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維持・管理・修繕

着物好きなら、誰にでもお気に入りの着物があるのではないかと思う。

私にも心に残る着物が二枚ある。

一枚は通っていた工房の展覧会が東京であった時に見た作品で、木蓮のすくいの着物だった。
それを見た瞬間、心奪われた。
ずっと見ていたい。そこを離れがたい。まるで時が止まったように。
そんな作品を自分も作れるようになりたいと心底願った。

そして、もう一枚は天神さんで買った着物。

この着物は染物ではなくて織柄。

細やかに織られている花と鳥。

胴裏は紅絹。


着物

織柄ということもあって、若干地厚で金糸も使ってあるので、まだ一度も纏って出かけたことはないけれど、時折虫干ししたりアイロンをかけたり。

引っ越してずっと押し入れに入っていたこともあって、経年のシミが出ていた。


八掛のシミ

この着物をどうしようか。
潰してコートにする方が使用頻度は高いかな?と思案したり。
今はYouTubeとかで、着物から洋服をつくるやり方を紹介くださっている方もいらっしゃるし・・・。

でも・・・でも、でも、でも。
この着物にハサミを入れる勇気がない。
潰してしまったら、二度と着物に戻れない・・・・。
切嵌という方法を使って再形成することもできるかもしれないけれど、この姿を、今のままの姿を失くしたくないという思いの方が強くある。

断捨離提唱者のやましたひでこさんによる「ものを持つということは、その後の手入れや、捨てたり手放したり、そのものの最後まで考えなくてはいけない」というお話をきいて、本当にそうだなと思いました。

維持管理出来ないものは、速やかに処分すべきだと。

手入れできないものを、ただ持っているだけならば、それは「欲」だけで終わってしまう。

真摯に向き合ってこそ、そのものは生きる。

結局、私はこの着物を潰さず、着物として存在して欲しいと願った。
この際洗い張りに出して仕立て直そうと決心しました。

ものに限りあれど、手を入れ、大切に時を溜めれば、また新しい誰かに出会い、君はずっと生きるだろう。


着物



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