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アニッシュ・カプーア展(2023-11-25)

アニッシュ・カプーアとは

 Anish Kapoor。1954年(現在69歳)生まれのインド・ムンバイ出身の英国を代表する現代彫刻家。ロンドン在住。1980年代初頭のニュー・ビリティッシュ・スカルプチュアの作家の一人。1990年にはヴェネツィア・ビエンナーレでイギリス代表。1991年ターナー賞受賞。
 美術手帖によると、「シンプルなかたちと独自の素材の選択によって、視覚認識や空間概念に問題を提起し、虚と実、物質と非物質のような両極的な概念が共存する作品を制作。両犠牲の作家。」と記載されている。
代表的な作品は「Sky mirror」。ノッティンガム、ニューヨーク、ケンジントン・ガーデンズなどにパブリックアートとして設置。

この展示でのカプーアの意図

◼️展示概要
「アニッシュ・カプーア_奪われた自由への眼差し_監視社会の未来」
会期:2023年11月23日~2024年1月28日
展示場所:GYRE GALLERY

どうやらカプーアは、遠隔からスタッフに指示して作品を制作したとのこと。企画された方によると、この展示に対して具体的なメッセージはカプーアからは示されていない。そのため、企画者の解釈では、「戦争が起こったりグローバリゼーションが進んだり、世界がどんどん変わっている状況のなかで、カプーアは人間存在そのものに焦点を当てて作品をつくりたいと考えている。本展を皆さんの主体的な考えに基づいて見ていただきたい。」と記載されていた。
また、作品テーマとして、目に見えない監視体制で、監視される側が芸術表現をどのように捉えていくかを取り上げている。そして、「監視社会」は現代の「監獄の誕生」。監視下で統制されている人々が自らに内在しているカオティックな情動があって、本作品を見ることで、自らのカオス(不条理)と対峙せざるを得なくなり、その存在に気付かされるという展示の狙いがあるとのこと。

カプーアのこれまでと今回の展示を見比べて感じた点

 過去の代表作は直径5mのステンレスででき、空を映し出す「Sky mirror」である。この作品は、現実世界に抽象的な装置を入れることで、現実と非現実の間を表現することを狙いとしている。カプーア自身もこれまでの作品から、現実と非現実、内と外、見えるものと見えないものといった、相反するものの間とその境界をテーマとした作品を制作している。
今回の展示では、監視されている人が自らに内在しているカオティックな情動に気付かせることが狙いとのこと。展示空間は平面と立体作品からなり、平面のドローイングには代表作の「Sky mirror」のモチーフが描かれていたり、立体作品は「Shooting Into the Corner」を想起させるような赤と黒を基調にしたアクリル絵の具などからなる塊が、コンセプトに沿った形状で配置されていた。
実際に作品と対峙して、監視社会のイメージを明確に捉えることは難しかったが、過去の作品イメージを手がかりに、赤と黒がを基調に3Dと2Dでの作品を比較し、カオスの表現への作者の強い意図が感じられた。

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