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YouTubeに必要なのはトーク力より文章力である

YouTubeを始める前、私は不安だった。あんまり上手くいく気がしなかった。というのも、トーク力がなかったからだ。

元来、私は口数が多くない。飲み会でもそんなにしゃべらない。およそトークというもので注目を集めるのが苦手なのである。

しかし、YouTubeをやってみたら、これはまったくの間違いだと分かった。

同じ不安を抱えている人のために、その理由をお伝えしよう。

YouTubeではおしゃべりがうまい必要はない

今、YouTube動画の主流はカメラに向かっての一人しゃべりである。

一人しゃべり。となると、いわゆるおしゃべりがうまい人がYouTuberとしても有利だと思われる。たとえば、テレビの世界で言えばすべらない話で活躍しているような芸人さんのトーク、日常レベルで言えば仲間内で「あの人、話面白いよね」と言われるような人が成功しそうに思う。

しかし、これは完全な誤解だ。

一般的に「面白い」「上手い」とされるトーク技術はさほどYouTube動画では評価に結びつかない。日常的な「話の面白さ」とYouTubeでの評価はまったく別物だと考えた方がいい。

なぜ一般的な話の上手さはYouTubeで評価されないのか

では、なぜ日常的なトークの上手さはYouTubeにおいてプラスに働かないのか? これにはいくつかの要因が考えられる。

まず、YouTubeの撮影をするときは目の前にだれもいない。

普通、おしゃべりは他人を相手にして行うものだ。だが、YouTubeはカメラを前にたった一人でしゃべる。ここがまず大きく違う。

おしゃべりが上手い人は目の前の人の反応を見たり、場の雰囲気を読んだり、相槌を打ったり、いいタイミングで話に入ったり、あるいはだれかにパスを回したり、丁々発止の掛け合いをしたり、こういう技術に長けている。だが、YouTubeの場合はどれも不要だ。こういうスキルはYouTubeに持ち込めない。

だから、おしゃべりが上手くてもYouTubeではあまり評価されないということが起こる。

また、求められるものも全然違う。

日常の雑談というのはグルーミング(毛づくろい)的な役割が大きく、情報は期待されていない。お互いの仲間意識を確認するちょっとしたコミュニケーションがあればそれでいい。話に中身なんてなくていいのだ。というか、雑談において中身なんて余計なのである。

一方、YouTube動画は情報を得るために見る。仲間同士のグルーミング的な役割はそこに求められていない(一部の生放送を除く)。

このような事情があるから、通常のしゃべりの上手さは想像したほどYouTubeでプラスに働かないのである。

いい文章はそのままいい動画になる

一般的なおしゃべりの上手さはほとんど役に立たないが、想像以上に物を言うのが文章力である。

と言っても、語彙力とか高度な言い回しということではなく、ここでフィーチャーしたいのは話の構成力である。

よい文章は構成がしっかりしている。伝えたいことが明確で、流れにブレが少なく、テンポよく進む。読者の疑問を先回りしつつ論を進めるから、ストレスなく読み進むことができる。

実は、この力はYouTube動画でそのまま活きてくる。

さっきも書いたように、YouTubeの撮影をするときはカメラのレンズを前にして、自分のペースで話すことができる。考えてみて欲しい。これは文章を書くときとほとんど同じ状況だ。文字を打つか、音声を発するか、それだけの違いに過ぎない。

おまけに、YouTube動画を撮る前には事前にテーマを決めて台本も用意できるわけだから、きわめて文章執筆に近い状態なのだ。

なので、いい文章を書ける人はいいYouTube動画を作ることができるというわけだ。

おしゃべりなのに「何も言ってない」動画がある

以上のことに気づいたきっかけは、ときどきYouTubeでこんな動画に遭遇するからだ。

「この人、すっごいおしゃべりなのに何も言ってない!」

これにはびっくりした。

何気なく見ているとすごく流暢なしゃべりで、抑揚も効いていて、達者なのである。しかしふと冷静になってその話の内容を咀嚼してみると、何も言ってないことに気づく。

そういうしゃべりというのは日常生活ではプラスに評価されるのかもしれない。「話が面白いからYouTubeやればいいじゃん」と言われた可能性もある。しかし、何か中身のあることが聞きたいと思ってるYouTube視聴者にとって、それは求めているものと全然違うのだ。

たくさんしゃべってるのに、何も言ってない。

YouTubeを頻繁に見るようになって、こういう一見矛盾したような現象が浮き彫りになった。

文章力を鍛えよう!

もしあなたがYouTubeを始めようとしていて、おしゃべりの上手さに自信がなかったとする。普段から寡黙だとか大人しいとか静かだとか言われていたとする。

だが、まったく問題ない。

日常におけるしゃべりの上手さとYouTuberとしての素質は根本的に違う。安心してスタートを切って欲しい。

それから、文章が下手だという人はまずそちらを鍛えた方がいいだろう。構成がしっかり整っていて読者に伝わりやすい文章を書けるようになれば、YouTube動画のクオリティも飛躍的に高まるはずだ。


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