ヘルマン・ブロッホ『夢遊の人々』─多重な価値世界に苛まれる現代人─【7410字】
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『ウェルギリウスの死』を読んで大変な感銘を受けてからというもの、ヘルマン・ブロッホという作家について興味が尽きないなかで本書を手に取ったのだが、率直な感想としては非常に難しい作品だった。というのも、どうやらブロッホが考える長編小説の意義から誘起さ