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【峰倉かずや作品感想文】初めて呑んだWAは黒く底が深かった【1錠目】

今回の感想文は『WILD ADAPTER』(ワイルドアダプター)です。
峰倉かずやによる日本の漫画作品になります。
謎のドラッグ「W.A」をめぐる久保田誠人と時任稔、二人の現実と絆を描いた作品。物語は1990年代の横浜を舞台に、「W.A」を狙う出雲会、東条組をはじめとするヤクザも絡みながら進行してゆくリリシムズ・ハード・ボイルドです。

(原作の絵を見せたくて峰倉かずや先生のTwitterから探してきました)


はじめに


僕はアニメやゲームなどの作品を舞台化する2.5次元作品が大好きです。

その繋がりで「最遊記」という作品のタイトルだけ知っていました。僕の好きな2.5次元俳優が多数出演しているため見てみたいと思っています。

そんな中、友達が峰倉かずや作品の漫画を持っていると聞き、是非貸して欲しいと頼み念願の原作漫画を手にしました。

しかし、それは「最遊記」ではなかったのです。

友達は熱意を込めて「お前は最遊記の前にこれを読め!絶対好きだ」「お前は久保田誠を好きになる!」と闇取引き現場にいる売人のような顔でブツ(漫画が入った袋)を僕に握らせました。

その友達は以前に同じような顔をして僕にBLCDを握らせた前科があり、中身が何かを察しました。
きっと…男同士がキスしたりするんだろう…と。

僕には腐女子の姉がいて、女性向けにも抵抗がさほどなかったためよく女性から布教を受けます。それが特別嫌でもないので僕は新たな出会いにドキドキしながらブツを家に持ち帰りました。
これが僕と「WA」の馴れ初めです。

峰倉かずやのセンスに惚れる


漫画は物語と絵の組み合わせで出来た作品なので、まず作画の感想からにしようと思います。
僕が最初に驚いたのは全ページ、コマの外側を黒く塗りつぶされていることです。
これは過去を意味する「回想シーン」を表現するための黒ですよね?
本当のところは知りませんが僕はそう解釈しています。

物語は1995年の東京から始まります。
漫画の初出が2000年なので確かに過去話ではありますが、そのために回想の演出で黒く塗りつぶすセンスに脱帽です。

全編回想ならばわざわざ黒く塗らなくていいはずなのに、あえて黒く塗りつぶす手間のある演出。
「これはもう終わったことだ。終わった話を見せてるんだ」というメッセージを受け取りました。

つまり先はないんです。
作者の中ですでに主人公達の運命は完結していて、僕ら読者がどんな感情を抱いてキャラを愛し応援しようとその言葉は彼らに届かない。
ただ見ることだけが許されています。
初手からさらりと読者を突き放しリアルタイムで参加させてくれない。
だけど、それが逆にいいと思いました。

久保田と時任の間に読者のリアルタイムの愛や応援を乗せないことが、彼らだけが世界にいるような、彼らの邪魔をするものがいないように見えるのです。

コマの外を塗りつぶす黒は回想シーンを表すと当時に、閉鎖的な感覚になり彼らだけに気持ちを堕とせるので「WA」という作品に非常に合っていて素晴らしいなと思いました。


次に人物などの作画ですが、これがまた作品に合っていてセンス抜群です。
白と黒のバランスが良く、無駄な演出がないシンプルな描写がスタイリッシュでどこを見てもカッコいい。

特に僕が感じたのは峰倉かずやという作家は「男」を描く天才ということ。
色気のある男に特化した漫画家だと思います。

まだ僕は峰倉かずや作品を「WA」しか知らないので他作品を見たら印象が変わるかもしれませんが、とにかく色気のある描写がうまいんです。

それは決して18禁のシーンが上手というわけではないです。
むしろ18禁シーンはさほど上手ではない気がします。

ではどこに色気を感じるか。
それは煙草を吸う、椅子に座る、銃を握る、そんな一見エロスとは関係ない部分です。

計算されたものか作家の才能なのかわかりませんが、とても艶があるのです。

特にそれは久保田誠に多く見られます。
人物の描き方に癖があり少しでもバランスが崩れたら上手く見えない作画をしていますが、どうして男をここまでかっこよく色気を出して描けるのでしょうか?

僕は骨格や筋肉に男の色気を表現できる秘密があると思っています。
因みに女性キャラも同じような描き方をしていますが、こちらはさほど魅力を感じませんでした。
某走り屋漫画の車の描写は最高なのに人物が下手みたいに、峰倉作品も男は最高なのに女はさほど…みたいに僕は感じます。

(誤解がないように加えますが、そんなところも好きです)

峰倉先生の女性キャラの作画は、まるで男性の肉体に女性のアイコンを付けただけのようです。だから余計に「男に特化した作家」と強く印象に残るのかもしれません。

出来ることなら僕の大好きな2.5次元舞台化して欲しいです!
今、2.5次元俳優豊富なので再現度は高いと思います。


「WA」はBL作品だと実感したところ


僕は女性向けゲームやアニメをそこそこ履修しています。
上には上がいるのでその界隈でヲタ活をしてる男性の中ではまだ新参です。ですが、ブロマンス程度のものならばいくつか見て来ました。

その中で僕が好きな作品は「バナナフィッシュ」と「エスケーエイト」です。
この2つはブロマンスです。

では同じように惹かれ合う男を描いた「WA」は何かと考えた時、僕はこれを「BL」と位置付けました。

実際、もともと最初に掲載した雑誌が「Chara」というBL雑誌だったらしいので正解だと思います。

掲載雑誌以外にもBLだなと感じる部分は物語の中にありました。
それを一番強く感じたシーンを長くなりますが語ります。


【ここから下はネタバレになる内容と個人的解釈を多く含むため有料にして伏せています。WA履修済みの方かネタバレOKな方のみご覧ください】


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