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『ドクターストレンジ』の新作はMCUファンにとっての踏み絵か?

5月4日から公開されている映画『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作で、最強の魔術師になった元天才外科医ストレンジの活躍を描いたシリーズで、1作目『ドクター・ストレンジ』(2016)の続編にあたる作品だ。

先行公開された日本では、公開初日に動員30万人&興行収入4.2億円を記録し、MCU史上歴代3位を記録している。本国でも初週で興行収入約224億円を叩き出し、2022年最大のオープニング記録を叩き出すなど世界的に人気を博している。

2022年製作/126分/G/アメリカ

そんな本作だが、作品内容について映画ファンを中心に「ある事」で物議を醸している。それは本作を観るにはディズニー公式の動画配信サービス「Disney+」のMCUドラマ『ワンダヴィジョン』の履修が必要であるという事だ。

ネタバレにならない範囲で語ると、劇中に登場する「ワンダ」というキャラクターの行動原理や物語の展開で、ドラマを鑑賞していないと理解ができない部分が出てくるというものになる。

MCUドラマ『ワンダヴィジョン』全9話

この「映画を観るためにドラマを履修する必要がある」という事に対して、SNS等では賛否の声が挙がっている。

今回の記事では『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』についての感想ではなく、ドラマと映画を連動させる手法についての観客の声、懸念される点などをまとめてみた。

※内容に深く触れるようなネタバレはしてませんが、未鑑賞の方は自己責任でお願いします

「映画を観るためにドラマを履修する必要がある」ことへの反対意見をいくつか挙げると、映画を観るために、有料の配信サービスに入ることに抵抗がある、ドラマ数話分の時間を作るのが大変、ディズニーのやり方に抵抗がある等の意見がみられた。

対して賛成意見では、MARVEL好きならドラマも抑えておくべき、「Disney+」の会費もリーズナブルで加入しやすい為、ハードルは高くない、ディズニーの手法もビジネスと割り切れば問題はない等の反対意見に対する反論のような意見ががみられた。

ストレンジの新作を観るのにMCUドラマの履修が必要ということに対しての賛否のまとめ

こうした意見をまとめてみると、賛成と反対の違いは「好き」の度合いの違いだといえる。「Disney+」に加入して数話分のドラマを鑑賞する、MCUファンなら造作もない事だろう。だが、MCUは好きだけど、そこまでハマってる訳ではないという人にとって、1本の新作映画を観るためだけに、わざわざ有料サービスに加入して、お金と時間を費やすのは負担だろう。

MCUファンの中には「ここまで観てるのに今更ハマってないという人がいるのか?」と思う人もいるかもしれないが、筆者がそうで今まで映画だけで繋いでたから観てきたというのもある。

自分の推しコンテンツにどれだけ愛情を注ぎこめるか?こうした問題はMCUに限らず、アニメや漫画などの人気コンテンツでもよく見られる話だ。

そういう意味で『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』は「MCU好きの愛」を試す踏み絵のような作品になってるように思えた。

【これからのMCUはドラマ鑑賞は必須?!】

実はマーベルの社長ケヴィン・ファイギはMCUの今後に関して、フェーズ4 に関しては「ドラマと映画をあわせてひとつのMCUというシリーズになる」と明言している。

MCUフェーズ4一覧
・ワンダヴィジョン
・ファルコン&ウィンター・ソルジャー
・ブラック・ウィドウ
・ロキ
・ホワット・イフ…?
・シャン・チー/テン・リングスの伝説
・エターナルズ
・ホークアイ
・スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム
・ムーン・ナイト
・ドクターストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス
・Ms.マーベル
・ソー:ラブ&サンダー
・Black Panther: Wakanda Forever(原題)
・The Marvels(原題)
・Guardians of the Galaxy Vol.3
・Ant-Man and the Wasp: Quantumania(原題)
※フェーズ4がどこで区切られるかはまだ決まってない。
他作品も発表されているが、フェーズに組み込まれるかは判明してないため記載は避ける。

事実、今後予定されているMCUの映画作品の中にはMCUドラマのキャラクターが登場することが明かされている。
なので、今回の「映画を観るためにドラマを履修する必要がある」という方法に関しては、今後も定期的に議論される話題になるかもしれない。

例えば『キャプテン・マーベル2』にあたる『ザ・マーベルズ』にはMCUドラマの『ワンダビジョン』、『ミズ・マーベル』のキャラクターが出演することが明言されている。

今回の記事は「映画を観るためにドラマを履修する必要がある」に対して内容の是非を判断する記事ではない。筆者自身はライトなMCU好きだが、ドラマと映画が融合することとその方法論に対し異を唱えるつもりもない。(お金と時間を費やしてる分、恩恵を受けれるべきというのも分かる)

だが、今回の事で、ある懸念が脳裏に浮かんだので、下記でその事ついてにも触れておきたい。

【懸念される点】

①ライト層のファン離れ⇒ブランドの衰退化

フェーズ4の今後の方向性が「ドラマと融合」ということであれば、上記で挙げたような、あくまでも「気楽」にMCUと付き合いたいファンは、少なからず離れていくことが考えられる。

これの何が問題かというと入口が狭くなっていく&従来ファンの減少によりブランドを支える力が徐々に弱くなっていくのだ。

MCUはすでに新規参入しにくいコンテンツになっている。なので、ここまで観てきてくれるファンも離れるとMCUの存在自体が「ファンのためだけのコンテンツ」になっていく可能性が挙げられる。そして、そうしたブランドの多くは衰退化していく傾向がある。これが懸念される可能性の一つだ。

②観客側の負担:他のコンテンツでも同じような手法が取り入れられた場合

もう一つの懸念は、こうした手法(会員限定の配信ドラマ+映画)が、他のコンテンツでも主流となった場合、結果的に消費者の負担が増す可能性だ。

今回の件で思ったのは、同じDisneyコンテンツの「STAR WARS」でも似たようなことが起きるのでないかということだ。ご存じの通り、コンテンツ配信業界は各会社が熾烈な争いを繰り広げている。Disneyが自身の会員数を増やすために映画とドラマの融合を推し進める。この可能性は充分にあるのではないだろうか。

これがMCUとSTAR WARSだけなら「Disney+」内で収まるからいいだろう。だが、MCUのライバル的存在「DCEU」を持つワーナーが自身の配信サービス「HBO MAX」(日本ではU-NEXTで配信されている)などが、同じようなことを始めたらどうなるだろうか?

映画を観るために、複数の有料配信サービスに加入しなければならない…そんな時代が訪れるかもしれない。

ワーナーが運営する本国の配信サービスHBOMAXでは、今はあくまでもスピンオフ扱いだが今後、MCUと同じような展開をしていくことは充分にあり得る。

②に関しては、現在そうした構想がある訳でなく、あくまで筆者の空想の域の話ではある。しかし、今後充分にそうなる可能性もあるため記事にさせていただいた。

貴方は今回の鑑賞方法についてどう感じただろうか?是非コメント欄で感想や意見などを聞かせて頂けるとありがたい。

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