占い

先日、亀(自分がやっているサ店)に、占い師がやって来た。

占いますか?と言われたので、別にいいです、とクールに断った。ところが、しばらくして、やっぱりちょっと占って欲しいな、と自分は思った。しかし一度断った手前、あ、あのう、やっぱりぃ、ぼ、ぼくは、う、占って欲しいんだナァ、と言うのも気がひけるので、小声で、1988年1月7日、とだけ呟いた。すると占い師はくすっと笑って、マニュアル的な動作で紙に何やら数字や漢字を書き出して、分厚めの本をぺらぺらとめくりながら、ふうむ、と言った。

そして占い師は自分の顔を凝視しながら、あなたはとてもマイペースですね、と言った。確かに自分は自分のペースで暮らしているので、そうですかね、とだけ言った。それからも占いによる診断は続き、自分は自分の行く末を知った。

自分は、金や家には困らないらしい。この先たとえ貧乏になろうと、何とかなる、ようである。逆に、何とかなるので、決断するのが遅く、環境に流されやすい面も持っている(マイペースではないのか?)。また、去年は不作の年だったらしく、人災や天災にやられてあまり良くない一年だった、けれども、不作は今年で一旦落ち着く。そして来年は準備の時期で、環境や心境の変化もあり、何か変わり目になる一年だという。それらが実るのは、2021年、ということだった。

姓名も占って貰ったのだが、母の愛情を大いに受けて守られているので、先祖供養をきちんとした方が良い、という。胃腸と腰に気を付けた方が良いようで、しかし、長生きするらしい。ラッキーアイテムは自転車。自転車を綺麗に保ち、磨くと良い。ラッキーカラーは金色と銀色で、ここぞというときに身につけると良い。人や場所に恵まれている。現実よりもロマンを求めている。好きなことだけをして生きていけるので、好きなことをとことんすれば良い、と言われた。それで、何とかなる、らしい。

自分は、ふうん、と言った。話半分に聞いていた。占いなんぞ何のアテにもならないが、こうした話を聞いてモチベーションが上がる人もいれば絶望する人もいるのだろう。己の人生を他人に決められちゃあ困る。自分はあくまで落ち着いた様子で、まあ、自分の人生ですからねえ、とクールに言った。やっぱりマイペースですね、と占い師は笑った。拳を握ったが、どつきはしなかった。占い師が帰ると、怒りとともに、無性にそわそわしてきて、気が付くと自分は雑巾を片手に自転車を磨いていた。夢中で自転車に付着した錆を擦りながら、今度墓参りに行こう、そして金色と銀色のネクタイ、それに胃腸薬を買いに行こう、と誓って、まだ見ぬ2021年に想いを馳せた。ごしごし。

何もいりません。舞台に来てください。