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置かれた場所で咲けませんでした。

「置かれた場所で咲きなさい」という言葉を聞いたことがある。たしかマザーテレサあたりだったか。

どんな環境下に置かれようとも、本人の努力次第で咲くことはできる。環境を言い訳にするのはやめて、そこで咲く努力をしよう。

おそらくそういった意味だろうなと推測した。


これはごもっともというか、そういう人が人生を前向きに捉え、ひたむきにがんばり、花を咲かせていくのだろうなあと思う。

しかしながら僕という人間は、会社という環境があわず、あえなく枯れ果て、となりの鉢(ハチ)に移動したという、置かれた場所で咲けなかった稀有なワーストフラワーなのである。まったくだ。

社長という日光を浴び、同僚という肥料を混ぜ、給料というお水をいただく。そんな最高な環境で咲けなかったら、いったいどこで咲けるというのだろう。

当時はそう思っていた。


そんなこんなでひとつめの鉢を追い出された僕は、自分に合う鉢を探す旅に出ることになった。レッツスタンドバイミー。

旅のなかでさまざまな鉢(環境)に出会った。いつも怒号が飛び交っている鉢、やさしいだらけの生ぬるい鉢、楽しそうな空気が充満している鉢。

僕が知っている以上に、たくさんの鉢があることを知った。


そうして10年間のフリーランス生活のなかで、幾度となく転職を繰り返し、ようやく自分に合う環境が見つかった。

それは、基本的には自宅にひきこもり、飽きたらカフェにいって仕事をおこない、上司はおらず、関わる人数はなるべく少なくして、そのうえ給料は不安定。今日思いついた仕事を来週リリースするような、メチャクチャな環境だった。

たとえるなら、ボコボコな形をした鉢にカラッと乾いた土が敷き詰められていて、大抵のお花は根っこをうまく伸ばすことができずに乾燥にやられて枯れる、みたいなサバイバー専用の環境だった。


だけど、この鉢が僕にはフィットしたのだ。とんでもなく居心地がよく、自由度が高く、10年越しに咲くことができた。ワーストフラワー脱却バンザイ。

自分の満開を初めて見たのだ。

就職するということは、とりあえずひとつめの鉢に入ってみるということだと思う。そこがピッタリ自分に合うこともあるし、合わないこともある。

合わないなかで合うようにがんばることも大切だけど、根本的に合わないようなら鉢ごと移動することをおすすめしたい。

ひとつめがたまたま合わなかっただけで、世の中には無数の鉢がある。僕のような「誰が入んねんこれ」っていう、屋根裏でほこりを被っているような鉢にハマることだってある。


いまいる場所で評価されないのであれば、咲く場所を変えればいいのだ。

置かれた場所で咲こうとするんじゃなくって、どこで咲こっかな〜なんて呑気に選んじゃえばいい。

ずうずうしく「わたし、ここで咲きたいです」って挙手しちゃってさ。

もし違ったら「やっぱり合わなかったです」って申し出ちゃう。


そうやって、巷で人気の鉢じゃない、わたしだけにフィットする鉢を見つけていく。

わがままに、わがままに。お気に入りの鉢を見つけて満開の笑顔で咲き誇る。

そんなわたしたちで、いつか鉢合わせましょうか。


表紙とアナザーカットたち↓

⌇ 絵 えりちゃん(妻)
✎  文 しみさん(夫)

夫婦で絵本をつくるのが夢です。

ほぼまいにち日記のようなエッセイを書いています。
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