「放送禁止」1 考察④

 「放送禁止」第1回の考察を、綴ります。

 今回は、あのビルの中で、何が起っていたのか、そして、この物語の真相についての考察を綴ってまとめます。


■ビルの3階に残っていたもの

 廃ビルの3階に元々どんな会社や団体が契約していたのか、今では設備はあらかた撤去されているので想像するしかないんですが、わずかに残っている痕跡が、「壁に描かれたZと読めるマーク」と「仏画らしき絵」です。

 パッと見て「新興宗教団体が入ってたのかもな」という印象になります。
 Zが何かのシンボルマークで。仏画は本尊の御尊影。
 でもそれなら、壁の落書きを消して行けとは言わんが、せめて本尊の姿絵くらいはちゃんと持って行けよ。
 何捨てて行っとんじゃ、罰当たりどもが。

 まあ要は、宗教団体というのも、何かの隠れ蓑なんでしょうね。
 教義や本尊すら、手段でしかないと考える連中がやることだから、こういう手がかりがゴロゴロ残る。

 シンボルがどうして「Z」なのかは分かりません。
 表向きは、傀儡である乙骨の「乙」なのか、実際は、汚れ仕事も厭わぬ幹部の財前の「Z」なのか。
 そんなところでしょうけど。
 私なんかは、オーナーが黒幕だと思ってるクチですから、「90度回転させたらNになるよな」とも思ってしまう。
 まあ、この辺は、何でもいいです。


■「宗教団体」が行っていたこと

 どうやら「Zの文字を見た相手に、力を及ぼせる」みたいなことを、信じ込まされるのかも知れないですね。
 だから、Zの文字を見て書いて、誰かにZの文字を描いてみせる、という『修行』を、極限までやらされる。
 その結果、藤堂は「人間の頭だって割れる」と言い出しています。
 こんな荒唐無稽なことを本気で信じているのであれば、そこには、洗脳のプロセスが組み込まれていたということでしょう。
 催眠では多分ありません。

※催眠には、「全く信じていないことを、疑いなく信じ込ませる」力や、「全く習得していない技術を、いきなり習得させる」力はありません。
 精神科医の和田先生は、とても有名な先生ですし、あのインタビューの内容はおそらく別の実際の幽霊騒動に対する見解だと思いますが、ドラマ内に組み込まれたことによって、ミスリードの役割を果たしたんだと思います。

 佐伯はまだ洗脳の途中なんでしょう。
「うまく出来ないのはお前の心構えがなっとらんからだ」とか言われて、強い恐怖を伴う抑圧状態に置かれて、ずっとやらされてるんだと思います。
 が、あの様子だと、最終段階の1~2歩手前って感じでしょうか。
 変質してしまうのも時間の問題でしょうね。
 遠藤は、まあまあしぶとそうな気がする。
 のらりくらり頑張って欲しいところですが。

 ところで。
 3階でいろいろやってた団体を、仮に宗教団体だとしましょう。
 この団体は、新しく団体に入れようとする人間に対し、かなりきつめの洗脳を施すのだと思います。
 で、想像なんですけど、この団体は、その洗脳の最終段階に、必ずあることをさせるんじゃないかと思うんですよ。

 そのあることとは。
「自分が最も大切に思っているものを、自分の手で捨てさせる」
 です。

 これからは、いちばん大切なものは、この団体である。
 ならば、これまでの大切だったものは、捨てるか団体に捧げるか出来て当然である。
 本当に団体に心から尽くせるのなら、やってみせろ。
 こういう理屈。
 実際こういう手順を踏ませることが、どれだけ洗脳を強化できるのかは、私は知りませんけどね。この作中のこの団体は、そうしたんじゃないかと。

 だから、福田は時計を差し出し、前田は看護学校のテキストをZの文字で上書きし、藤堂は出版会社を手放し、取材チームは機材とテープを置き去りにした。
 大橋あたりは「友達がだいじです!」とかぶっこいて、友達を団体に売る羽目になったんじゃないのかな。


■洗脳した人間をどうしたか

 出版社がオカルト記事を出し、それに興味を持つ人を集め。
 3階の宗教エリアで洗脳を施し。
 弁護士が委任状を書かせて必要最低限の手続きをし。
 貿易会社が海外に連れ去る。

 失踪事件のいっちょ上がり。
 初めから終わりまで、ひとつのビルで完結してしまいます。
 実際、取材チームが失踪するまでは「事件性なし」と判断されてたようですから、これまでも、かなりの数の人間が、この手順で消されたんじゃないですかね。
 それが「あのビルには、入ったら出られない部屋がある」という都市伝説を生んだんじゃないでしょうか。


■この物語の真相

 オカルト記事の効果が薄くなってからは、強引に引きずり込むという荒っぽい手法がとられるようになったのでしょう。
 最初がどうでも、洗脳さえ完了すれば問題ない、と。
 何らかの事情でビルの中の拠点が引き払われてからも、「肝試し」などと称して、後腐れのなさそうな人間を引きずり込んでは、従来の手順で、洗脳し、どこかに連れ去っていた。

 しかし、失踪届を家族が出すケースが増えてしまい、ビルとの関連性が明るみに出る恐れが生じたため、テレビで印象操作できないか試そうとした。
 だから、ディレクターの津田を通じて、この件を「オカルト事件」として取材させようとした。
 大橋にも「幽霊が出るビル」という「ダミーの噂」を最初に言わせた。

 しかし、取材チームは「あのビルでは人が消える」という「本当の噂」を探り当ててしまい、「肝試しで消えた」ではなく「失踪した」という切り口で取材しようとした。
 津田の経過報告により、テレビでの印象操作が不可能だと悟った団体側は、関係者を地下に潜らせ、口封じをかねて取材チームを拉致した。

 警察が本腰を上げたことを知り、黒幕であるオーナーも地下に潜った。
 門番の財前だけを、ビルの入り口に残して。

 以上が、私の考える、第1回のストーリーの真相です。

 何のために手間暇かけてそんなことを? と思うでしょうか。
 そこまで現実離れした話でもないでしょう。
 人を拉致する。
 洗脳する。
 疑われたら「そんなことはしてない」とあらゆる方法で主張する。
 それでも疑われたら、関係したものが極力表に出ないようにする。
 こんなことを実際に、何十年もかけて、国内外の実働部隊にやらせていた国が、日本海の向こうにあるじゃないですか。


■フジテレビもこの頃はまだ気骨があった

 この第1回が、フジテレビで制作されたのは2003年。
 宣伝も番組紹介もなく、深夜枠で、唐突に放送された作品です。
 あまりの事前情報のなさに、本当のドキュメンタリーだと誤認識した
視聴者も多く、放映直後はなかなか大きな反響を呼んだようです。

 この「放送禁止」のシリーズは、現在ドラマが7作まで、劇場版は3作出ています。
 DVDで販売されていますから、興味を持たれた方はぜひどうぞ。

よろしければ、サポートお願いします。