弊社で「最初にぶち当たる定番のハードル」です。
その結果、狙った成果が出ない、という結果に一直線に繋がります。

AIセルフサービスは「そのページの訪れた方の平均1%」というデータもあります。単純に割合が高ければいいというものではないですが、改善の余地ありのケースが多いです。

なぜ「狙ったとおりに顧客が利用されない」ことが発生するのか?顧客目線に立ってみると、「セルフサービスを使わない(使えない)」理由は様々あることがわかります(次のスライド参照)。

セルフサービスを使わない(使えない)顧客の理由

一言でいうと、「探せない」「わかりづらい」という理由です。

一方で、そもそも顧客はセルフサービスを利用しようとしているのか?というとどうでしょうか。アンケートベースでは約8割くらいの顧客がWEBサイトを見ている=自分で解決しようと試みている、という結果も出ています。

顧客はコールセンターに電話を掛ける前に、WEB検索やWEBページ閲覧を試みている
同じアンケート。「調べたが自己解決しなかった」という回答も多い

「顧客は、自らの問題を自ら解決しようと試みている」し、「企業サイドも最先端のAIセルフサービスの導入などで、Q&Aコンテンツの提供はがんばっている」のにも関わらず、なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか?
弊社は、複数の失敗経験から、企業側が「Q&Aコンテンツを強化すればするほど」、逆に顧客がそのコンテンツを探す難易度が上がっているのでは?という仮説を立てました。

企業の効率化のための活動が、顧客の不満をつくってしまう?

がんばっているのに、そのがんばりが水の泡どころか逆効果になっていたりすると、、、、考えるだけでも寒気がするような状況ですよね。

我々がその仮説にたどり着いたのは、「サイレントカスタマーを救う!次世代AIチャットボット」を提供するために「hello」という接客機能を作り込んでいった過程で気付いたことが起点になります。

このKARAKURI helloという次世代AIチャットボットは、
・顧客の行動データと会話データを分析し、
・顧客の困りごとを推定することで、
・一律の会話ではなく、その困りごとに沿ったメッセージで会話をする
というサービスです。

リリース当初の狙いは、「問い合わせのハードルを下げる」ことで、「疑問を持ちながらも、今まで問い合わせをしなかった顧客=サイレントカスタマー」の利用を促進して、結果的に疑問解消体験・不満解消体験の提供数を上げるというコンセプトでした。

KARAKURI helloの数社の運用を開始してみると、「利用者数の向上」だけでなく、「チャットボット利用者の満足度の向上」にも大きく寄与した結果が得られました。しかも、Q&Aコンテンツ自体の改良はせずとも、Q&Aコンテンツの見てもらう順番を変えるだけで、大きく数字が改善したのです。

特定の企業様のテストですが、利用も満足度も大きく向上

このことから、「Q&Aコンテンツの改良」や「Q&Aコンテンツの検索体験の向上」だけでは、AIセフルサービスの体験としては不十分では?という思いに至りました。
その中で、「プロアクティブ・エンゲージメント」というコンセプトに出会い、「カスタマーから問い合わせが来る前に、CXを提供すること」という概念が、まさにセルフサービスの失敗を避けるために必要なコンセプトである、という思いにたどり着きました。

プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)のコンセプトが失敗回避に重要

プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)を、既存のCSに組み込みには?

「カスタマーからの問い合わせが来る前に、企業側からCXを提供すること」という定義だけみると、めちゃくちゃ未来感満載で、実現不可能では?と思いませんでしょうか?そんなことはないですw
勝手に簡単に意訳すると、「いかに心地よくAIセルフサービスを利用してもらうのか?」という観点からスタートできると思っています。

「セルフサービス」と「プロアクティブエンゲージメント(先回りCS)」の違い

ものすごく乱暴にいうと、顧客の不満・ボトルネックを理解する際に、「顧客が何に困っているのか?」というでけでなく、「いつ、どんなシーンで困るのか?」という観点を入れるだけで、そのタイミングでCXを提供するには?という発想がスタートできると思っています。

本来であれば、顧客の不満・ボトルネックを「予防する」ということに挑戦したいところですが、まずは「顧客が検索しなくても、自分に合った問題解決手法を知るには、企業としてどんなことができる?」ということからスタートしてもいいと思います。それが、プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)の最初の一歩になると考えています。

まずは、「検索してなくてもいい優しいセルフサービス」の提供を模索!

ぜひ、今までAIセルフサービスの運用・改善活動をぜひ振り返ってみてください。
顧客が、「Q&Aコンテンツを『探せない』『わかりづらい』」という問題に対して、「Q&Aコンテンツを豊富に取り揃える!」「検索エンジンをアップデートする!」という改善だけに留まっていないでしょうか?その場合、改善のポテンシャルあり!です!

努力の方向性を変える必要がある!?

ぜひ、プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)のコンセプトと取り入れて、「もっと顧客の困りごとは、どんなタイミングで発生するだろうか?」「その困りごとのタイミングを捉えて、最適で最小のコンテンツの案内方法はないか?」という目線での改善を試みてください。きっと、成果が上がり始めると思います。

小さな改善例も1つご紹介。以下のスライドに記載していますが、例えばAIチャットボットの『訴求の吹き出し』のメッセージを、一律なものから顧客の困りごとに寄り添ったかたちに変えることから初めてみてください。これで『利用者数が向上しない』というケースがあれば、それはそれでレアケースだと思うので、メッセージください。

例えば、チャットボットの吹き出しメッセージを変えるだけで大きく数値がUPするかも!?

このように、考え方を変えるだけで、改善の方向性が変わり、結果も変わってくるので、「プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)」のいうコンセプトを紹介させていただきました。

まとめ

「最適で少量のQ&Aコンテンツを提供するには?」を磨きこみましょう!

以上が、本セミナーのハイライトです。

CS部門の方以外のから見ると、「いかにして利用を促すか?」という観点って、わりと当たり前の観点では?というツッコミが出るかもしれません。

1つだけ、言い訳させていただくと、CS部門で自部門で改善活動できる裁量が限定されているという問題もあることをお伝えしておきます。

例えば、「FAQの改善」というテーマになった際に、CS部門で解決可能なことは「Q&Aコンテンツ=FAQ文章や図の改良」や「FAQの検索エンジンの改良」くらいに留まるケースも、意外と一般的なケースではないでしょうか?

顧客の解像度を上げるには、CS部門以外が持っているデータ等と突き合わせる必要があり、部門関連携は必須となります。

CS部門だけでなく、他の部門と協働で実現できることが大多数を締めます

このCS部門と、他部門(IT部門、情シス部門、マーケティング部門etc)と連携ができていないから、「顧客にいかに使ってもらうか?という利用促進の観点」を持っても、施策が実行できないという前提があるので意味がない、と半ば諦めてしまうケースもあると思います。ただ、逆を返せば、部門間連携ができてしまえば、(現状、連携できていない場合は)すぐに大きな成果が狙えると思うので、チャンスしかない!とも言えます。

部門間連携の秘伝のタレ、というのがあれば、シェアしたいですがw特にまだ見つかっていないので、共通のビジョン設定など、泥臭くやっていきましょう(微力ながら協力しますので、お声掛けください!)

最後に、、、、プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)の実現については、弊社もまだまだ道半ばです。
本セミナーで紹介させていただいことも、プロアクティブ・エンゲージメント(先回りCS)に半歩突っ込んだレベルに留まっていると思っています。本丸の「ボトルネックの予防」「企業からコミュニケーションを開始する」という点はまだまだこれからかと思います。
「顧客から問い合わせが来る前に、企業からCXを提供すること」という定義を実現するための、実験的な取り組みをさまざま開始しています。
そちらにご興味ある方、実験に加わっていただけるかたは、ぜひメールか、SNSからメッセージください!


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