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逢魔が辻・裏話

 先日、「逢魔が辻」という題の自作品を載せました。
 載せた後何度か微調整はしましたが、ほぼ書き下ろしに近い、中編程度の作品です。会話文が多くて少し読みづらいですが、よろしければどうぞ。

 今回はこれについて少し、つらつらと。
 私に腕があれば、こんな余計なことは書かずに済むのですが、とりあえず後書きのようなものです。


 大まかな筋を、まず最初に決めました。笑える落語の形にするつもりは最初からなくて、どちらかというと重たい感じの作品にしたかった。
 登場人物についても、悪党をコミカルに描くつもりは全くなく、蟻地獄のような碌でなしの色男にしたかったんですが、こういうときに人生経験というのがものを言うのでしょう、まあ実に難しい。
 私の乏しい力ではあれが限界。実際の碌でなしには近づきたくないので、想像で作るしかありませんので。

 ところで、本作品は、堅気が出てくるのは序盤だけで、中盤以降はちょっと普通じゃない人ばかり出てきます。堅気はちょい役ばっかり。
 そして、中盤からは、地の文を必要最小限に減らして、ほぼ会話パートだけで構成してあります。これは、ちょっと完成を急いだからそうなってしまっという事情は確かにあるんですが、世界観を限定しないように敢えてそうしてあるという側面もあります。

「勧善懲悪もの」でも、「単なる勧善懲悪だけじゃないもの」でも、いけるような形にしてみたかったんです。実際そうなってるかどうかは別の問題でしょうけど。
 例えば傷の男が「あの女が憎くてたまらなかった!」と叫ぶシーンがあるんですが、本当に救いようのない悪人として演るのか、内心ひどく悔いている感じで演るのか、もっと違う別の感じで演るのか、演じ方次第でどうにでも成立できるようなつくりにしてみたかった。
 仇討を売った物売の男にしてもそうで、わかりやすい正義の味方にするなり、別のタイプの渡世人にするなり、お好きにどうぞという感じです。
 手下も出てきますが、これを金で適当に雇った爺にでもしようと思えばできるし、そのときは「小頭」とか呼ばさなければ済みます。

 だから最後のパートは、無ければ無いでも全然構わないです。刑場で男が死罪になったところで切ってしまってもいい。最後は、物売がいわゆる「いい人」ではない、そして、傷の男が本当に死んだかどうか解らない、そんなような形にしてありまして、私はああいう世界が好きですけど。
 勧善懲悪ものにしたかったら、もう少し物売に喋らせないとカタルシスにかけるかもしれませんから、後々ちょっといじるかも知れません。

 それにしても。
 悪党にろくでもないことを喋らせるときに、筆が倍速で走る癖を、本当にどうにかしたい。
 普段表に出せない要素である分、溜まって煮詰められているからなのかもしれませんが、自分の人間性が信じられなくなりそうです。

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