ワニくんから学んだ「クリエイト」の設計
こんにちは!イラストレーターのしまだあやです。
Twitterで人気が爆発した「100日後に死ぬワニ」。
みなさんは読んでいましたか?私は毎日更新を楽しみにしていた組です。
本当にすごい人気爆発ぶり。連載100日目に近づくほど増える「ワニくん死なないで!」のコメント。
登場から100日でこんなに愛されたキャラクターは他にいない気がします。
一方で99日目から100日目に掛けて、
・書籍化
・映画化
・ポップアップショップ開始
・いきものがかりによるコラボソング
が発表されて、たくさんの人の想いが交錯。
作り手の一人として、思うところが多すぎる一件でした。
が、「私ならこうした!」とか「なんでみんなこんなこと言うの?」と批評するのは簡単ですが、なんだか生産性がない気がするので、先人であるきくちゆうきさんから学んだことを記録しておくことにします。
前提として
きくちさんの伝えたかったメッセージと、そのメッセージを伝えるためのマンガの設計が素晴らしかったなと思います。
100日というタイムリミットを知った上でマンガを読み、見守る私たち読者。
100日というタイムリミットをもちろん知らずに朗らかに生きる、主人公のワニくん。
その二方の間にあるギャップが、生と死の境界の曖昧さや儚さを生みました。
実際、コメント欄では連載当初から「私たちだってワニくんの最期を見守れるかは分からない」「明日が来ることは当たり前ではない」という言葉で溢れていました。
でも実は、きくちさん自身は100日目を迎えるまでこのマンガのメッセージについてほとんど発信していないんですよね。
*私が初めてきくちさんの想いを知ったのは、3月10日にアップされたはじめしゃちょーさんのyoutubeでした。動画の演出はあまり好きではありませんでしたが、きくちさんが語ったメッセージ、読者はちゃんと受け取れている気がする!と感動。。(もっと前に何かで想いを語られていたようならすみません)
そんな気持ちなので、「100日後に死ぬワニ」のマンガ作品としての設計は素晴らしかったと思っています。というのが、こちらの記事の前提です。念のため・・・。
今は一億総クリエイター時代なのかもしれない
読者として楽しむ一方で、連載初日から気になっていることがひとつありました。それは、
「このマンガ、どう終わらせるの・・・!?」
ということ。私もまがりなりにもマンガを描く身。
「100日後に死ぬ」と宣言した上で、こんなにかわいいワニを描いて、ファンを増やして、どう終わらせたらファンを納得させられるだろう?想像するだけでめちゃくちゃ怖いな。
そんな風に、無意識に、作り手の視点を持ち続けて更新を待っていました。
という姿勢は、私がクリエイターだからだと思っていたのですが、どうやらそうでも無いなと感じたのが今回の一件。
ワニくんの死の前日に告知された書籍化決定、そして死の直後に発表されたたくさんのコラボに対して発せられたコメントにはこんなものがありました。
これらのコメントを読んだ瞬間、私は膝を打ちました。
確かに、死の直後にいろいろな宣伝がなされたことには違和感があったんです。でもマネタイズ自体は悪いことじゃ無い。むしろ、クリエイターが無償で作品発表する必要はなくて、そこか打算的だったり、出口戦略を用意しておくのは当然のことだと思う。これは多くの人が感じているはず。
にもかかわらず、この違和感はなんだろうと思ったら、なるほど、余韻に浸る…むしろ喪に服す時間が必要だったのだなと。
そういうアイディアが、 Twitter上でどんどん湧いてくる。
やれ四十九日、初七日、それまで待てなくてもせめて翌日。
みんな気付いているんです。
告知はスピード勝負だし、鉄は熱いうちに打ちたい。
それはわかる。
でもだからこそ、それをやってしまうと商業的な匂いが強すぎる。
もちろん良いものにはお金を払いたいけど、せめて一日待ってくれ、喪に服させてくれ・・・。
いや、読者の展開設計、めちゃめちゃうまいな。
マンガのキャラクターに(日本人的な感覚だけど)四十九日というストーリーを持ってくる。そうか、ストーリーをそこまで考えて初めて、読者は納得するんだ。
それは、作者さんは想定外だった気がするよ。読者のワニくんへの感情移入の仕方が、作者にとっては大きな誤算だったというのもあるかもしれない。
みんなめちゃくちゃクリエイター視点じゃん。。。
(もしくはマーケター視点なのかも)
だから結論。
本気で発信したいものは、受け手がどう感じるかを本気で想像して、受け手が納得するストーリーを組み立てなきゃいけない。それがマンガなら、マンガ完結のその先、商業展開まで設計しなくちゃならない。
当たり前といえば当たり前だけど、すごくハードルが高いです。この当たり前を、クリエイターは当たり前にわきまえておかなければならない。クリエイターひとりの力でも大きく拡散できるSNS時代だからこそ、必要な考え方だと思います。
追記。深爪さんも語っていらっいました。
電通はさておき、どこまで作者の意図だったのかは正直気になる
電通案件という噂はご本人がはっきり否定されたし、大きい組織が関わったとかそうでないとかは特に問題ではなくて。
それはさておき、どこまでが作者きくちさんの意図するところだったのかは正直気になってしまいました。
書籍化、グッズ販売、映画化、次々と出てくる大きな話。私なら舞い上がっちゃいます。
でもそれって、この流れを商機と見たオトナが確実にいる。その人は、きくちさんの想いをちゃんと汲めていたかな。きくちさんが冷静に判断できる余裕を与えていたのかな。流れをコントロールできていたのかな。ショップは追悼というネーミングでよかったのかな。
きくちさんがただただ純粋な気持ちでこのマンガを生んだことが伝わってくるからこそ、無粋とわかりつつ、そんなことが気になっています。
もし私だったら。私はおバカさんなので「これいいよ!映画しようよ!すぐに告知打った方がいいよ!おもしろいよ!」なんて言われたら「そうかそうか!」とすぐその気になり、手のひらで踊ります。おバカなので・・・幸い、私は相談できる人が近くにいるので、たぶんその人が一度クールダウンさせてくれる気がするけど、いやぁ、舞い上がるよね。
いち作り手として、今回の流れが「クリエイターが踊らされて作品に雑音が混じっちゃった」結果だと仮定したなら、私たちはここからも学びが得られます。
それは作り手だからこそ、大事な判断をひとりでする覚悟と責任と判断力が必要だということ。作る立場って、作ることと生み出したものに集中しがちだから、冷静に客観視する意識は常に持っていたい。
LINEスタンプ発売の流れは完璧だった
LINEスタンプは本当に上手だったと思います。
LINEスタンプが飽和状態な昨今、新規参入して大きな売り上げを出すのは難しいと言われています。
でもきくちさんは、12月12日連載開始の55日後、2月5日にLINEスタンプを発売。Twitterのコメント欄は待ってましたとばかりの大フィーバー。数は分からないけど、たぶん相当売れたでしょう。LINE側も猛プッシュしていたし。
55日間育て、愛されたキャラクターですもん。新規参入と言ったって、それは売れる!うますぎ!そういう戦略かぁ!と私はぐうの音も出ない気持ちでした。マネタイズ的にはそこが出口(+書籍化できたらいいな)の想定だったのかな、と。
きくちさんは策士だ・・・私も見習おう・・・
いきものがかり水野さんは天才
100話目を読まずにあの曲が描けるなんて天才・・・
水野さんについて言いたいのはこれだけ・・・
でも、一番学んだのはやっぱり「続けるって大事」
すべての根元は「毎日続けたこと」にある。
SNS運用でよく大切と言われるのは
・毎日発信し続ける
・同じ軸で発信する
=フォローしていれば、求めている情報が確実に入ってくると感じてもらう
こんな状態を設計すること。
きくちさんは「100日後に死ぬ」とタイトルで宣言した上で、一日、二日と続けて更新。しかもマンガはかわいいし、最期がどうなるのかすごく気になる。気に入ったらフォローしちゃうよね。
SNS運用の鏡みたいな更新の仕方だと思います。(その結果スタンプが売れたわけで)
私もそれをやりたいです。でも何を発信したらいいかな。どう発信したらいいかな。それを迷い続けて今に至っていました。
でも、動かなきゃ始まらないの。
そうなんです。どう発信したらいいか、頭で考え迷うだけでした。
でも、明日がどうなるかわからないしね。
動かなくっちゃ始まらないしね。
と、悶々と考え続け・・・
今日ようやくnoteの更新を始めました!(まさかのそこに着地)
きくちさんとワニくんに背中を押してもらった気持ちです。
きくちさん、最高の作品でした!私は毎日を大切に生きます。これからも活躍を楽しみにしています!
まとめ
・続けることが結果を生む
・作品への愛と一緒に、作品を客観視し冷静に判断する力を持つ
・作品の中だけでなく、その先(売り出し方やその後の展開)までストーリーを設計する
・イラストレーターだってマネタイズ的出口戦略を考えるべき
・明日は当たり前には来ない。終わりがあることを知り、今できることを今やる
ワニくんのマンガ買う!!グッズもほしいな。渋谷はあまり得意でないけど。。
※ヘッダーのワニくんはファンアートということでなにとぞ…
追記・ワニくんストア行ってきました!
3月24日(火)昼過ぎ、渋谷ロフトで開催されている期間限定ショップに行ってきました。
欲しかった4コマステッカー・・・が無い。
欲しかったアクリルキーホルダー・・・も無い。
完売続出でした。開始からまだ4日目なのに・・・!くぅ。
お店ではみんな「かわいい!」を連発。炎上したのは一部(もしくは一瞬)の出来事で、やっぱりワニくんは愛されていたし、「100日後に死ぬワニ」という作品は大きなメッセージを残してくれたんだなと感じました。
シールとリフレクションキーホルダーを買いました!わーい!大事に使います!
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