今夜のおかず

日曜の昼下がり。近所の子供たちの笑い声が部屋の外から聞こえてくる。僕はベットから起き上がると冷蔵庫を開けた。
別に何も無いのは自分でわかっていても何故か開けてしまうのは何故なんだろう。そう考えながら僕はスーパーに夕飯のおかずを買いに家を出た。
スーパーにつくと
「あれ、陽介くん」と声をかけられた。 
「あっ、え、マキさん!?」
「あはは、驚きすぎでしょ笑」
彼女はマキさん。大学の先輩で入学当初のガイダンスで知り合った。マキさんはスレンダーで、優しくて、僕は最初に会った時から好意をもっていた。
「この食材は〜肉じゃがかな?自炊するの?」
「え、ええ一応毎週日曜くらいは自炊しようと思ってて。」
「へー!すごいね!あたしは自炊全然してないやちゃんと料理しないとなー」
「ねね、今日陽介くんの家行っていい?その肉じゃが食べてみたいんだけど。」
「え?」
 
気づいたら僕は家で肉じゃがを作っていた。先輩はリビングで「包丁さばきうまいねー」「楽しみだなー」と喋っている。
「はい、どうぞ」と、肉じゃがとご飯を先輩に出す。
先輩はほんとに美味そうに僕の肉じゃがを口に放り込んでいる。それを見て僕は堪えられなくなった。だって、好きな先輩が自分の家にあがっているんだぞ!そもそも好きでもないのに男の家になんかいるか?!2人きりだぞ?
「先輩!」
「ん?」
「好きです!付き合ってください!」
「ん、じゃあさ体の相性試そうか。私体の相性大事だと思うからさ。」
「は?」
トントン拍子に進む関係に違和感を覚える僕。既に先輩は上の服を脱いでいる。そのスタイルのいい体に決して小さくない、むしろ美しい胸、童貞の卒業を覚悟し緊張を増していく僕の息子。
「ふぅ、じゃあ先輩そろそろ…」
「うん。///そろそろ…」
「目、覚めようか」


既に窓の外は真っ暗で、部屋には誰もいなかった。肉じゃがもないし、あるのは虚無感と湿ったパンツだけだった。
「……」
僕はパンツを洗濯カゴに入れたあと、ティッシュを数枚抜き取り夢の中の先輩を反芻した。

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