北欧旅ですっからかん
僕と妻はいろいろと違うところがあるものの、唯一ピッタリと合う価値観がある。
「お金の使いどころ」だ。
ふたりともブランド物とかにはあまり興味がないし、タワマンなどに住みたい願望もない。たまごかけごはんに醤油と韓国ノリで悶絶しているようなふたりなもんで、コスパよく幸せに暮らしている。
しかし、そんな庶民派のわれわれが貯金の大半をベットしてもいいと思っているのが「体験」だ。
僕たち夫婦の価値観として、「人生の幸せって、自分がしたい体験をどれだけできたかに尽きるよね」みたいなのがある。
もうこれは人によって千差万別だろうし、たまたま僕たちの価値観がこれなんだけど、こと「体験」に関しては財布のヒモがだるんだるんになる。
たとえば6年前、妻が病院を退職してニートになり、僕が当時やってたBARを閉店して半ニートになったときのことだ。
ふたりともヒマだし、こんな機会あんまりないよね? どっかいこうよ!となった。
「えりちゃん、どこ行きたい?」
「北欧かな〜」
「北欧いいね!いこう!」
そんな感じでわりと5分くらいで行き先が決まった。
通常、こういうのは予算から逆算して、その金額の範囲内でいけるところを考えるものである。
しかしコイツらときたら「北欧ってなんかよさそうじゃない?」みたいなイメージだけで決めたのだ。
しかも夫(ワイ)に関しては、このときが初の海外である。初海外はタイとか韓国だろう。もしくはセブ島だろう。
北欧、調べてみたらめちゃくちゃ高いジャナイカ。
それでもやっぱり行きたいので強行突破して、フィンランド→スウェーデン→ノルウェー→デンマークの4カ国を1ヶ月間をかけてまわった。
おおよそひとりあたり50万円くらいかかって、当時の僕は貯金もしていなかったので口座がすっからかんになって泡を吹いて倒れた。
でも、そんなことがどうでもよくなるくらい、この北欧旅が素晴らしい体験だった。
もうね、すごかったのよ。景色も、街並みも、空気感も、お店も、雑貨も、デザインも。なにもかもが可愛くて、北欧が大好きになった。
朝起きてコーヒーを飲んで、コーンフレークを食べて、街に出かけて、公園で本を読んで、カフェでシナモンロールを食べる。夕方には広場で踊ってる人たちを眺めて、夜は料理をつくって食べながら、すこしお酒を飲む。
そんな、「いつかこんな暮らししたいよね」という夢の果てを、27歳で経験できてしまったのだ。
人生がまるごと変わってしまうくらいの刺激が入ってきて、北欧の人たちの楽しそうな生活を見ながら、自分のやりたいことにトコトン向き合えた。
そうして旅中で「映像やってみたい」となり、帰国して映像クリエイターとして独立したりもした。
それからの僕たちは、自分たちがしたい体験にはどんどんお金をつかうようになった。
お金って、たくさんあると安心だし、なくなると不安になる。安心の象徴みたいなもんだと思う。そんなお金という安心を捨ててでも欲しいものって、その人がほんとうに大切にしているものなんだと思う。
人によってはそれが食だったり、家だったり、車だったり、それこそブランド物だったり。僕たちはたまたま「体験」だっただけ。
あのときノリで北欧に行かなかったら、僕は老後に「北欧行ってみたかった」と後悔していたと思う。
財布はすっからかんになったけれど、好奇心はパンパンに満たされた。
先日、妻が「来年はヨーロッパに行ってみたい」と言い放った。よりによってこの円安の時期に。なんてこった。
口座に貯まった残高たちが、ぞろぞろと出発の準備を始めていた。
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表紙とアナザーカットたち↓
⌇ 絵 えりちゃん(妻)
✎ 文 しみさん(夫)
夫婦で絵本をつくるのが夢です。
日記のようなエッセイを書いています。
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