【呪われた企画】『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』がようやく公開されるぞ【一人の監督の執念】

これまで何度も企画が頓挫し、公開が危ぶまれていたテリー・ギリアム監督の「ドン・キホーテ」。昨年のカンヌ国際映画祭のクロージングを飾った後も、作品の権利関係などで、日本での公開の音沙汰がなかったが、この度、ついに『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』という邦題で2020年1月24日より公開が決定したぞ!!

テリーギリアムのドンキホーテポスター画像

「映画が全てを狂わせる」このキャッチコピーが秀逸過ぎる…

思えばテリー・ギリアムという人は、これまでも数々の不運を見回ってきた人物だ。ちなみにテリー・ギリアム監督とはどんな人物か簡単におさらいしておこう。

テリーギリアム①

【テリー・ギリアム】アメリカ生まれのイギリスの映画監督。1940年11月22日生まれの78歳。イギリスのコメディグループ「モンティ・パイソン」のメンバー。これまで手掛けてきた作品は『未来世紀ブラジル』(1985年)『フィッシャーキング』(1991年)『12モンキーズ』(1996年)『ゼロの未来』(2013年)などがある。

未来世紀ブラジル

【作品を巡る数々の不運】
『バロン』(1988年)が、映画史に残る大コケをして(製作費4600万ドル以上「76億円」に対し、800万ドルの興行成績)、しばらく自身の脚本で映画を撮れなくなったり『Dr.パルナサスの鏡』(2009年)では、主演を務めていたヒース・レジャーの急逝によって、映画の完成が危ぶまれたりと、(ヒースと親交のあったジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの三人によって危機は免れた)テリーギリアムはこれまでも様々な不運に見舞われてきた。
その事もあって、テリーギリアム=不運な監督という印象を受けてしまうが、その印象を決定づけたのが『ドン・キホーテ』だ。
テリーギリアムは本作の事を「この仕事をするのに人生の多くを無駄にし過ぎた」と語り、邦版のサイトでは、本作の事を「映画史に刻まれる呪われた企画」と評している。
ドン・キホーテ役にはジャン・ロシュフォール、トビー役にはジョニー・デップ、また彼の恋の相手役は、同時デップと交際していたヴァネッサ・パラディと、豪華なキャスティングがされていた本作。しかし、このキャスト陣で映画が完成することはなかった。

では、具体的にどんな事があったかというと

① ロケ地がNATOの軍用地に近かったため、軍用戦闘機が頻繁に飛び交い、録音テープが使い物にならなくなった。

② 突然の鉄砲水に襲われて撮影機材が流出し、またこれによって崖の色が変わってしまい、それまでに撮ったテープが使えなくなった。

③ ドン・キホーテ役を演じたジャン・ロシュフォールが、乗馬の際に腰を痛め椎間板ヘルニアと診断される(そして、そのまま降板となる)

このような事態に見舞われたため、映画の製作はキャンセルされ、映画の権利は保険会社へと移る事となる。
ちなみにこの映画が作られなかった顛末は、ドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』(2002)年にもなっているぞ(本来はメイキング映像として使用される予定だった)

ロストインラマンチャ

【その後も頓挫する企画】
しかし、その後もギリアムはあきらめなかった。
プロデューサー達とともに、製作再開に向けた資金を取り付けようと努力し、キャスト2008年には製作を再開させる。
しかし、トビー役のデップは自身のスケジュールがタイト過ぎた為に降板をよぎなくされ、ドン・キホーテ役も二転三転して、一時期はジョン・ハートに決まるものの、撮影直前に膵臓癌と診断されたために、再び製作が中止した。
また2016年には、製作の資金確保に失敗したことが発表され、この際にはギリアム自身も「映画が死ぬ前に自分が死ぬんじゃないかな」と語っている。

その後、紆余曲折を経て、ドン・キホーテ役はジョナサン・プライス、トビー役がアダム・ドライバーに、オルガ・キュリレンコが新たな女性主役として撮影が開始され、2017年6月4日にクランクアップの日を迎える。これは最初の撮影開始から実に17年後の事だった。

テリーギリアムのドンキホーテ①

【公開を巡るゴタゴタ】
こうして、晴れて完成した本作だが、再び横やりが入る。
以前、再撮影に挑んだ時のプロデューサーから、映画に関する権利は自分が持っていると裁判を起こされたのだ(その後、ギリアム側は裁判に負けて、権利を剥奪される)
その為、カンヌ国際映画祭のクロージング作品として公開はされたものの、世界各地での公開は白紙の状態になっていた。
しかし、その後、ギリアム側から上映権については保持しているとの発表があり、今回、ようやく公開に漕ぎつけた訳である。

という訳で、こうして改めて『ドン・キホーテ』に関するゴタゴタを並べて観ると、これは凄まじい…

しかし、筆者が、それ以上に凄まじいと感じたのはテリー・ギリアム監督の映画に掛ける執念。

テリーギリアム②

もうここまで、ゴタゴタを味わったら普通は気持ちが折れてしまうだろう。少なくとも筆者は間違いなく心が折れる。

それでも諦めずに、映画を完成させ公開まで漕ぎつけたテリー・ギリアム監督の情熱と執念。人として本当に凄いと思う。
もはや敬意をもって鑑賞に臨みたいとすら考えているし、本作も応援したくなるのだ。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は2020年1月24日より公開。
ここまで紆余曲折した作品がどんなものに仕上がっているのか、今からとても楽しみだ。

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