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ピストン和声 27ピストン「増6の諸和音」

ピストン和声500ページ超をド頭からコツコツやってみようのシリーズです。
アメリカの音楽教育で最も広く使用されており、音楽理論の理由や背景についても記載された大変読みやすい理論書です。

今日は「増6の諸和音」についてです。

増6の諸和音とは?

短6音度と上方変位された第4音度により形成される増6度音程を含む和音群のことで、以下の4種類があります。

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イタリア、ドイツ、フランスの増6は、どれも第5音度が下方変位したⅤofⅤと考えられます。そのため進行方向はⅤへ進みます。
スイスの増6については、ドイツの6と構成音は同じだが上方変位した第2音度が使われており、ⅤofⅤというよりは、上主和音が上方変位し第5音度が下方変位したもので、Ⅰへ進行します。

イタリアの6

イタリアの6は3つの構成音しか持たず、主音が重複されます。

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ドイツの6

ドイツの6は完全5度の音程を形成するので、属和音への自然な進行から生じる平行5度が発生しますが、この進行は外声部に発生しなければ許容されます。

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フランスの6

フランスの6は、根音である第2音度が存在するため、他の増6和音よりも明らかな2次ドミナントの機能を持っています。

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スイスの6

スイスの6はドイツの6と構成音は同じですが、上方変位された第2音度が長3音度への解決を暗示する点が異なります。

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増6和音の転回形

転回形は増6度という音程そのものがなくなることもありますが、増6和音の特徴が失われることはありません。

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変則的な解決

増6和音の変則的な解決はあまり多くなく、Ⅴに先行するⅠの第2転回形や非和声音的な進行くらいです。

転調

増6和音は、異名同音の属7の和音と似ているため、転調における軸和音として用いられます。特に増6和音を使って半音上の調へ転調することは19世紀に慣用的でした。

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次回

次回は「他の半音階的和音」に関するお話です。

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