『牛への道』を読んだ

古本屋でぬらぬら物色していると、一冊の本が目に付いた。宮沢章夫『牛への道』という本である。タイトルが気に入った。表紙の絵は、しりあがり寿が描いている。去年だか、知り合いに誘われて、伊丹で開催された、しりあがり寿展に行ったことを思い出した。漫画を読んだことは、無い。ふざけた人間だということは個展でよく分かった。著者の宮沢章夫という人については、名前だけ、知っている。確か、ラジカルベジタリアンとか何とか言う、ややこしい名前の劇作家だ。竹中直人とか、その辺の人らと一緒に演っていた人でなかったか。作品は一切知らない。ただ、『牛への道』というタイトルが、妙に惹かれた。

エッセイ集のようである。つまらなかったら108円の無駄になる。それだけは何としてでも避けたい。自分は、まえがきを立ち読みしてみることにした。

こんなに面白いまえがきを読んだことは無い、という程に、激烈に面白いまえがきだった。この人絶対おもろいわ、と確信した自分は本を閉じて、即刻購入、即刻帰宅して即刻読破した。まえがき程では無いものの、本編も面白いエッセイ本で、久しぶりに良い本と出会えた気がする。宮沢章夫の他の著書、そして劇作品を観たいと、思った。

タイトルに惹かれて、まえがきを読んで、その本を購入して、文章を読み、そして著書の活動に興味を持つ、という流れは、完全に著者の思惑通りというか、してやられた感がある。しかし、受けて側のこちらとしても、それは純粋な心理であり、これほど気持ちの良いことは無い。

ならば自分も、と思った。自分の文章を読んで、自分に興味を持ち、舞台を見に来てくれる人がいれば、こんなに嬉しいことは無い。ということで、強烈に怠けて何もしなかった一日の出来事を、先日このnoteに綴ってみたのだが、後で自ら読み返すと、文章からも気迫が抜け落ちていて、ナルシストゆえの自虐に関しても、どこか垢抜けていないというか、ヌートリア的な芋っぽさがあり、こんな腑抜けた奴の漫才はあまり見たくないな、と我ながら思ってしまった。逆効果、とは、このことである。

何もいりません。舞台に来てください。