「放送禁止」1 考察①

 2003年より、フジテレビで不定期に放送された「放送禁止」シリーズ。
 その第一回について、考察を綴ります。
 随分昔の作品ですから、何一つ考慮せずネタバレします。
 20年近く前の作品ですが、DVDで販売されていますから、よろしければ御覧ください。
 YouTubeにフル動画が上がっているようですが、公式チャンネルなのか判らない上、音声が一部途切れているようなので、そちらはあまりおすすめしません。

 このドラマシリーズは、いわゆるフェイクドキュメンタリーです。
 ドキュメンタリー調のミステリードラマという認識でいいと思います。
 映像から読み取れる物語が、見る人によって、全く違ってくるタイプの作品です。
 よって、どう解釈してもいいんだと思いますが、制作側が設定した「真実」というのは一応あるらしい。
 それに近づけるかどうかは分かりませんけど、思ったことを綴ります。


■あらすじ

 あらすじを、ざっくり説明します。
 廃ビルに肝試しに忍び込んだ若者4人のうち、まずは1人、次いで2人が失踪します。残った1人が、テレビ取材に応じたのが、事の発端です。
 女性リポーター、ディレクター、カメラマンの3人で構成された取材チームは、この失踪事件について調べ始めます。
 廃ビルの管理人やオーナーに話を聞き、ビルの内部の撮影、失踪した1人の家族に取材、ビルの店子だった出版社の人間に取材。
 そのうちに、残りの1人も姿を消し、取材チームも、出版社の人間も、オーナーも姿を消してしまいます。
 真相がはっきりとしないまま、ビデオテープだけが残されます。
 管理人は健在です。

 以降は、登場人物の名前も作品内の描写も説明なしで綴ります。


■一見こんな物語に見えるけれど

 全体を、サラッと表層だけ読むと、「怪しい廃ビルに関わった人間が、UFOに連れ去られた。藤堂は宇宙人から超能力を授かり、宇宙人の手先になった」という話になるんですけど、まあ、流石にそんなわきゃない。
 なので、もう少し細部を見ます。

 ビデオテープに映ってる中に怪しい奴がいると考えるのが、まずは定跡でしょう。
 例えば、実際の話。
 昔は、火事が起ったとき、テレビカメラマンは取材のために現場にすっ飛んで行き、必ず、火事の映像だけでなく、さりげなく野次馬を全員撮影しました。
 野次馬の中に放火犯が紛れていることがあるからです。
 怪しいと思ったものは、多少危ない目に遭っても映像に残そうとする。
 報道畑のテレビカメラマンはそういう人たちです。
 最近は町中に防犯カメラが設置されたおかげか、素人がスマホで撮った現場映像を借りてニュースに流すことも増えたようですけど。

 というわけで、この作品中で、まず最も怪しく見えるのが、ビルの管理人の財前です。
 藤堂も同時に怪しくは見えますが、こちらはわりとわかりやすく怪しいので、回を改めて触れる予定。
 今回は、まず、財前について綴ります。


■財前の何が怪しいか

 財前に「撮るな」と鋭く言われてるにもかかわらず、カメラマンは、隙あらば財前を映像に残そうと試みます。
 で、映像を細かく見ると、以下のようなことが分かります。

・ビルの買手が付かないことを心配する発言をしている。
 ただの管理人なのに、オーナーの代理人気取りか。振る舞いも偉そう。
・福田の時計と同じものを、腕に嵌めている。
・ビルの3Fに残された文字が「Z」に読める。
・取材にいく先々で映り込んでいる。
・藤堂の別荘で取材チームが襲われた直前、乱入してきてる。

 財前が、一連の失踪事件の中心人物の一人であることは、間違いないと思います。

 ここで結論を出そうとすると、「財前が黒幕」という話になってしまいそうです。
 財前が黒幕。藤堂は財前に催眠をかけられ利用されている。
 財前と藤堂により、肝試しの大学生と取材チームが拉致された。
 これでもいろんな事の説明はつくようにも思えます。
 でもこれ、どこかしっくりきません。なんとなく違和感がある。
 間違っているというより、「足りないピースがある」という感じです。

 財前が関与してる。それは間違いなかろうと思います。
 でも、黒幕ではない気が、私はしてるんです。


■なぜ財前が黒幕だと思えないのか

 財前は、取材チームが取材に行く先々に、映り込んでいます。
 ここに、違和感があるんです。
「こいつが怪しいんじゃね?」という違和感ではありません。
 いや、最初はそうなんですが、それだけじゃなくて。
「黒幕にしてはちょっと変」という違和感です。
 つまり。

「使い走りや汚れ仕事に、ここまで駆けずり回るやつが、黒幕?」
 という違和感なんです。

「取材陣が変なことをしないか見張る必要がある」
 これは、わかります。
 でもそれなら、別の人にやらせりゃよくないですか?
 というのはですね。
 取材スタートの時点で、既に、3人居なくなってます。
 そこから何やかんやで合計8人の人間が居なくなるんです。
 8人ですよ。
 ビルにまつわる噂が、何らかの事実に基づくものであるのなら、実際はもっと多い人数でしょう。
 目的と手段が何であれ、これはもう、財前と藤堂の二人きりで完結する規模の犯罪だとは思えません。
 だとすれば、他にも関係者は、きっといるはずなのです。
 ならば、財前が黒幕なら、見張りなんか、もっと下っ端の人間にやらせればいいでしょ。

 つまり、逆に言えば、あれだけ財前が張り付いているということは、「そうしろと、真の黒幕から指示された」と考える方が自然だと思うんです。


■今回のまとめ

 というわけで、財前に関する私の考えは、
「財前は、実行犯ではあるが、黒幕ではない」
 です。
 ついでに言うと、藤堂も、やはり黒幕ではないと思います。
 藤堂については、回を改めて綴ります。


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