残骸
こんなふうな晴れた日のために
生まれてきたのだと
こんなに美しいもののためなら
命も惜しまないというほどの…
今日は一番、碧色の燃える日
伏した目で見る空に
自分の影を送る
己の姿を焼きつけて
明日の空に届けるために
サティがジムノペディを歌い
ゆったりと目をつぶる
飽くまで個人的な心中に
希望を反芻する
少々歪んだ地平線で均衡を保つ
サティがジムノペディを歌い
ゆったりと目をつぶる
アザミの綿毛が飛んできて
部屋の床を転げている
こうも幸福な日は
地球のどこに去るのだろう
海の向う?
山の向う?
延々と回り続けるこの惑星の
何処に証が残っているのか
奇妙な焦燥…
砂浜に打ち上げられた流木さえも
愛おしくなるような…
嗚呼、それは時?
愛?
忘却?
妖精の羽音に目を覚まし
たんぽぽの綿毛に微笑みかけて
サティがジムノペディを歌い
ゆったりと腰掛ける
(2020第58回有島青少年文芸集掲載)
2024/01/08note再掲
見出し:ラクガキ