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僕が風俗で働き続ける理由

「うちの店の子なら、どうやったかな…」

その時のひと言が、いまだ頭から離れません。


それは約10年前、ちょうど僕が今の

風俗という世界に飛び込んだ頃の話。


35歳 2児の父

いままでのサラリーマン生活から一念発起して

自分のため家族のため大金を稼ごうと選んだのが

風俗の世界。


世間体は決して良くない環境で

ダークな雰囲気も覚悟してましたが

いざ入ってみると

まともな経営かつ良い人ばかり。

働く女性たちも

一見すると華やかな印象ですが

至って普通の女性たちで

むしろ睡眠時間を削り

嫌な思いを感じる事が多い仕事内容にも関わらず

仕事に励む姿はカッコよくすら思いました。


そして、皆が「稼ごう」という

目的のためだけに集っており

そのシンプルさも、居心地よく思えてた矢先

その事件の報道がありました。


大阪二児餓死事件


3歳と1歳の子供ふたりが

母親の育児放棄によって

50日マンションの一室に

閉じ込められて餓死した事件


当時

その子供たちの痛ましい様子と

それに反して放棄していた母親は

華やかで楽しそうな生活をSNSで

配信していた事で話題となった事件ですが

その母親が働いていたのが「風俗」であり

子供たちが亡くなった現場も

その「風俗」のお店が借りている寮でした。


最初、その話を耳にした時

自分にも子供が二人いるので

その子供たちの様子を聞くだけで

胸が締め付けられましたし

虐待する母親に嫌悪感すら覚えました。


だから、あまり自分から

そのニュースの詳細を知ろうとはしていませんでしたが

一緒に働く先輩が、何処かからか

母親が働いていた店が何処か、源氏名は何か

といった情報を教えてくれるのですが

その会話の最後に、ボソッと

「うちの店の子なら、どうやったかな…」

と言ったのです。


その先輩の何気ない、ひと言に

僕は衝撃を受けました。


僕が働くお店にもシングルマザーの女性はいます。


保育園に預けていた子供の

お迎えの時間が間に合わず

僕が女性の代わりにお迎えに行った事もありました。


また別の女性は

親から虐待を受けて逃げてきていました。


胸を痛めながらも

何気なく聞き流していた凄惨な事件は

遠い国の話や別世界の話ではなく

目の前の女性たちであり

自分がカッコいいと憧れていた女性たちの

姿でもあり、僕の目の前に

確かにある現実だったのです。


自分が働くお店の女性たちも

ひょっとしたら似たような境遇かもしれない。

ひょっとしたら今にも

助けが必要な状況かもしれない。

そう考えた時

僕が業界に入ってから教え込まれた

「お金が稼ぐことが全て」である

風俗業界の絶対的価値観が揺らぎ始めたのです。


もちろん、どの女性もお金の事情があって

この業界に入ってくる訳ですし

お金を稼ぐ事は生きていくにも必要で

決して悪いことではありません。


そして働く女性には、

この業界で働くからには

しっかりと大金を手にして欲しい

とは思っています。


でも例え、一般職では

想像すらできない程の大金を

短期間で稼げたとしても

そしてそれを全部散財していたとしても

幸せに繋がらなければ

無意味であると思います。


「生きるために稼ぐ よりも

 幸せになるために稼ぐ 」


そう意識することで

同じ稼ぐという行為でも

目的が違ってきますし

闇雲に稼ごうとするのではなく

自分にとっての稼ぎ方や働き方

を考えるようになってきます。


そして、そう考え

より働く女性たちと接するようになって分かったのが

風俗で働く女性は

誰かのため(誰かに負担をかけたくなくて)

働いている方が多く、自分のためであり

自分の幸せを優先している方が少ない。

しかも、そもそもの自己肯定感が低く

自分が幸せになって良いとすら思っていない。

という方まで多くいました。


それからというもの

そういった女性たちに

誰しも幸せになる権利があることを伝え

この風俗の仕事を通して

自分の幸せを具体的に考えてもらったり

その幸せを実現するための作戦を

一緒に考えるようになったのです。


その結果

この10年間で実に多くの女性が

お金の事情や当初の目標を達成し

風俗業界を卒業するところまで

見届ける事ができました。


そして、その際に

「このお店で働けて良かった。

 (僕と)出会えて良かった。」と

自分には勿体ない言葉を何度となく

頂けるようになったのです。


先輩との事件にまつわる会話から始まった

僕の考えや取り組みが

虐待という負の連鎖を断ち切る結果に

なっているかの確信はありません。


ただ、風俗という現場からも

女性自身や女性の周りを明るくする

陽の連鎖を起こせれば

負の連鎖さえも防げるのではと信じて

今日も業務に励む次第です。

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