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たまに氷を齧りたい時がある

 飲食店などで出て来るお冷とか、家で飲む氷を入れた麦茶とか、ひんやりとした飲み物が美味しい季節である。僕はそんな飲み物に入っている氷を、ボリボリと噛み砕く癖がある。お腹が空いていたり、飲み物が足りなかったりという訳ではない。コップの中で少し溶けて小さくなった「手ごろな」氷をぼんやり見ていると、「ガリガリ噛んだら歯が心地いいだろうなあ」なんて思ったりする。兎に角、明確な理由なんてない。

 ハムスターなどのげっ歯類は硬いものを齧って歯を整えるらしいが、僕は氷を齧って心を整えているのかもしれない。

 先日、近所のスーパーの氷菓コーナーで、カップに入ったかき氷を買った。イチゴ味しか無かったが、それこそが僕が欲していたモノだったので全く問題なかった。氷を齧る癖があるくせに(重複表現?)、一気に丸々1個は食べきれないので、半分ずつ2日かけて食べた。

 美味しかった。
 いつもは忘れているが、これを食べた時にだけ何となく小さい頃を思い出す甘さだった。最近(といってもウイルス流行の前だが)はふわふわの大きいかき氷をお洒落な店で食すのがステータスらしいが、その都会の洗練された味では到底表現出来ないノスタルジーが含まれている味だった。しかも粗い氷の粒も交じって嚙み心地もいい。

 たまには独りで昔を回顧しながら、安っぽい甘みを噛み締めるのも、悪くない、と思った。

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