だれかに信頼されたいマン。
自分の可能性って、自分じゃ気づけなかったりする。
6年前、初めてカメラを買った。
ソニーの人気の機種で、さぞかし嬉しかったことを覚えている。
黒光りするボディを眺めながら、長いクチバシのようなレンズを取り付ける。ファインダーを除いて、カメラマンのまねごとをしてみる。
そうしてニマニマしながら映像の世界に入った僕は、毎日のように撮影にいそしんでいた。
家のなかでも映像を撮るもんだから、妻には何度も「この三脚捨てていい?」とおどされた。
最初は趣味のつもりだったけれど、だんだんとのめり込んでいって、よくばりにも「これ仕事にならないかな〜」と思いはじめた。
そんなとき、弟から声がかかった。
「にいちゃん、結婚式のオープニングムービー撮れたりする?」
まさかのオファーである。新人大抜擢。もちろん、アニ、やります!
そこからは弟のために、もっと映像を上達しようとがんばった。恥ずかしい姿は見せられないゾ。
そうして撮影当日をなんとか終えることができた。ほえ〜緊張した。
帰り道に飲んだデカビタが人生で一番うまかった。
できあがった映像を弟夫婦に渡したところ、とっても驚き、喜んでくれた。
「にいちゃんだから緊張しなかったし、素の笑顔が出てて最高だった!」
そんな言葉をもらった。
「自分には相手を緊張させないという強みがあるのかも」と思えて、とても自信になったことを憶えている。
なによりも嬉しかったのは、駆け出し映像クリエイターの僕を、弟が信じてくれたことだ。
結婚式という人生の大舞台、どうせなら悔いのないオープニング映像を撮りたいはずだろう。
そこでウェディングムービーを撮ったことのない新人に依頼したのだ。なんたる度胸。これによって僕は自信がついて、その後の映像人生がうまくいったと言っても過言ではない。
それくらいのことだった。
まだ実績もなにもないときって、自分の才能を自分で信じきれなかったり、ふとしたときに不安になったりする。
そんなとき、自分以上に自分の可能性を信じてくれる人がいると、はじめの一歩を踏み出してみようかなと思えたりする。
そうやって、まわりの人の力を借りながら、自分の可能性を、才能を、すこしずつ育てることが大事なのだなと思った。信じてもらえて、ほんとうに嬉しかったから。
それからの僕は、友人から相談を受けるたびに、その人の可能性を、その人以上に信じて言葉をかけている。
きみには才能があるから大丈夫。
息子がなにかにチャレンジするときも、小言を言いそうになるけれど、まずは信じるようにしている。
いいね、やってごらん。
まだなにもない新人は、だれかに信じてもらうことがむずかしい。だからこそ、根拠のない信頼がとんでもなく嬉しくて、力が湧いてくるのだ。
みんなで、みんなの可能性を、育て合えるといいね。
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表紙とアナザーカットたち↓
⌇ 絵 えりちゃん(妻)
✎ 文 しみさん(夫)
夫婦で絵本をつくるのが夢です。
日記のようなエッセイを書いています。
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