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「志高く」バックナンバー⑭~「beforeとafterの間」~

こんにちは、志高塾です。

火曜日に引き続き、本日も「beforeとafterの間」に言及した記事を再録します。
※前回の内容はこちらです。

ちなみに、今回の文章はホットドッグ形式(?)で展開されています。上記の話はパンとケチャップ、「トレードオフ」に関する話題が、真ん中の具です。

Vol.523「beforeとafterの間」(2021年12月14日/HP掲載)

元サッカー日本代表の本田圭佑が「名ストライカーが言っていた。ゴールはケチャップみたいなもの。出ないときは出ないけど、出るときはドバドバ出る」とコメントしたことがある。スランプを脱出したら、ゴールをどんどん決められるということの例えである。なるほど、そんな感じである。何の話か。大学受験版の「十人十色」のことである。アイデアがどんどん湧き出してくるのだ。それについては後程。

例のごとくテーマとはまったく関係の無い話から。ちなみに、こういうことを差し込むときは、それだけで1つの文章にはならないが、何だがすごくそのことについて言及したいときである。日本のワクチン接種率がすごい勢いで伸びたことが異口同音に礼賛される中、国産ワクチンの開発が遅れていることに関する否定的な意見がほとんど聞かれないことが不思議でならない。ファイザーやモデルナから一年経っても実用化には至っていないのだ。たかが一年と感じられるかもしれないが、彼らが一年でそこまでこぎつけたので、既に倍の期間が過ぎていることになる。開発スピードが半分にも満たないのだ。ノーベル賞を取った日本人の科学者が「日本は基礎研究にお金をかけなくなった」ということを近年よく嘆いているが、応用研究もアカンやん、というのが率直な感想である。

今年ノーベル物理学賞を受賞した真鍋叔郎氏がなぜアメリカに研究の場に移したのかを知りたくてウィキペディアで調べてみると、「真鍋 淑郞(まなべ しゅくろう)は、日系アメリカ人一世の地球科学者」と一文目にあった。両親が日本人国籍なので、考えてみれば当たり前なのだが、「日系」と「一世」という言葉が結びついたのを初めて見た気さえする。私の中のスタンダードは、「日系ブラジル人二世(もしくは三世)」である。しょうもないことはさておき、次のようなことも述べられていた。

1997年には日本へ帰国し、同国の宇宙開発事業団と海洋科学技術センターによる共同プロジェクト「地球フロンティア研究システム」の地球温暖化予測研究領域の領域長に就任した。
しかし、2001年に辞任・再び渡米し、プリンストン大学研究員に転じた。当時のマスメディア報道によれば、地球シミュレータを利用しての他研究機関との共同研究が、所管元である日本の科学技術庁の官僚から難色を示されたことが辞任のきっかけとされ、日本の縦割り行政が学術研究を阻害していることへの不満による「頭脳流出」であると報じられた。

2021年10月にノーベル物理学賞を受賞した際には、「後に大きな影響を与える大発見は、研究を始めた時にはその貢献の重要さに誰も気付かないものだと思う。」と述べた。また、若い研究者に対して、「今はコンピュータに振り回されている人が多い。」「流行っている研究に走らずに。自分の本当の好奇心ですね。」と語った。「最近の日本の研究は、以前に比べて好奇心を持って研究することが少なくなっているように思います。日本では、科学者が政策を決める人に助言する方法、つまり、両者の間のチャンネルが互いに通じ合っていないと思います。米国はもっとうまくいっていると思う」とも述べた。
なお眞鍋が気候変動の研究を行った原動力は好奇心であった。研究を始めた当初は、のちに気候変動が重要な問題になることも、自身が大きな成果を生むことも想像していなかったという。

こんなコピペで字数稼ぎのようなことをする気は毛頭無かったのだが、読み進めて行くと、「ふむふむ」と共感する部分が多かったので紹介してみた次第である。

国産ワクチンの開発が遅れている原因は、開発資金の不足や厚生労働省の承認までに要する期間の長さの問題など様々あるのだろうが、私の単純な疑問は「これが次に生かされるのか?」ということである。素人考えに過ぎないが、世界がボーダレスになっていること、科学技術の発展(武漢の研究所からの流出説があるように、そのようなことが起こる可能性は高まる方向にあること)などの要因によって感染症のパンデミックが起こる周期は短くなり、その拡散スピードは速くなることが予想される。そうなると、世界的なワクチン不足が深刻化して、自国で開発できなければより入手困難になるのではないだろうか。

ここまでワクチンのことを中心に述べてきたが、それは一具体例として挙げただけで、別にそのことについてとやかく言いたいわけではない。トレードオフの関係に無いものをそのように扱うことに違和感を覚えているのだ。ちなみに、トレードオフとは「両立し得ない関係性。一方を取ると他方を失うということ」という意味であり、上で述べたように「トレードオフの関係にある(ない)」などの用い方をする。説明が必要ならわざわざ使うなよ、と突っ込まれてしまいそうだが、中にはそれによってぴたっと表現できるものもある。メインディッシュを「肉にしますか、それとも魚にしますか」と尋ねられたとき、それらはトレードオフの関係にある。しかし、ワクチン開発とワクチン接種率はその関係に無い。東京オリンピックで銀メダルを獲得したプロゴルファーの稲見萌寧(いなみもね)が今シーズンの賞金女王に輝き、その後のインタビューを受けた父親が「片付けができない」というようなコメントをしていた。もちろん、ゴルフと片付けも二律背反で無いわけだが、メインの方がこれだけしっかり押さえられていればまったく問題になどならない。

本来はそうではないのに、あたかもトレードオフの関係にあるように見せかけて、何かができていないことを正当化するような考え方は良くない、ということを言いたかっただけなのに、ウィキペディアの助けを大いに借りたおかげで、1つ分のボリュームになってしまった。

最後に少しだけケチャップをかける。「beforeとafterの間」とは、大学生版の「十人十色」のタイトルである。初めにパッと思い付いたのがそれなのだが、いっそのことすべて英語にして“Between before and after”の方が良いんじゃないか、という考えも浮かんだが、個人的には断然「beforeとafterの間」である。よって、これに決定。” before”は大学生以前、” after”は今後のより明るい未来である。40代の半ばを前にした私ですら、もっと素晴らしい”after“が待っていると信じて、前に進んでいるつもりでいる。20代であればなおさらである。そんな彼らのワクワクする話を”before”にいる生徒たちに聞かせてあげたい。

                              松蔭俊輔

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