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歴史的瞬間に立ち会った

台風一過のバリ晴れに覆われた2023年6月3日午後の関東地方、我々は今シーズン3回目の「とあるチャレンジ」に挑むべく宇都宮線随一の優良撮影地に集っていました。いつもは日光と那須の2方向からやって来る雲に阻まれる夕方の日差しがこの日だけはくっきりと沿線に降り注ぎ、時折現れるチビ雲に肝を冷やしつつもその瞬間を待っていました。18時近くなるとそれまで和気藹々としていた撮影地には一気に緊張が訪れ、黒磯行き普通列車に向けてシャッターを切り構図と露出を最終確認。その直後、雲の中に太陽が飛び込んで一同唖然としたものの、徐々に雲が抜けて全開露出となった頃にカーブの向こうからローズピンクのEF81型電気機関車が登場。高度8.5度から照射された半面光を浴び、お召仕様の銀差しを夕陽にギラつかせながらアングルに飛び込んで来ました。鳴り響くシャッター音、機関車に牽かれた12両編成の寝台客車が目の前を颯爽と駆け抜けていき、勝利を確信しました。ついにやった、その場にいた誰もがそう思っていました。その僅か5秒後、けたたましい警笛とブレーキ音が背後から聞こえてくるまでは

え?え?え?え?え?
止めた止めた止めた!
マジで?
一同、困惑。全員が後ろを振り返ると、今しがた撮影した列車が急ブレーキをかけて減速、先頭が踏切を超えた所で完全に停止してしまいました。
そしてその横を走って線路から離れていく3人の若者の姿が目に入り、確信しました。奴らが列車を止めたと。

平和な空間の「北限」に居た我々は正しく構えて得られた純粋な激Vに沸きましたが、現場の目と鼻の先に構えていた別の集団はもう阿鼻叫喚。すぐ後ろで緊急停止したうえ、犯人が逃走していく様子も見えたため彼等への怒号も混ざっていました。歓喜の渦に包まれるはずだった現場はたちまち混沌と化し、撮影者全員で優勝の喜びを分かち合うどころではなくなってしまいました。

もうあれから全く気分が落ち着かないから久々のお気持ち表明ですよ。ホントにふざけんなあいつら。特定の鉄にこれだけの憎悪を抱いたのは初めてでした。嫌いな撮り鉄の中に「定番ショバの近くで乱入して関係ない人達に巻き添え喰らわせるやつ」が追加されたぐらいです。関東最難関ともいわれるカシオペア撮影地のカマス裏アングル(地元鉄による造語)でようやく勝利を手にした喜びをみんなで分かち合いたかったのに、感動が台無しです。周りの方々と協力して作り上げた雰囲気を完全にぶち壊して殺伐とした空気感を形成したし、何なら北側の集団は切り位置からタイフォンパッカーンで激Vも台無しにされてますよ。最悪でしょ。ショバの雰囲気も南側の我々とは天地の差がありました。

すぐに詳しい状況が我々にも知らされ、Twitterには動画も上がっていました。そしてそれは物凄い勢いで拡散、大炎上しました。そこからTwitterではお決まりの議論ですよ。でもその9割がどうでもいい。撮り鉄のイメージなんて元から無いに等しいし無いものは壊れない(迫真)、底辺なものはこれ以上悪くなりようがないんで。乱入だってぶっちゃけ当人が捕まるだけで済むなら勝手にやって自滅してくれればいいんですけど、それだけじゃないですから。編成撮影地に居た100名弱の鉄を巻き添えにしたんですよ。もっと言えばクリコガインカとかいう全く関係ないショバで撮ってた人にも流れ弾当たってるし、矢板以北の超難関エロ光撮影地で大博打に挑んでいた人達も抑止のせいで山影ドボンでBOSEになったし、夕焼けを見ながら旅情に浸っていたであろうカシオペアの乗客も突然の急停車で強制的に現実に戻されたに違いないし、多方面にとんでもない悪影響を与えましたよ。

彼等はそれと引き換えにどんな写真を撮ったんでしょうね。建築限界より線路側に入ってカメラを縦に構えていましたね。いや面縦したかったらウジカマ行けよ。あっちならカーブの外側から安全にVな面縦が撮れるだろ。触車一歩手前のはりつきしてた奴とか側面見えないだろ、何がしたくてわざわざカマスまで来たんだよ。元から編成撮る気なくて面縦する前提なら来るなよ。あなた方のお仲間にもウジカマ面縦で撮ってる奴いたんじゃないですか、カマスの直線で乱入してもあれより良い画は撮れんだろうよ。しかも立ち位置の1スパン手前ぐらいまでカメラ構えてて。焦点距離が足りないのか寄り過ぎてサイドが稼げないせいかで限界まで引っ張って結果的に列車と近づき過ぎて終了でしょうね。ちょっと動けばレールに乗っかるレベルの構え方だったし、運転士なら普通に人身事故防止のために列車止めるでしょ。乱入するにしてももっと上手いやり方ないのか。乱入には慣れてらっしゃるんでしょうけど、列車止めるレベルの事を繰り返して感覚が麻痺しちゃってるのかしら。逃げ足も速かったし、9割方止まる前提で撮ってたんでしょう。

しかしそういう事をする人を放置してしまった我々にも責任はありますよね。既に編成の立ち位置が無くなりかけていた時点で面縦を強行しようとする人が居たらしく、その時点で怪しいと思うべきだったのかもしれません(だとしてもあそこまで強引な撮り方をするとは誰も想像できない)。誰かが注意すればよかった。でも、自分達のキャパとアングルを確保しつつ綺麗に雛壇を構築するとなると関係ない位置にいる奴に構っていられないんですよね。実際に止まった後でも、追いかけて捕まえる事だって可能でした。1人で挑んでも敵わないですが、複数人(相手よりも大人数)で捕まえに行けばよかった。みんなして被害受けてるんだからそこは結託して動いても良かったですね。あるいはそれこそ110番通報しましょう。鉄同士のトラブルは当事者間で解決するのが最善ですが、難しいと感じたら国家権力に任せるしかないです。でも、そういう現場にいざ遭遇してみると出来ない。私を含め有事の対応が身に付いていない人がほとんどですからね。学校や職場で避難訓練するみたいに定番ショバの乱入対応訓練とか?いや誰がするかそんなこと。

気持ちを整理して文字や言葉にするとちょっと軽くなりました。そして改めて得られた激Vを見ると心が洗われます。やっぱDENSYAやめらんねぇ(手遅れ)。けど当分カマスは無用です(そもそも梅雨入りするし)。
それにこんな大事件に鉢合わせたのも数年後には笑い話になるし、そう考えるとお得ですよ。何かのネタを撮りに集まった人達と「あの時あんな事ありましたね~」なんてね。自分の体験を共有して撮り鉄の輪が広がっていくのを感じる事もできます。ところで例のツイートにマスコミはまだ乞食してないですか?

あとこれでよくわかったのが、単にVが撮れるだけじゃなくて、仲間たちと後腐れなくVを喜び合える事も重要なんですね。撮影の成果物のみならず、撮影という行為そのもの、それを行う場も結構重要なんです。全部ひっくるめて楽しく平和に優勝したいです。そうして我々は再びカマスの鬼門に挑み、散って行くのであった……(完)

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