第35回

熟女が犯しがちな勘違い

レベル49ともなれば、もはや若い子に憧れることもないし、若かった昔に戻れないことも悟っている。若さにしがみつかなくなった熟女が目指すのは、あくまで熟女としての「いい女」クラスだ。

元がたいしたことない故、10代の頃から美容方面はかなり気にするタイプだった。これまでも、数ミリのシミやできものを消したいとクリニックに通い、ムダ毛の1本もないようサロンに通ってきた。当然ながら「彼氏募集中」の間は、よりスキのない外見を目指し、金と時間を投じまくった。
(そこまでやってその程度かよ、というツッコミは受けつけない。やらないよりは、これでもずっとマシになっているはずだ)

だがレベル50カウントダウンに入ったあたりから、少しずつ外見に対する美意識が薄くなり始めた。
もはや整形でもしない限り、自分の顔はこの程度だ。今後ますます中年度は増してくるだろうし、必要以上にリフトアップしても、年齢との剥離によって妖怪化するばかりだ。
ならば、今の年齢に準じたベストを目指す程度でいいのではないか。あたしは女優でもなければ、女を売りにする水商売もとうに引退している。

ただの物書きだって美しいほうがメディア受けするかもしれないが、レベル49の女にそこまでの美貌は求められていない。
実年齢より見た目年齢を若い時点で留めておく努力は、もはや自己満足でしかない。そう思ったら、なんだか馬鹿らしくなってしまった。

+ + +

熟女が実年齢より若く見られるのは、外見と中身の総合評価だ。外見がいくら若く見えても、態度や言動からオバサン臭がすれば、周囲は「若作りしたオバサン」としか思わない。

自身の年齢が上がるにつれ、仕事でもプライベートでも若い世代と接する機会が増えてくる。自分は若い子のノリについていってるつもりでも、実際は若い子が上の世代に合わせてくれているケースが多い。

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