ピストン和声 29ピストン「和声法の歴史的考察」

ピストン和声500ページ超をド頭からコツコツやってみようのシリーズです。
アメリカの音楽教育で最も広く使用されており、音楽理論の理由や背景についても記載された大変読みやすい理論書です。

今日は「和声法の歴史的考察」についてです。

調律の制約

JSバッハが作曲を始めた当時の調律法においては、平均律が一般的でなく、簡単な調(シャープがフラットが2つか3つ)に音楽が限定されていました。
この調律の制約は平均律による楽曲が現れてからもしばらくの間強く、転調においても最も近い調、属調、下属調、平行調を好んでいました。
このような近親調への傾向は楽曲が比較的短かったことや、一つの旋律を繰り返す有節形式や、対位法的な形式を好んでいたことの影響もあります。

ヴァーグナーの調性の拡張

ヴァーグナー以前はベートーヴェンの「第5交響曲」におけるハ短調ーハ長調のように、他楽章作品においても調的統一性を感じ取ることができましたが、ヴァーグナーの楽劇では規模があまりに大きく、調の変化があまりに多いので「主調」という概念自体が事実上無意味になりました。

ドビュッシーの特異な調性理論

ドビュッシーはヴァーグナーの半音階法から影響を受けながらも、反古典的な態度からより独創的な作品を生み出しました。
あらゆる音度への平行進行、あらゆる種類の音階の使用(5音音階、全音音階など)が特徴として挙げられます。

調性の消失

1907年頃のシェーンベルグ、ベルグ、ヴェーベルンの作品において、調性が完全に消失することになりました。12音技法のような音高群を配置するような手法がよく知られています。

新古典主義

一方で、古典的な形式と対位法的な手法、控えめな本音階法を好んだ復古的な新古典主義も20世紀に現れました。

次回

次回は「慣用的和声法の拡張」に関するお話です。


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