ピストン和声 5ピストン「調性と旋法性」
ピストン和声500ページ超をド頭からコツコツやってみようのシリーズです。
アメリカの音楽教育で最も広く使用されており、音楽理論の理由や背景についても記載された大変読みやすい理論書です。
今日は「調性と旋法性」についてです。
調性と旋法性
調性(tonality):主音を中心に組織化された関係性で、狭義には機能和声的調性を指します。旋法のセットだけではなく和声の役割も含む概念です。
旋法性(modality):主音との関係で特定の音群を形成している状態です。教会旋法や全音音階などの多数の旋法音階を含みます。ハ音を主音とする旋法例を示します。
音階音度の調的機能
調性は、各音と調の主音との関係を確率するプロセスと言えます。
各音はその特性から以下のように呼ばれます。
調的音度:主音(Ⅰ)、属音(Ⅴ)、下属音(Ⅳ)、上主音(Ⅱ)
調性の支柱として機能します。
上主音は属音の属音として機能したり、音の共通性より下属音として機能したりします。
旋法的音度:中音(Ⅲ)と下中音(Ⅵ)
長旋法と短旋法で違った音になるので、旋法を決める音度として機能します。
ちなみにⅦは、それ単体では和声を発生させる機能をもたず、属和音的に解釈されることが多いです。
ドミナント進行
属和音から主和音への進行(ドミナント進行)を用いることで、調性を強固に決定することができます。「起立、礼、着席」のやつがそれですね。
フレーズの最後で終始として使われる場合は、正格終止と呼ばれたりします。
和音の調性決定力
和音はそれ一つだけでは調性を決定し得ません。例えば以下の和音だけだと多数の解釈を持つことができます。
対して、2つ以上の和音が連結されると調性を暗示していくことになります。特に、ⅣーⅤとⅡーⅤの進行は共に他の調性以外では解釈できないので、調性の決定力はとても強いものです。
和音の旋法決定力
和音がその連結によって、調性を強く暗示していくのに対して、旋法を決定していく力はあまり強くありません。全章で述べたとおり、基本的には長旋法と同じ規則や手順を短旋法においても適用できるからです。
長旋法と短旋法間の揺らぎは、慣用期の音楽でしばしば聴かれるものです。下記の例では、ⅠーⅤの進行が反復されていますが、第3音の変化によって旋法が揺らいでいきます。
体系的な例としてあげられるものの1つがピカルディ3度です。
短旋法で始まって、長旋法主和音で終始するような書法です。
平行調
ハ長調とイ短調のような互いに同じ調合をもつ長調と短調を互いに、平行長調、平行短調と呼びます。これらの調もまた、和音の連結によって調性が決定されていきます。
次回
次回は「第1転回形」に関するお話です。
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