第二章 食べて生きるための進化とは?-010
プライス博士が見出した事実
1900年台初頭、アメリカ人歯科医のプライス博士は、
当時の白人社会に蔓延していたあごで噛めない現象の原因である、
虫歯と不正咬合の問題について憂いを感じていました。
この原因を調査研究するために、
信じられないような膨大な統計調査を行いました。
なんと五大陸に及ぶ14の先住民族と、
西洋社会に生じている現象を比較検討することによって、
目の前の不健康問題についての根本的な原因を明るみにしたのです。
結論から申せば、白人社会からの交易による食べ物(精製炭水化物など)を、現地の女性たちが食べると
「上あごの狭い子供」が生まれるという事実を見いだしたのです。
いわゆる八重歯や叢生と言う不正咬合の問題です。
しかも、これらの子どもたちからは、
多数の虫歯が発生することも発見しました。*1
さらに、交易による食物と地産地消による食べ物を比較調査すると、
交易からの栄養価は地産地消から得られる7~8割減だったことが、
明るみとなりました。
栄養失調によって、虫歯や不正咬合が発生することを報告したのです。
これらの子どもを生んだ同じ女性に、
再び地産地消による栄養価の高い食べ物を提供すると、
健康的な子供が生まれると言う報告もなされました。
この後、他の研究者からも健康と環境について、いくつもの報告がなされています。*2,3
*1 W. A. Price, Nutrition and Physical Degeneration: A Comparison of Primitive and Modern Diets and Their Effects. Redlands, CA: Paul B. Hoeber, Inc.(1939)「食生活と身体の退化ー先住民の伝統色と近代食その身体への驚くべき影響(増補改訂版)」ウェストン・A. プライス著、片山恒雄訳、恒志会、(2010年)
*2 Dan Buettner. The Blue Zones: Nine Lessons for Living Longer from the People Who’ve Lived the Longest(Washington D C: National Geographic Society. (2008)
*3 G. V. Mann,, et al..Cardiovascular disease in African Pygmies: A survey the health status, serum lipids and diet of Pygmies in Congo. Journal of Chronic Didsease (1962)15: 341-71; G. V. Mann,, et al.. The health and nutritional status of Alaskan Eskimos. American Journal of Clinical Nutrition (1962)11:31-76; A.S.Truswell. and J. D. K. Hansen. Medical research among the !Kung. In Kalahari Hunter-Gatherers: Studies of the !Kung San and Their Neighbor, ed. R. B. Lee and I. DeVore. Cambridge* Harvard University Press.(1976)167-94; A. S. Truswell. Diet and nutrition of hunter-gatherers. In Health and Disease in Tribal Societies. New York: Elsevier, (1977).213-21; N. Howell, Demography of the Dobe ! Kung. Academic Press (1979).; N. Kronman and A. Green. Epidemiological
studies in the Upernavik distrct, Greenland. Acta Medica Scandinavica (1980).208: 401-6; H. C. Trowell and D. P. Burkitt. Western Diseases: Their Emergence and Prevention. Cambridge, MA: Harvard University Press(1981); A. Rode and R. J. Shephard. Physiological consequences of acculturation: a 20-year study of fitness in an Inuit community. European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiology (1994).69: 516-24.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?