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異世界へトリップ!見たこともない世界へ連れてかれる映画5選

皆さんにとって、映画と観るという行為は何を意味してるだろうか?何かを学ぶ、非日常的体験をする、暇つぶし…状況によって意味合いも変わってくるだろうし、人の数ほど答えはあるだろう。

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筆者にとっても、映画を一言で言い表すのは難しい。だが、一つ挙げるなら映画は、見る人をここではない何処かへ連れていってくれるものだと思う。そういう意味で映画を観ると行為自体が、異世界へのトリップ体験とも言えると思っているのだが、今回はその中でも特に「なんじゃ、これは?」、「私はいったい何を見てるんだ…」と思わず言いたくなるような、観る者を混乱させる…そんな映画を5作品紹介したい。

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【エル・トポ】製作年:1970年 製作国:アメリカ・メキシコ合作

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まずは、映画界の奇才として有名なアレハンドロ・ホドロフスキー監督の代表作。
この作品、ある程度の映画好きなら、観てなくても名前くらいは聞いたことあるのではないだろうか?ホドロフスキー監督が、その名を世界に知らしめることになったキッカケでもある作品。50年も前にも公開されたに関わらず、今なお世界中に熱狂的なファンを持つカルト作品でもある。
ビートルズのジョン・レノンが、この映画にハマって4回も劇場で観ただけでなく、マネージャーを説得して、監督の次作の配給権を買わせたというエピソードはもはや伝説。

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そんな本作、どんなあらすじなのかというと(シネマトゥデイ参照)

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序盤こそ西部劇風ではあるが、物語が進むごとに徐々におかしくなっていき、後半には、想像もできない世界に連れていかれる。
まるで中二病のノートを具現化したような世界観は、ぶっ飛んでて荒唐無稽なのだが、不思議と本作には目が離すことができない魅力がある。それは主人公を演じた監督のカリスマ性だったり、目を引く構図だったりするのだが、魅力の要因の一つに、作品にまつわる撮影エピソードも挙げたい。というのも、撮影にまつわるエピソードが、作品に負けず劣らずぶっ飛んでいるからだ。具体的にいくつか挙げると

・序盤に登場する主人公の全裸の息子は、監督の本当の息子(序盤の砂漠に埋めたぬいぐるみや7歳の誕生日というもの本当)
・劇中で主人公と行動を共にする女性は、女優ではなくLSDをキメていた只の一般人(撮影後、行方が知れなくなっている)
・劇中に登場する大量のウサギは、本当に死んでいる(熱中症で死んだとの事)


間違いなく、当時だからこそできたであろう事だろう。上記のエピソードを知って、本作を観るとより感慨深いものがあるので、観てない方は是非観てみて欲しい。こうしたエピソードも相まって、本作は今なお語り継がれる伝説の作品となっている。

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【お薦めはコメンタリーで、2回目鑑賞!】
筆者が、個人的にお勧めしたいのが、1回観た後に2回目はコメンタリーで本作を鑑賞する方法。上記に挙げたようなエピソードが監督の口から語られて、聞いてるだけでとても面白いし、劇中内の演出についても、監督の理屈に基づいてる事がよく分かって納得できたような気分になれる。これから鑑賞する人は是非この方法を試して欲しい。まさに1本で2度楽しむことができるぞ。

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そんな本作だが、実はホドロフスキー監督の新作『ホドロフスキーのサイコマジック』公開に合わせて、期間限定で劇場公開が決まっている(コロナ騒動で、公開日は未定)
また新作公開に合わせて、ホドロフスキー作品のコラボグッズの販売もしているので、興味ある方はこちらも是非覗いてみては。

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【アンダー・ザ・シルバーレイク】製作年:2018年 製作国:アメリカ

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お次は若手の新鋭デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の長編3作目『アンダー・ザ・シルバーレイク』。セレブやアーティストたちが暮らすロサンゼルスの街シルバーレイク。ゲームや都市伝説を愛するオタク青年サムは、隣に住む美女サラに恋をするが、彼女は突然失踪してしまう。サラの行方を捜すうちに、いつしかサムは街の裏側に潜む陰謀に巻き込まれていく…(映画.com参照)
本作は、あらすじだけ見ると高級住宅街を舞台にした失踪事件の話かと思うが、映画の舞台になっている「シルバーレイク」には「犬殺しの噂」や「呪われた街」などの都市伝説的な要素が散りばめられており、一筋縄ではいかない事件となっている。
更に暗号、隠し言葉、サブリミナルなども複雑に絡み合っており、物語が佳境に進むにつれカオスとしかいいようのない展開となってくる。

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映画全編を通して伺えるのが、監督のポップカルチャーへの偏愛。
主人公のサムは映画やゲームに詳しいオタク。劇中には『スーパーマリオブラザーズ』、『ゼルダの伝説』などが謎を解くヒントとして出てくるし、謎解きもオタクならではの知識をフル活用して解いていく。デヴィッド監督自身がは1974年生まれという事もあって、80~90年代のポップカルチャーに親しんだ人にとっては、刺さる要素の多い映画ともいえるのではないだろうか。

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【青春映画としての側面も魅力の1つ】
ポップカルチャーにサスペンス以外でもサムの青春映画として観る事ができるのも本作の魅力の一つといえるだろう。
監督はこれまでにも、アメリカに住む思春期の男女の夏休みを描いた『アメリカン・スリープオーバー』(2010年)や、ホラーというジャンルを通じて、10代の青春を描いた『イット・フォローズ』(2016年)など、「青春」を題材にして映画を撮ってきた。今作も主人公のサムの一風変わった、しかしどこか切なさを感じさせる青春映画としての側面を味わうことができる。
デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督、これからの活躍が期待できる新進気鋭の監督だ。


【幻の湖】製作年:1982年 製作国:日本

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三つめは日本の作品を紹介したい。
まずは、このあらすじを読んで欲しい。
雄琴のソープランド街で「お市」の源氏名で働くソープ嬢道子は、愛犬シロと琵琶湖の西岸でマラソンをするのが日課であった。そんな彼女が近頃気になっているのは、葛篭尾崎の付近を走っていると時折聞こえる、哀しげな笛の音だった。
そんなある日、道子の心の支えだった愛犬のシロが和邇浜で殺されているのが見つかった。凶器の包丁と様々な証言をもとに犯人が東京の作曲家日夏という男だと探りあてたものの、警察は頼りにならず、怒った道子は自ら東京へと乗り込む。かつて道子の店にソープ嬢として潜入していた米国の諜報員ローザの尽力で、日夏の住所とジョギングが趣味であることを知った道子は、得意のマラソンで日夏を「倒れるまではしらせてやる」と決意する…(Wikipedia参照)

愛犬の復讐をマラソンで果たすというのも謎だし、米国の諜報員というのも何ぞや?という感じではあるが、本作は話が進むにつれ、戦国時代に舞台が移ったり、宇宙にまで話が及ぶという壮大で珍妙な展開が待っている。本作は東宝創立50周年記念作品として封切られたが、上記のような珍妙な内容が観客に理解される筈もなく、公開2週間で打ち切られている。事実、本作は164分という長尺の割に、ジョギングシーンが異様に長かったりと冗長に感じる場面が少なくない。

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そんな本作を撮ったのは、橋本忍監督。『生きる』(1952年)、『七人の侍』(1954年)などの黒澤明監督作品をはじめ、『ゼロの焦点』(1961年)、『日本のいちばん長い日』(1967年)など日本を代表する作品の脚本を手掛けてきたまさに巨匠と呼べる人物だ。
それ程の巨匠が何故こんな作品を?と思ったが、その製作経緯が、なかなかにぶっ飛んでる。
本作は、橋本忍自身が監督した映画『八甲田山』(1977年)の撮影時に、ロケ現場にあったブナの木に話しかけた際に頭に浮かんだ一枚の絵が元になったという。その絵は、「日本髪を振りみだした若い女が、出刃包丁を構え、体ごと男へぶつかっている」物であり、その女は縄文期より過去、現在、未来へと生まれ変わり続けているという設定を構想したらしい。監督何かに取り憑かれてたのだろうか…

幻の湖③

本作は、長らくソフト化もされてなかったが、2003年にはDVD化されており、現在は日本を代表するカルト作品の一つとして知られている。興味を持った方は是非観てみてはどうだろ。


【ディアマンティーノ未知との遭遇】製作年:2018年 製作国:ポルトガル・フランス・ブラジル合作

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本作は、ポルトガル代表のサッカー選手ディアマンティーノを巡る奇想天外な物語。こちらも観る者を困惑させるであろう、ぶっ飛んだ作品だ。クリスティアーノ・ロナウドそっくりの主人公のディアマンティーノ。彼はサッカー選手なのだが、試合中、いわゆるゾーン状態に入ると周りをフワフワした犬たちが現れる。この画のインパクトが、まず凄いし、これだけでこの映画が一筋縄ではいかない事が分かる。

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物語は、スーパースターであった彼が難民に遭遇したことをきっかけに、サッカー選手を引退することで動き出すのだが、そこからの展開はまさにカオス一色。彼を利用しようとする双子の姉や、彼を監視している同性愛者の捜査官達が暗躍するのだけども、その様子はツッコミどころ満載。また、サッカーだけに人生を捧げてきたディアマンティーノは社会に対しては驚くほど純真で無垢な存在。そんな彼が、LGBT、クローン、養子問題にパナマ文書と様々な社会問題が織り交ざった世界を渡り姿は一種の寓話のようにも見える。本作は海外の映画祭で高い評価を得ており、カンヌ国際映画祭では、国際批評家週間グランプリ、パルム・ドッグ審査員を受賞している。日本では、ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で上映された。本作も興味ある方は是非とも試してみてはいかがだろうか。


【マルコヴィッチの穴】製作年:1999年 製作国:アメリカ

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本作は『かいじゅうたちのいるところ』(2010年)、『her 世界でひとつの彼女』(2014年)のスパイク・ジョーンズ監督の長編デビュー作。
人形使いのグレイグが、マンハッタンの7と2分の1階にある不思議な会社で見つけた小さな穴に入ったところ、その穴は俳優ジョン・マルコヴィッチの頭に直結する穴だった…という話。正直、これだけ読んでも何のこっちゃだろう。
こんな奇妙な脚本を書いたのは、映画界随一の奇才チャーリー・カウフマン『エターナルサンシャイン』(2005年)、『脳内ニューヨーク』(2009年)など、彼が脚本・監督した作品はどれも一筋縄ではいかないものばかり。もし、これを読んでる貴方が、奇妙な映画を観たいと思った時は、彼が脚本を担当した作品を観れば大体満足できると思う。

マルコヴィッチの穴②

チャーリー・カウフマンの脚本の特徴を挙げるなら、奇妙奇天烈なストーリー展開「人間」という生き物を観察するような俯瞰的な視点だと思う。本作でも人形使いのクレイグがチャーリー・カウフマンという俳優(しかも劇中だけでなく実在の人物)を操るという構図も含め、そこから巻き起こる騒動で浮かび上がるのは、人間の滑稽さと悲哀さでもある。そして、奇妙な物語とミュージックビデオ出身のスパイク・ジョーンズ監督のビジュアルが見事にマッチして物語の魅力を更に引き立たせてくれる。
主人公クレイグの妻役で、キャメロン・ディアスが出演しているのも何気にみどころの一つだと思う。奇妙だけど、最後はもの悲しさも感じさせてくれる本作。興味ある方は是非ぜひ。

マルコヴィッチの穴①

ちなみにチャーリー・カウフマンの最新の動向だが、ブリー・ラーソン主演で、Netflix製作のホラー映画の脚本・監督をしているらしく、こちらも大変気になるぞ。

いかがだっただろうか。ここに挙げた作品はどれもある意味癖が強い。だからこそ全ての人にお勧めできないし、観る人を選ぶだろう。しかし、だからこそ自分だけに強烈に刺さる作品がある可能性があるともいえる。もし、興味のある作品があれば、是非ともその奇妙な世界を覗いてみてはどうだろう。


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