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ピストン和声 19ピストン「和声分析の諸問題」

ピストン和声500ページ超をド頭からコツコツやってみようのシリーズです。
アメリカの音楽教育で最も広く使用されており、音楽理論の理由や背景についても記載された大変読みやすい理論書です。

今日は「和声分析の諸問題」についてです。

分析における例外

特定の楽曲の和声的な関係を分析する時、いくつかの例外に遭遇し解釈が難しくなることがあります。そういった場合、視野をやや広く持ち、和声以外の要素との関係性も考えなければいけません。

いくつかの例外についての考え方を紹介します。

2次ドミナントの拡張:2重機能を持つ和音

2次ドミナントは、全体の調の中で2次トニックを含んだ小さい調領域を作ることであるので、転調と幾分似ているところがあります。そのため、2次ドミナントの原理をドミナント以外の音度にも拡張することが可能です。

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この譜例において、3つ目の和音A minorはC durでのⅥ、G durでのⅡの2つの意味合いを持つ、2重機能の和音とみなされます。転調を伴わない軸和音と考えられます。

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上の例でBb majorは先行するF majorからするとⅣofⅥとなり、後続のd minorからするとⅥofⅣの2通りの意味合いを持ち、スムーズな連結を助けています。
このような2次ドミナントによる借用和音は、先行する和声や後続する和声、特に後続する和声との関係性が明白である必要があります。

以下の譜例もいくつかの解釈を持ち得ます。
例えば、各小節で転調が起こっていると考えることもできますし、2次ドミナントでⅠ→Ⅵ→ⅤofⅢ→Ⅲ→ⅤofⅦ→Ⅶ→ⅤofⅥ→Ⅵ→Ⅴ→Ⅰとも考えられますが、拡張した2次ドミナントを用いて考えると、ⅣofⅣofⅣofⅣで4つのⅣーⅠ進行を使って規則的にトニックにたどり着いていると解釈できます。

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平行5度と8度の例外

旋律をオクターブで重複するということは、いたるところで見られます。特にオーケストラのテクスチャーにはあらゆる重複が見られ、これらは和声法というよりは楽器法の問題で、声部書法が不明確にならないかぎりは耳にとって障害になりません

また平行5度の禁則違反は、対位法的な書法から生じる場合があります。以下の例では、ソプラノの先取音とテナーの経過音で平行5度が生じていますが、どちらも和声リズム的に弱いので許容されます

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倚音などのリズム的に強いものでも、非常に短い音符の場合だと許容されることもあります。以下の譜例では、4小節の頭にかけてソプラノとバスで平行5度を形成していますがあまり問題視されません。

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19世紀の末になると、平行5度は正式な書式として受け入れ始められた側面もあります。

他にも楽曲の最後の終止でカデンツ和声が繰り返される時、ⅤーⅠの終止形において、連続8度が見られる場合もあります。

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次回

次回は「ゼクエンツ」に関するお話です。



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