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145.読書日記/お腹が空く読書「P分署捜査班 集結」

「週刊文春7月18日号/ミステリーレビュー」で紹介されていた「P分署捜査班 鼓動」(マウリツィオ・デ・ジョバンニ/創元推理文庫)がシリーズモノということで、最初から読んでみようと、シリーズ一作目の「P分署捜査班 集結」を手に取った。

著者のマウリツィオ・デ・ジョバンニさんはナポリ出身ということでイタリアが舞台だ。イタリア文学にはほぼ触れていなくて(ウンベルト・エーコくらい?)、名前がなかなか覚えられなく、男か女かもこんがらがって、北欧ミステリが流行った時と同じ困惑があったw
けれども、シリーズ化を見越した小説の一作目なので、一通り登場人物が出揃った後に、それぞれの自己紹介があったりして、その点ではリーダーフレンドリーではなかろうか。

P分署の副署長ジョルジョ・ピザネッリが登場するたびにピザ食べたいな〜と思って、副巡査部長のオッタヴィア・カラブレーゼではインサーラータ・カプレーゼが頭に浮かぶ(だけど「カラブレーゼ」は「カプレーゼ」じゃなくて唐辛子の効いた料理のことみたい)。登場人物の名前がみんな料理名みたいに思えて美味しそうw
オッタヴィアの旦那が家で用意している「キノコのクリームソース・フェットチーネと仔牛のソテー・レモンソースがけに赤ワイン」とか羨ましすぎるし、バツイチ独身のロヤコーノ警部行きつけのトラットリアの看板料理「ラグー・リガトーニ」もどんなのか食べてみたい。本を読んでいるとお腹が空く。次の通院までに体重を落としたい身には辛すぎる。お菓子の描写が少ないのはありがたい。

「イタメシ」というのが流行ったのは、私の若い頃だったと思う。そんなにお金もないけれど、ちょっとおめかしして食事に行きたいデートにちょうどよかった気がする。マナーも気軽でよかったし、若い人にも敷居が低かった。また食べに行ってみたいな〜などと思いながら読むことになったw

「カリオストロの城」を見ると、ミートボールスパゲッティが食べたくなりますね。


冒頭の、謝辞の一番に「とても真似できない理想像」としてエド・マクベインが挙げられているように、これはイタリア版「87分署シリーズ」を目指して書かれたものだ。ハヤカワポケミスで数冊ウチにあって、学生の頃読んだ記憶。「警官嫌い」とか「10プラス1」とか。次々に事件が起こり、とにかく目まぐるしく、刑事さんたちが忙しそうで、心から安心して睡眠をとる日があるのだろうか?と思ったものだ。
日本では87分署を原作に、渡辺謙さんが主役の火サス「わが町」というドラマが放映されていた。奥さん役が有森也実さんで、耳が不自由で手話を使う役で(当時、手話がドラマに出てくるのは珍しかったように思う)、大きな存在感を放っていた。

で、P分署だ。捜査班が押収された麻薬を着服し横流しするという大スキャンダルで閉鎖も視野に入っているピッツォファルコーネ署の欠員補充のために各署から鼻つまみ者が送られてくる。主人公のシチリア出身の警部ロヤコーノも手柄を立てたのにマフィアとの繋がりを疑われて左遷されたのだ。そして訳ありのメンバーが「集結」してピッツォファルコーネ=P分署となる。

事件は女性資産家殺しと少女監禁で、大した事件ではないのだが、P分署始動の背景にページが割かれていたので、それでかなと思ったが、池上冬樹さんの「ミステリーレビュー」を読み返してみるとシリーズ四作目の「鼓動」について「87分署に比べて事件は小粒だが…」とあるので、そういう作風なのかも。えげつなく残虐なのや快楽殺人モノなどばかり読んでいたので(「羊たちの沈黙」以後の傾向ですよね)かえって新鮮に思える。ぼちぼちと続編を読んでみるつもり。

一時期は自炊でもよくイタリア料理を作っていたが(パスタやラタトイユなど簡単なもの)今はほとんど作ってない。オリーブオイルがずいぶん値上がりしてしまったのもあるし、スパイスカレーにハマっていたからもある。久しぶりにイタリアンが食べたくなる読書であった。

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