本日は閉店です。
僕たち夫婦はよく閉店する。
付き合って6年ともなれば、朝起きたときの顔を見たらわかる。まぶたのシャッターが下がりに下がっていて、そのわずかな隙間から「あとは頼んだよ」とタマシイの叫びのようなものが聞こえてくる。
まもなくして地面に落下したエンピツのように直立のまま横たわり、こちらに背を向けてピクリとも動かないお客さん泣かせのゴマフアザラシが誕生する。
そんな妻を横目で見ながら息子を抱きかかえ、リビングへと連れていく。ふだんの感謝と敬愛の念を抱きながらそっとつぶやく。ゴマフ様、今日はお休みになられるんですね、と。
そういった「今日は休みます。閉店です。」みたいな日がおたがいにある。
その日はまったくなにもせず、ふとんの上でずーっとNetflixを見ている日もあれば、散歩してメシ食って寝てを繰り返して「消費したカロリーをすぐさま補給して寝かす」という成果物ゼロの生命活動をだらだらと続ける日もある。
進撃の巨人の世界線に生きていたら「なんの成果も得られませんでした!!」と泣きながら土下座をしている毎日だろう。
というのも、僕たちは無意識のうちに働きすぎていると思うのだ。
妻であれば、平日は家事をしながらイラストを描き、あれこれ将来のことを考えながら勉強したりしている。
僕も平日はずっと仕事に没頭してしまう。
かといって土日に休めるわけではなく、むしろ幼稚園おやすみヤッホイな息子がいるため「遊ぶ日」となり、平日よりも体力を消耗することとなる。
土日は、休みではないのだ。
だから、平日に意図的にお休みの日をつくらないと、ぜんぜん休んでいないことになる。リヴァイ兵長ならまだしも、こちとらなんの訓練も受けていない平民である。耐えられるわけがない。
進撃の巨人を読んでいない人はなんのこっちゃわからないと思うが、エライこっちゃだということは伝わってほしい。
丸一日なんにもせずお休みをするというのは勇気がいる。罪悪感があるというか、人生がなにひとつ前に進んでいない感覚があって、もったいない気持ちにもなる。
わたしの人生という漫画に、空白の1ページが刻まれてしまうのではないか。いつかの読者を混乱させてしまうのではないか。ツマラナイ漫画になってしまうのではないか。
そんな不安にかられたときには、この言葉を思い出してほしい。
「わたしはリヴァイではない」
だから、いいのだ。強くあらなくていい。横たわる日があってもいい。ゴマフでもいい。立体機動装置の超硬質ブレードを使いこなせなくてもいい。
進撃の巨人を読んでいない人はなんのこっちゃわからないと思うが、エライこっちゃだということは伝わってほしい。
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表紙とアナザーカットたち↓
⌇ 絵 えりちゃん(妻)
✎ 文 しみさん(夫)
夫婦で絵本をつくるのが夢です。
日記のようなエッセイを書いています。
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