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豪雨被災地の恵み。オール熊本べんとう

これまで普通にできていたことができなくて、グリーフってこういうことなのかとかみしめる毎日です。パソコンを開いたところで仕事がまったく手につかず。趣味です!と言い切れるほど楽しんでいた毎日のお弁当すら、楽しむ気力が起きなくて。母がいなくなったことでふるさとの半分以上が失われた気持ちになって。その上、気候変動がもたらす人知をはるかに超えた災害に、近い将来ふるさとにもどりたいという選択肢が正しいことかすら、わからなくなりました。

2ヶ月半というお別れの猶予をいただいていた私がそうなのだから。なんの前触れもなく、豪雨によって突然、大切な人やふるさとの風景、紡いできた日常を奪われてしまった方々の喪失の苦しみは、いかばかりかと思います。

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坂本町で濁流にもまれて泥まみれになった漬物樽や、大きなしょうけは、季節や森や球磨川の恵みを慈しみ、暮らしてきた球磨川流域の日常そのもの。

(以前、お邪魔したときの所感はこちら→ 「自然との共生、復興」

建物や道や橋は、時間をかけてつくりなおすことができるけど、ひとが紡ぐ日常は、そう簡単に取り戻すことができないものだと思います。それでもこの地でもう一度、くらしを取り戻したいと思う方々に、できることってなんだろう。グリーフに寄り添うことってできないかしら。

そんなことをぼんやりと頭の片隅に置いたまま、昨日は久しぶりにお弁当の写真を撮りました。取り出したのは、人吉球磨の森のヒノキと桜の樹皮を使ってつくる、「一勝地曲げのわっぱ」。しばらく連絡の取れなかった作り手のそそぎさんがご無事だったと聞いて、どれだけホッとしたでしょう。

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中に詰めるのは、源流域から下流域まで、「球磨川流域の暮らし」が育む「不知火海」の恵み、芦北町田浦の太刀魚です。いつものように油はケチケチですし、フライにしながらまたもやボーッと考えごとをしていたせいで、片面はやや焦げ状態ですが。香ばしく食べられる範囲だから気にしなーい笑

杖立温泉の被害に思いを馳せながら、小国のナスを素揚げにしました。牛深の被災地を思いながら、牛深の雑節でお出汁をとって揚げ浸しに。

製塩ができる小さな浜を守ることがひいてはサンゴやウミガメの暮らす海を守ることにつながる、という哲学で製塩をつづけてきた松本さんの「小さな海」のせんごう塩で漬けた完熟梅の梅干しは、果肉も果皮もふっくらと。心なしか今年はフルーティに仕上がりました。つまむのもやさしくやさしく、ということで、「ヤマチク」の菜箸を使いました。こちらの菜箸は持ち手の部分が三角で指がうまくフィットしてつまみやすく、しかも両方使えるのでお弁当の盛り箸としても重宝しています。竹害の解消を目指し、竹の箸をつくりつづける同社も実は、工場が浸水被害にあっていたそうです。

卵焼きや太刀魚フライを置くのには、日奈久竹細工の竹ザルを。
四角豆の胡麻和えのゴマは、「小代焼ふもと窯」のすり鉢で。実は荒尾も、豪雨被災地のひとつであるはずだけど、ニュースでは耳にしない地域のひとつでした。

他にももっとあるはずだけど。

できることってなんだろう。と考えながら
たくさんのグリーフに寄り添う気持ちでつくった
オール熊本べんとうです。

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2度の震度7の地震にも揺るぐことのなかった
熊本県産食材を育む産地や生産地への感謝を胸に
オール熊本べんとうをはじめた
2016年の熊本地震の当時の気持ちを思い出す。

ゆたかな熊本に。
くらしを紡いでくれる人々に。

今日も、ありがとう。

【20200827】
・天草大江の令和2年の新米ごはん
・天草の松本さんが生前つくった「小さな海」のせんごう塩でつけた、梅干し
・芦北町田浦の太刀魚をフライに
・天草河浦の青のりと、天草五和のカンナちゃんのたまごで作ったたまごやき
・阿蘇小国のナスと、荒尾のシメジ、天草のシシトウ、熊本県産ニンジンを、天草牛深の雑節の出汁で揚げ浸しに
・天草の四角豆を、熊本県産のゴマと津奈木の「ばらん家」の黒糖と、宇城「松合食品」の丸大豆醤油でごま和えに
・天草の赤タマネギのピクルス
・天草のそうめんカボチャと、天草のシイラのオイル漬けと、実家の大葉で作ったシャキシャキサラダ
・天草高浜の新レンコンを甘辛きんぴらに
・熊本県産プチトマト
・球磨村「そそぎ工房」の一勝地曲げのわっぱ
・南関「ヤマチク」の竹の菜箸
・荒尾「小代焼ふもと窯」のすり鉢
・八代「桑原竹細工店」の竹のザル

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