悪桃太郎

「…馬鹿だな、猿、きじ、犬、なんて動物だろ、猿、きじ、犬に似たような性格のヒトを使ったわけでもない。」

「そもそも動物もヒトも信用できるわけないだろう。」

「俺1人で、やったんだよ。」

「正確にいうと、妹と俺、2人でやった…」

「やったといっても、オニを皆殺しにしたわけではないんだ。」

「う~ん、そうだな…正確に言うと、ある島を地獄か天国か、わからない場所にした。」

「俺と、その当時、5つだった妹で…。」

「…そもそも、俺は、桃から生まれたわけではないんだ、オニとヒトの間に生まれた混血だ。」

「妹もそうだ、妹の容姿は、俺よりもオニに似ていた。」

「それを利用した。」

「妹をオニの島に潜りこませた。」

「オニが、普段、水を汲みにいく、川の上流に、遠い国から取り寄せた、良い気持ちになってやがて狂人になるといわれる中毒性の高い薬を四六時中流す仕掛けを、妹にしかけさせた。」

「半月もしないうちに、狂人だけが住むオニの島が完成した。」

「…なぜだって…、そうだな… 、オニが許せないというよりも…」

「…世間の仕組み、みたいなのをぶっ壊したかった。」

「…なぜだって、……混血だからさ、だいぶ酷い目にあった…オニからも、もちろんヒトからもね…。俺も妹も、どうしても許せなかった、その世間の仕組みがね。」

「… もう、今となっては、だいぶ昔のように感じるけどね。」

「オニから、奪った金銀財宝だって?、ははは、ちがうよ、何も奪っちゃいないんだ。」

「その半月で出来上がった、急ごしらえの狂人だらけの地獄天国島に、ヒトを招待したのさ。」

「そしてヒトもオニも、狂人だらけの地獄天国島で、仲良く暮らしましたとさ…。」

「というのが、この話の本当の結末さ。」

「………そうだな、自分にケリをつけ、話にケリをつけたんだが…。」

「なぜ、ここで酒をかっくらって、辛気臭いツラをしてるのか、聞きたいんだろ?」

「オニの顔をした妹を島に残した。」

「それが気がかりだからといえば、そうなんだけれども…。」

「…それもあるが、」

「むしろ、待っているんだ、ここで酒を飲んで。」

「そして、やっと来た。」

「待っていたのさ、おまえさんを」

「やっと事の顛末をすべて話せたよ。」

「妹の亭主だろ、おまえさんは。」



「それからさあ」



「俺を殺しに来たんだろ?」



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