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ウォン・カーウァイの再来なるか?!『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』を見逃すな!

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2月28日に公開された『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』。この映画、物語中盤で2Dから3Dに切り替わるという事で話題に挙がっていた作品だ。先月、ヒューマントラストシネマ渋谷で観てきたが、これが大変面白かった。本作を撮ったビー・ガン監督は、今作が長編2作目の若手監督だが、既にウォン・カーウァイの再来と映画業界からの評判も高い。

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これからのアジア映画を台頭する監督の一人であることは間違いないだろう。こんなご時世ではあるが感想を記しておきたいと思う。興味ある方は是非読んでいって欲しい。

【この映画にまつわるエピソードが凄い】

内容について語る前に、この映画に関するエピソードが面白い。この映画の原題は『中国最後の夜』。その題名にちなんで、ビー・ガン監督は、通常ではあり得ない2018年の12月31日に公開を決行、全てのシネコンで終了を0:00にするように設定した。通常なら、興行には不利に思える上映形式だが、この上映形式が逆に話題を呼び、わずか一日で興行収入41億円という驚愕の数字を稼ぎ出し、中国のインディーズ映画の歴代一位を築くという快挙を成し遂げた。この事自体がドラマチックなのだけど、このエピソードからはビー・ガン監督のこだわりとロマンチストな人間性をうかがい知ることができる。
映画自体の評判もすこぶる高く、第71回カンヌ国際映画祭『ある視点』部門で上映第55回金馬奨(撮影・音楽・音響)三部門受賞、第19回東京フィルメックスでは学生審査員賞を受賞している。

【中盤からの3D&60分のワンカット!これは初人生初の映画体験!!】

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この映画の一番の売りは何といっても、映画史上初ともいえる、中盤での2Dから3Dへの切り替わり&そこから始まる圧巻の60分ワンカットと言えるだろう。
筆者は、映画を観るという事は、日常から非日常を体験するという行為だと思っている。そういう意味で、この映画の中盤から3Dになるという展開は、それ自体が、非日常から更に非日常へ進んでいくような感覚で、非常に忘れがたい体験だった。また、3Dになってからの浮遊感が、これまたたまらなくて、映画の世界に浸らせてくれる。

【ハードボイルドな物語に、3人の撮影監督によって撮られた美しい映像が映える】

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かつて愛した女性によく似た女性に出会う…物語の導入部はこうだ。この物語、主人公の立ち位置といい台詞回し、といい、ハードボイルド小説を連想させる。台詞の言い回しもそうなのだが、音楽や映像、登場人物の立ち振る舞い(やたら林檎を食べるシーンなど)にもビー・ガン監督の強いこだわりを感じる。そして、撮影監督が3人いるというのもこの映画の大きな特徴の一つ。ホウ・シャオシェンの作品で知られる台湾のヤオ・ハンギ、中国人カメラマンのドン・ジンソン、そしてアカデミー外国語映画賞候補となった『裸足の季節』のフランス人カメラマン、ダーヴィット・シザレの3人だ(ちなみに3Dのシークエンスを撮ったのは、ダーウィット・シザレ)孤独な男のハードボイルド物語に美しい映像がよく映える。

【夢か現実か、記憶と夢が織りなす幻想的な物語に魅了される】

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この映画のテーマは「現実と夢」、そして「記憶」。主人公は、かつて愛した女性の面影を追い求めていく道中で、亡き親友の過去などを思い出していく。やがて時系列も交錯していき、観客は現実と虚構が入り混じった世界の中へ、引き込まれていく事になる。前述したようにハードボイルドな作風に加え、時間軸もあやふやになっていくため、正直、観る人を選ぶ作品で言うことは間違いない
また、公開規模に比べて、著名人達からのコメントの量と内容が凄まじいのも本作の特徴の一つなのだが、坂本龍一はじめ椎名林檎、松本大洋、後藤正文など、その顔触れから伺えるように、いわゆるアート映画と呼ばれるジャンルに括られる映画だろう。

【初長編作品、『凱里ブルース』も公開!】

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ビー・ガン監督の初長編作品『凱里ブルース』も4月18日に公開が決まっているビー・ガン監督。『ロング・デイズジャーニー』と似通ってる作品との事で今から観るのが楽しみだ!(コロナの影響でどうなるかは謎だが)
これからの作品が楽しみな監督だ。

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