最強の定義変更ー『呪術廻戦』

『呪術廻戦』はジャンルから言えばジョジョやHUNTER×HUNTERに近い、異能力バトルだ。登場人物が持つ能力は才能に由来していて、それぞれ相性がある。そうした場合、知略と組み合わせによって勝敗が決まる。

ただし、そもそも能力がずば抜けている場合はこの限りではない。五条先生は無下限の術式を持っていて、これはすなわち宇宙そのもの。攻撃は「アキレスと亀」の理屈によって五条先生に届かない。まあ、「有限は無限に分割できる」って話なら、つまり有限のヒモって永久に分割していけるよねってのがアキレスと亀の理屈だから、結局それって実態は有限のヒモなのであり、攻撃届くんじゃね?ってとこではあるのだが、そういうギミックということで。。。ともかく攻撃が通じない。

じゃあ、呪術廻戦は呪術というエネルギーを操れるのだから、打撃でなく術式による攻撃はどうか?これは、相手を自己の呪力の中に引きずりこむ領域展開という方法がある。ただこれも、五条先生のもう1つの才能、エネルギー消費が0になる六眼があり、しかも五条先生の領域展開無量空処は相手に無限の情報を強制的に送り込むものだ。自分の方は莫大なエネルギーを使って領域展開をしても、エネルギー消費0の五条先生には押し負ける。

こうした異能バトルものにおいて、全方位的に最強なキャラクターは、たとえばジョジョならば時間を操る系のスタンドだった(文字通り次元が違う)が、1つの能力である以上それには縛りもあった。HUNTER×HUNTERにおいてはたとえばキメラアントの王なんかは基礎能力と対応力が抜けてて強かったが、経験不足による初見の、「人間の悪意」に敗れた。呪術廻戦でいえば摩虚羅であった。

こうなってくると、呪力の効果そのものを無効化する系くらいしか手立てがないように思う。物語の呪いの側の雄、宿儺にしても隠し球はあるだろうけれど、切断と斬撃、あと炎で何とかなるものか…。あれか?そもそもの呪術の根源に関わる何かを握っているのか。

ちなみに、呪力がまったくない存在もまた、最強に近づいた。呪力がないこともまた、天からの1つのギフトだった。並の術師のギミックがまったく通じない力押し。

んー。

いったいに、最強とは何だろうか。
弱点がないこと、攻撃されたら防ぐ手がないこと。これは最強だろう。ただ、最強である五条先生が行き着く先は、これは虚無・退屈であってもおかしくない。誰と何をやっても楽勝ならば、逆に何もできない。
五条先生はそこで、後進を育てようとした。最強が、あえてみんなで何かをやろうとした。五条先生は単独である時が一番強いとみなが言う。彼はそれを変えよう、超えようとしている。五条先生亡き後も世はきっと続くのだ。困難だが引き継がないといけない。

自分だけが最強であればOKの時代の終わり。

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