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第二章 食べて生きるための進化とは?-004


狩猟時代のエネルギー供給と人間らしさ

狩猟時代の栄養価は高かったと、化石学者は述べています。*1
このことは、移動先に食べ物さえあれば生き延びることを
可能にしたのです。

人類は動物界の中で中位の存在であり、
食べたり食べられたりする存在でした。
このため、他の草食動物のように生き残るための集団化は、
必須のことだったのです。

狩猟して移動する中、男女の分業化が進みました。*2
女性たちは集落を守り、水汲みや食物採取をしつつ、
共同で子育てを始めました。

この食物採取からのエネルギー供給は、
人間が生きるために必要なエネルギーの半分を、
賄っていると言われています。
(人類の男と女は、この頃から食べて生きるための持ちつ持たれつの関係性を作り出したようです。)*3

一方、男たちは徒党を組んで狩猟をし、それを集落まで持ち帰りました。(今を生きる霊長類の一部は、食物の分配をすることはあります。しかし、いまだ人間のように食べ物を運搬をして持ち帰り、分配するすることをしません)

しかも、人類は食べるための分業制をひき、分かち合いの社会を作り、
そこに集団内で一緒に食べるという共食の文化を生み出していきました。*4

集団内の人間同士のこころの形成は、
この共食から生まれてきたのではないか?と、
霊長類学者は指摘しています。*5

同じものを食べ、同じ腸の動きを生じることによって、
そこから生まれるこころは同調し、連帯意識を育むようになったのではないか、と語りを入れています。(しかしこれは未だ定かではないそうです)

忙しい現代社会の中においても、家族と一緒に食事をする、
学校で給食を取る、仕事仲間と食事を共にする。
これらの行動からいかに私たちが、
集団内での共食文化を大切にしているか?を、窺(うかが)い知れます。

*1 M. Sahlins. Stone Age Economics. Routledge. (1972)「石器時代の経済学」マーシャル・サーリンズ著、山内ひさし訳 法政大学出版局(2012年)

*2H. Kaplan., et al. A Theory of human life history evolution: Diet, intelligence, and longevity. Evolutionary Anthropology 9(2000):156-185; C. Panter-Brick. Sexual division of labor: Energetic and evolutionary scenarios. American Journal of Human Biology .(2002)14(5):627-640.

*3M. Tomasello. Why We Cooperate. MIT Press. (2009) 「ヒトはなぜ協力するのか」マイケル トマセロ著、橋彌和秀訳 勁草書房、(2013年)

*4 K. R. Hill,,et al. Co-residence patterns in hunter-gatherer societies show unique human social structure. Science. (2011)331(6022): 1286-89; C. L. Apicella.,et al. Social Networks and Cooperation in Hunter-Gatherers. Nature (2012)481:497-501.

*5 F. d. Waal. The Age of Empathy: Nature's Lessons for a Kinder Society by Frans de Waal. Broadway Books ( 2010).「共感の時代へ:動物行動学が教えてくれること」 フランス・ド・ヴァール著、柴田裕之訳、紀伊国屋書店、(2010年)

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