「幸せそうに見えること」と「幸せなこと」はイコールじゃない。
主観でばかりモノを考えるのはよくないといわれる。客観的な視点を持つことで、冷静に物事を捉えられる。それは大人としての流儀である。
商売柄、恋愛相談や婚活の悩みを聞く機会は多い。そこで多々見受けられるのが「自分と他者との関係(状態)を客観視できない」問題。
自身の思い込みに意識が傾きがちな人は、無用な悩みを増やしてしまう。
他者との距離感を掴めず、相手の気持ちに寄り添えないから、「私を好きなら○○してくれるはず」などと勝手な持論を展開し、あげく「○○しないとか、もう私のこと好きじゃないのかな」と拗ねる。
視野狭窄。それじゃ子供と変わらない。
「幸せになりたい」と願うから、現実が不幸になる
たとえば婚活中の人。
「あなたはなぜ結婚したいの?」と尋ねると、大半の人が「幸せになりたいから」と答える。
「じゃあ、今は幸せじゃないの?」と意地悪な質問をすると、たいていの人は言葉を詰まらせてしまう。
「幸せ」とは、ある状態を指す。
満足感だったり、快感だったり、爽快さだったり。幸福感を得られる状態はたくさんあるだろう。
「幸せになりたい」と願う人は、今の幸せを感じる心をないがしろにしている。
未来や他人など「今の自分か得られていないもの」に照準を合わせ「○○がある(叶っている)状態こそが幸せ」と定義してしまうから、「○○がない(叶っていない)今は幸せじゃない」ことになってしまう。
○○には「恋人」や「痩せた自分」や「お金」など、現実の自分にとって足りないものが当てはめられる。婚活中の人ならば、そこに入るのはもちろん「伴侶」だ。
願いが叶っていないからといって、その人が不幸なわけじゃない。現実を直視してみれば、それなりに幸せな生活を送っていることに気づくはずだ。
結婚したくて婚活をするのは、生活面および精神面に比較的余裕があるからだ。己の生活が困窮するほど稼げなかったり、仕事や人間関係で問題を抱えている最中だったら、結婚を考える余裕などないだろう。
つまり、婚活をしている時点で幸せなのだ。そこを「当たり前」だと思ってしまうような人は、結婚したところで幸せにはなれないだろう。
喉元過ぎれば熱さを忘れる。愛する伴侶との結婚生活も「当たり前」となり、今度は「家を買ったら」「子供が生まれたら」とないものねだりがエスカレートする。
幸せを感じるのは望みが叶った一瞬だけで、あとは永遠に「もっともっと」と渇望し続ける。そんな人生は、何も持っていない人よりずっと不幸だ。
「幸せそうに見られたい」と彼女は言った
もう十年以上昔のことだが、とある取材をさせてもらった女子(SNSで募集して挙手してくれた子)が上の言葉をぽろっとつぶやいた。
「どうして?」と尋ねたら「かわいそうだと思われるより、幸せそうに見えたほうがいいじゃないですか」と答えた。
アラサーで婚活中だったその子は、会社の後輩から「まだ結婚できないなんて、かわいそう」と陰で言われていたらしい。お節介なお局女史が、わざわざ後輩の噂話をリークしてくれたそうだ。
悪意しか感じられない後輩やお局の言葉なんて無視すればいいし、イヤな環境なら辞めたっていい。
だけど「絶対に見返してやる」女子特有のマウンティング気質により、彼女は職場を辞めることなく水面下で婚活をしていた。
「幸せそうに見られたい」と思いながら生きていると、選ぶものすべてが「他人から素敵だと思われる」「羨ましがられる」基準になってしまう。
自分の好みより、他人からの評価。心の声を無視したままの婚活は、相手をスペックだけで選ぼうとするせいか、なかなか進展しない。
そりゃそうだ。本来の好みを最優先にしなければ、何度デートしたって「好き」な気持ちは沸いてこない。
もしもそのまま「みんなから羨ましがられる夫」と結婚したならば、果たして結婚生活は幸せかどうか、想像つかない。
「誰かに認められるより、自分が認める人を選んだほうがいいよ」
私の言葉は彼女に届いただろうか。その後どうなったのかはわからない。
SNSで承認欲求を満たしても、現実は1ミリも変わらない
彼女みたいな女性はたくさんいる。
「愛され」ベクトルで生きている女子なんかも、似たようなものだ。
カッコよくてエリートな彼氏がいる私。
ハイブランドのバッグが似合う私。
タワマンに住んでいる私。
セレブっぽい生活をしている私。
「幸せそうでいいな」と羨ましがられる私。
インスタの仮想世界では「映える」かもしれない。
だけどリアルの「私」は、本当に幸せ?
「羨望されたい」見栄のために、莫大な借金を抱えても平気?
「セレブイケメンの妻」でいるためなら、夫にモラハラされても我慢できる?
違うよね。
そんなの幸せじゃないよね。
愛されてもいないよね。
「幸せそうなあなた」は、本当に幸せなのかな。
自分の心まで騙したら、いつか虚しくなるよ。
誰かに認められるのではなく、自分で自分を認める。
自分にだけは、嘘をつかないようにする。
「ない」ではなく「ある」を増やしていく。
そうすれば、心が感じる「幸せな状態」を、少しずつ味わえるようになると思うよ。
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