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140文字小説「翳さす海」

搭乗した飛行機は、突如として降下を始めた。

墜落なのか不時着なのか、月の光る海面に、破片と共に僕はたゆたう。大破したのであろう、破片があるということは。

ふと、輝く海に影がさす。そうか今日は月食か。香るはずもない自宅のライラックの香りがした。瞼が重い。

暗闇の中、魂だけが故郷に還る。

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