【掌編小説】幸せを与える
両手で耳を塞いで、瞼を閉じて。「とっぴんぱらりのぷう」って。魔法の言葉を唱えると、瞼の裏の黒いモヤモヤがすーっと晴れて、フニフニさんがやってくる。それが私の覚えている、パパが教えてくれたことのすべて。
『呼んだ?』
目を開けると、フニフニさんは私の散らかった勉強机の上で器用に逆立ちをしてこちらを見ていた。頭に無表情なウサギの着ぐるみを被り、短いスカートを履いたフニフニさん。本物のウサギみたいに飛び跳ねて、音もなくベッドに着地すると、私の隣にふわりと座った。
「また私の知らない