スタディ通信 22年12月号
年の瀬ですね。みなさん、いかがお過ごしですか。
私の方は、今年は10月からいろいろ走り続けていましたので、年末年始は食って寝て本を読むだらだらした生活をすると決めています。脳も休まさなきゃいかんですからね。
スタディのふりかえり
さて、12月の『諸相』スタディでは「回心(Conversion)」と呼ばれる現象を扱いました。前回まで、この世界には2種類の気質を持った人間がいることを説明しました。それは「一度生まれ・二度生まれ」という概念でしたね。
ここは予想外に好評で「自分が二度生まれ型の世界観を持っていることがはっきりわかった」とか「回心へ至るプロセスへの理解の解像度が上がった」などのフィードバックをいただきました。私としては「ここは退屈なんじゃないだろうか」と思っていたので、嬉しい誤算でした。
人は、自分はどんな世界観や気質を持っているのかを理解することを願うものなのでしょう。そうすると、自分というものが輪郭を帯びてきて、言葉で説明し考えることができます。ここがごちゃっとしてると、けっこうな苦痛を感じるものだと思っています。
さて、「分裂した自己」をかかえる二度生まれ型の葛藤は、パウロの有名な自己言及で学びました。
「私は自分の望む善は行なわず、望まない悪を行っている」というパウロの分裂し葛藤を抱えた自己への言及は、新約聖書のローマ書を魅力あるものにしています。
このテキストが約2000年の間、長く読みつがれてきたのも、このような絶望的な叫びに多くの人が共感と理解を感じたからでしょう。
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そのような分裂した自己が統合され、安らぎと幸福を感じるようになる宗教的なプロセスをジェイムズは「回心」と呼んでいます。
もちろん、宗教的なもの以外にもこのような変容の経験は起こるとジェイムズは指摘しますし、「逆回心」といった興味深い現象にも『諸相』は言及します。ここはまた、テキストを読んで考えてみてください。
そんな回心のプロセスを映像化している映画として「レ・ミゼラブル」(2013)を参照しました。この映画で描かれるバルジャンの回心や、ジャヴェールの逆回心などは、『諸相』を読み解く上でとても役に立ちますので、また観てください。
さて、今年を振り返ってみると、まずは4月に約1年半かけて『諸相』のスタディ一巡目が終わりました。そこで感じたことは、以前記事に書きましたね。
そして6月からは、新たに「より12ステップの実践に役に立つやり方」にスタディのやり方を変えました。自分としては大きな変化でしたが、おおむね成功のようで、参加者も平均30名から平均50名となり、前向きなフィードバックもいくつかいただきました。ほっとしましたね、マジで。
6月からの半年間は、スタディの内容を改良していく半年でした。では来年はなにを課題にするかというと、『諸相』スタディに集まってくれている人たちの成長や実践にアプローチしていくようなことをしていこうと思っています。
具体的には、少人数での読書会を11月からいくつか発足させています。私は今のタスクで手一杯ですので、そこで育った人たちが、さらにいろんなネットワークを作っていってくれることを願っていますよ。
AAに来て3年が経ちますが、3年前の自分からすると、3年後にこういったことをやっているとは全く想像できませんでした。また、自分のやりたかったこととも、今やっていることは違っています。
そこは自分を超えた力が導く領域なのでしょう。まぁ、とりあえず、来年もやれるだけのことはやっていこうと思っていますので、みなさん、ひとつ、どうかよろしく。
とにかく、新しい人が育たないとあかんなぁ、と思っとります。
リンク
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『諸相』スタディのシラバスやスケジュールなどは、下記公式サイトから。