ポピュラー和声学「和声学の禁則とは」
和声学を勉強していると「禁則」というものに出会って、こんなに色々と覚えないといけないのか、っとげんなりしたことがあるかもしれません。
しかし現代の曲ではこういった「禁則」が守られていない例が多くあります。どう考えていくべきなのでしょうか。
出典はこちら。
禁則とは?
古典様式や書法においては守ったほうが良いとされる和声を組み立てるルールです。
「古典様式や書法においては」というところがポイントで、このルールは古典派の感覚に基づいたもので、現在の美的感覚と必ずしも一致しているとは限りません。
この感覚は時代とともに変化しているところも、変化していないところもあるので、なぜ「禁則」として捉えられていたかを考えていくことが大切になります。
一般的な和声学の禁則
増音程、長短7度、複音程
これらは元々、「歌いづらいから」という理由が大きくあります。
楽器においてはある程度許容されるところがあります。
連続8度、5度、並達(直行)8度、5度
連続で2声部間で8度や5度が続く進行は、全体の響きから突出する「硬質な響き」になるので、古典派の音楽では避けられます。特に外声間は目立つので避けられます。
並達(それぞれの声部が同じ方向に進む)進行も、到達先が目立つので、外声間で避けられますが、ソプラノが跳躍進行している場合は許容されます。
実際のところ、これらの進行は実際の楽曲で注意はされつつも、利用されるシーンも少なくありません。
これらが禁則とされてきた理由の一つには、中世的な音楽の雰囲気からの脱却、という視点があったように思います。
導音重複の禁止
いわゆる導音だけではなく、7thや9thも下行導音とされて重複が禁止されます。声部の自然な進行を行うと必然的に連続8度が発生するためですね。
和音の第3音の重複の禁止
メジャー、マイナーの性格を決定する音を重ねると響きが重くなるので禁止されています。
外声間での「対斜」やトライトーンの形成の禁止
1声部で増音程は禁止されていますが、別の声部であっても、対斜(半音進行)やトライトーン(増4度)を伴う進行は、特に目立つので避けられます。トライトーンは古典派までは特に、悪魔の音程などと呼ばれて不快とされていました。
実際のところは、他の声部との関係性でマスキングされるため、そこまで気にならないケースが多いです。
ロー・インターバル・リミット
低い音高になると、波長の長さや倍音の干渉により、響きが濁り始めます。そのため、各音程が綺麗に響く目安の音域が設定されています。
もちろん、使用される音に含まれる倍音の特性などの影響も受けるので目安として捉えると良いと思います。
まとめ
和声学の理論書で書かれている「禁則」にはそれぞれが禁じられた歴史的背景や響きの特性があります。
それらを多面的に理解して、柔軟な発想を保ちながら利用していくのが良さそうです。
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