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創作(小説)

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記事一覧

意味と意義【1191字】

 いつどこで目にしたのかは全く覚えていないのだが、昔なにかで見た「個々の人間は現代に至るまで成長していない。時折り歴史上に現れる天才が人類のレベルを底上げし、ほとんどの人間はそうして蓄積されたものをただ使っているだけ」というような言葉が、なぜかずっと記憶に残っている。なるほど確かにあらゆる文化、言葉に触れることがない状況で一生を過ごした場合、現代人であれ昔の人であれ、その人間性や思想に違いは生じないように思う。その時代の水準では実現不可能に考えられる「オーパーツ」の存在や、過

迷宮(掌篇)【1978字】

 わたしのいるこの場所は迷宮である。それでいながら都市でもある。ここはひとつのとてつもなく巨大な建造物のなかに、さらにまたたくさんの建造物が乱立しているという、なんとも奇異な場所なのである。  そこには多様な多種多様な建造物があり、わたしはそのいずれかを目指して歩いていくのだが、とにかく頻繁に行き止まりに行き着いてしまう。行き止まりと言ってもその形態は様々で、壁に阻まれていて引き返しを余儀なくされるもの、道幅が狭まっていたり急な坂道になっていたりして進んでいくことが躊躇われ

埋まる(掌篇)【840字】

気がついた時には、既に躰の半分が地面に埋まっていた。一体いつから埋まっていたのやら皆目見当がつかなかった。下半身と言うのでなしに躰の半分と表現したこと、これには一応明確な理由があり、私の躰はやや背後に傾いた体育座りの姿勢で下半身は太腿から臀部まで、上半身は胸元にさしかかる部分までが地面に埋まっていたのである。 暫くの時間(十分程度だと思うが、あるいは五分も経っていないかも知れない、腕時計もケータイもなかった)自身の埋まった躰の観察を続けたところ、ジワリジワリとで