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ピストン和声 26ピストン「ナポリ6の和音」

ピストン和声500ページ超をド頭からコツコツやってみようのシリーズです。
アメリカの音楽教育で最も広く使用されており、音楽理論の理由や背景についても記載された大変読みやすい理論書です。

今日は「ナポリ6の和音」についてです。

ナポリ6の和音とは?

第2音度が下方変位された3和音をナポリの6和音(Neapolitan sixth)と言います。
18世紀のナポリ学派で第1転回形の形で使われていたのでこの名前で呼ばれていますが、それ以前にも使われていた和音だそうです。19世紀になると根音位置でも使われるようになりました。

第2音度の半音階的な変位は、下行する指向性を与え、不協和音ではありませんが、不協和音的な解決感を与えます。
またナポリの6度は短音階に由来するので、短旋法でもっとも使われますが、長旋法においても使うことができます。
強くサブドミナントの性格を持つ和音なので、多くはドミナント和音へ進行します。

ナポリ6の進行

ナポリ6の和音からドミナントへの進行は、第2音度が減3度下行することが好まれます。4,5目の例のように上行するのは特殊です。
またこの進行にはdの対斜が含まれますが、この対斜に対してはあまり問題視されてませんでした。

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ナポリ6とドミナントの間に他の和音が挿入されることもありました。多くはⅡの和音の代理です。

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サブドミナントとしての性格から、ときにⅠやⅤofⅣへ進行することもあります。

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ナポリ和音のⅤ

ナポリ6の和音に、そのドミナントを先行させることもできるので、2次ドミナントのバリエーションを増やすことに役立てられます。

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ナポリの和音による転調

ナポリの6は単純な3和音であるにも関わらず、多くの解釈が可能で、転調において便利な軸和音として機能します。
次の譜例のように、遠隔調への転調をサポートします。

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次回

次回は「増6の諸和音」に関するお話です。

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