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【『岬の兄弟』監督作】33分に込められた女の情愛『そこにいた男』

11月13日に公開された『そこにいた男』本作は『岬の兄弟』で、高い評価を得た片山慎三監督の短編作だ。これからの日本の映画界を牽引するであろう監督の最新作。早速、アップリンク渋谷の11月13日の19:40~の舞台挨拶付きの回で鑑賞してきたので、その感想を内容とともに紹介していきたい。興味ある方は是非読んでいってほしい。

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ちなみに上は舞台挨拶の様子。一番左が片山慎三監督。真ん中は主演の清瀬やえこ。右は安井秀和。当たり前だけど、映画の中の雰囲気と違い清瀬やえこさんは、とても爽やかで素敵な印象の方でした。監督も作品から受ける印象と違い穏やかそうな方でした。

【作品の情報:『そこにいた男』】

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製作年:2020年 製作国:日本 監督:片山慎三

【実在のホスト刺殺事件にインスパイアされた本作】

この作品の特徴として挙げられるのが、実在の事件をモチーフにしていること。その事件は2019年の5月23日に起きた新宿ホスト殺傷事件。ガールズバーの元店長・高岡由佳被告が、自身が通いつめていたホストクラブの店員・琉月さんの腹部を包丁で突き刺した事件だ。

この事件は公開当時、ネットを中心にかなり話題になった事件なので知っている人も多いのではないだろうか。詳しい話は上の週刊文春デジタル様の記事を参照にして欲しいが、この事件が有名になったのは、犯行直後の現場写真がSNSで拡散されたことにある。今作の冒頭シーン、実はこの事件で拡散された現場写真を再現しているのだが、その再現度が見事。上記の記事内でその現場の写真が掲載されているが(けっこうショッキングな場面なので、苦手な方は観るのを控えた方がいい)、思わず比較して欲しいくらい似ている。

【場面の随所にみられる片山監督流の演出】

本作は上映時間が33分だが、短編とは思えないぐらいの見応えがある。まず、その理由が脚本。話自体は『よくある話』で、冒頭に結末が映されることもあって展開は容易に読めるのだが、構成が巧みで面白い。『岬の兄弟』でも話の構成や見せ方が面白かったが(脚本をつとめたのは片山慎三)、今作でも「名前」を中心として展開が変わっていく展開がお見事。そして本作を更に魅力的にしているのが、キャスティングとキャストの演技。本作の主人公の紗希を演じた清瀬やえこの不気味な佇まいは作品の雰囲気にピッタリ、特に同居してる女性を追い出すときの、ヒステリックでサイコな感じは思わず身構えるほどのインパクト。安井秀和演じた翔の軽薄な感じも合っている。

そこにいた男①

そして、本作の随所にみられるのが片山慎三監督ならではの演出。陰鬱でひどく重たい話のはずなのに、どこかクスっと笑えるユーモアが挟まれる。(特にラストの自販機の半〇〇シーンは思わずニヤリとしてしまうだろう。)これは『岬の兄弟』にも通じる演出だ。ちなみに舞台挨拶だと現場は、その内容と違い笑いが頻繁に起きる現場だったらしい。また映像が美しいのも片山監督の特徴。陰鬱な物語の中で、抜けるような空の青さやまばゆい夕焼けなど、色彩がとても美しい。こうした脚本や演出が本作を魅力ある短編に仕立てている。

(Amazon Primeほか、Rakuten TV、TSUTAYA TV等で配信中)

短編でもその確かな実力を発揮した片山監督。鑑賞後は、早く次の長編作を観てみたいと思ってしまった。そして本作に興味ある方は是非ぜひチェックして欲しい!

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